ファイナルホイッスルまで緊迫したオリンピアコス戦。宿敵のファンもユナイテッドの失点を望まなかった(クリックで写真拡大)

マンチェスター・ユナイテッドが逆転で、欧州チャンピオンズリーグ(CL)の8強へ勝ち上がった夜、オールドトラフォードからホテルへ向かうためタクシーに乗った。馴染みのタクシー運転手グラハムは、リバプールのファンだ。テレビで試合を見ていたというから「最後にオリンピアコスにゴールを決めて欲しい、と願ってたでしょ?」と聞くと、意外にも「そんなことはない。ゴールは決まって欲しくなかったよ。だってモイズがクビになったら困るじゃないか」と返ってきた。

19日、決勝トーナメント1回戦第2戦で、ユナイテッドがホームでFWファンペルシーがハットトリックを決める大活躍で、オリンピアコス(ギリシャ)に3-0で快勝。第1戦との合計を3-2として逆転で、準々決勝進出を決めた。香川真司はベンチ入りしたが出場機会はなかった。

3-0以上の勝利が必要だったユナイテッドは、中盤から直線的なボールをゴール前へ差し込む作戦。得意なフィジカルとパワーを前面に押し出した、力技の勝負に打って出た。これがはまって51分までにファンペルシーが3ゴールを決めた。

終盤はオリンピアコスが猛反撃をしかけた。1点決めれば、2戦合計3-3と同点だが、アウェーゴール差で勝ち上がれる。オリンピアコスがシュートを放つたびに、モイズ監督は心臓が止まる思いだったろう。香川のファンのなかには、ユナイテッド劇的敗退→モイズ監督解任→香川出番増えると考えていた人もいたはずだ。

宿敵クラブのファンもまた、ユナイテッドの敗退とモイズ監督解任を望んでいたのかと思ったが、浅はかだった。タクシー運転手のグラハムは言う。「だってモイズには、ずっとユナイテッドの監督をやって欲しいよ。そうしたら来季はユナイテッドの降格争いが見られるかもしれない。いま辞めてもらったら困る」。

さらにグラハムはこう続けた。「なぜジェラードが3本目のPKを失敗したか知ってるか?」。この3日前にオールドトラフォードでリバプールはユナイテッドに3-0で快勝していた。ジェラードが2本のPKを決めてリードしたあと、後半33分に3本目のPKを得た。ところがジェラードはこれを左ポストに当て、失敗したのだ。結局その5分後、スアレスが追加点を決めて3-0で勝ったが、もしこの3本目も決めていれば、プレミアリーグ史上、初の1試合PKでハットトリックという珍記録も樹立していた。

「ジェラードはモイズに辞めて欲しくなかったんだよ。だからポストに当てたんだ」とグラハムは高笑いした。なんて皮肉に満ちたジョークなのか。イングランドのファンたちは、こんななんて狡猾なロジックを展開しながら、フットボールを楽しんでいるのである。

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原田 公樹
1966(昭和41)年8月27日横須賀生まれ、呉育ち。国学院大学文学部中退。週刊誌記者を経てフリーのスポーツライターとして独立し、99年に英国へ移住。ウェンブリースタジアムを望む、北ロンドンの12階のアパートメントに住んでいる。東京中日スポーツやサッカーマガジンに寄稿し、ロンドン・ジャパニーズの不動の左サイドバックでもある。 »Twitterアカウント »メールを送る

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