2014年日本サッカー界の目玉の1つである2014年明治安田生命J3リーグが9日、ついに開幕した。初年度はグルージャ盛岡、ブラウブリッツ秋田、福島ユナイテッドFC、FC町田ゼルビア、YSCC横浜、SC相模原、AC長野パルセイロ、ツエーゲン金沢、藤枝MYFC、ガイナーレ鳥取、FC琉球とJリーグU-22選抜の12チームで3回戦制のリーグを戦うことになる。日本もようやく3部までのサッカーピラミッドができたというわけだ。

その優勝候補筆頭に挙げられているのが、昨季日本フットボールリーグ(JFL)優勝の長野だろう。かつて徳島ヴォルティス時代に柿谷曜一朗(C大阪)を再生させたことで知られる美濃部直彦監督率いるこのチームには、地域リーグ時代から屋台骨を支えてきた宇野沢祐次、大島嵩弘、大橋良隆らに加え、JFL昇格後に加わった向慎一、有永一生ら、さらに今季加入した元日本代表の伊東輝悦、2012年JFL得点王の高橋駿太、京都サンガユース出身の三根和起、プラチナ世代のMFの1人として知られる鮫島晃太など、実に多彩なタレントがいる。下部組織を充実させ、レディースのクラブも保有するなどクラブ規模は着実に拡大し、2015年には1万5000人規模に改修される新たな南長野運動公園総合球技場がお目見えする予定だ。美濃部監督も「今年はJ3優勝、J2昇格しか考えていない」と強調していた。

そんな長野だけに注目度は高く、味の素フィールド西が丘で行われた今季開幕戦・福島戦には4300人を超える観客が集まった。メディアも多数詰めかけ、美濃部監督も「すごい取材の数だね」と驚き半分に語っていたほどだ。宇野沢も「昔は取材の人もいなかったし、お客さんが1000人以下ということもあった。昨年あたりから地元でメディアが増えて注目度が上がっているのを感じていたけど、今日はより一層そう思った。だからこそ、自分たちのやってきたことをしっかりと見てもらいたかった」と話していた。

快晴の中、13時に始まった試合は予想通り、長野が主導権を握った。ショートパスをつないで丁寧にビルドアップするスタイルを志向する彼らが押し込み、前半17分には有永→向とつなぎ、そこからの縦パスに反応した高橋が巧みな抜け出してゴール。幸先のいい先制点を奪う。「福島は守備に入った時に4−1−4−1になって全員が引いてくる。ショートパスにこだわり過ぎると奪われてカウンターを食らう。それで長いパスを多くしてバイタルを広げる作業をやっていた」と美濃部監督は話したが、狙い通りの高橋の先制点だった。西が丘に集まったオレンジのサポーターも大いに盛り上がった。

そこからも長野が攻め続け、地力の差を感じさせたが、どうしても追加点を奪えない。エース・宇野沢も相手に徹底マークされ思うようにシュートを打てず、高橋の飛び出しも少なくなった。後半に入ってからも膠着状態が続いたため、指揮官は裏に抜け出すのが得意な勝又慶典を投入。さらに中盤にダイナミズムを加えるためにベテラン伊東を入れて活性化を図った。

しかし、福島も粘り強い守備から徐々に相手陣内に詰め寄るようになり、終盤には何度か惜しい形も作った。試合は結局、1−0で終了したが、長野にとっては不完全燃焼感が残る初戦だった。「シュートを10本打ったが、3〜4点は取れる可能性があった。そういうチャンスを決めないといつか追いつかれる。ゴールを奪う作業をもっと詰めていかないといけない」と美濃部監督も強調したが、昨季JFL王者に対して相手が守りを強化してくる中で、どうやってゴールをこじ開けるのか。そこが今後の彼らの大きなテーマになってくるだろう。

選手たちも上を見据えているため、J3発足に特別な感慨はないようだ。「Jって名前はつくけど、目標にしているのはJ1とかJ2。僕自身はそこに戻れるように戦っている。そういう意味ではまだ夢の途中でしかない。今日は個人的にもいい場面がなかったし、ミスも多かった。もっと高いレベルを目指してやっていかないといけない」とかつて柏レイソルでプレーしていた宇野沢もまず反省の弁を口にするのを忘れなかった。「自分が加わったことでチームに新たな競争をもたらしたいし、全体を活性化できたらいい」と伊東も前向きに語っていた。

開幕節では、金沢が相模原を4−0で下し、町田が藤枝に3−0で勝つなど、長野のライバルと見られるチームも着実に勝ち点3をゲットしている。その状況を踏まえても、ここから着実に白星を重ねていくことが重要になってくる。宇野沢が言うように開幕5試合でどれだけポイントを重ねられるかが成功への重要なカギといえるだろう。「チームの成熟が少し遅れている」と問題点を指摘する美濃部監督が今後、どうチームの完成度を高めていくかにも注目しつつ、もう1つの長野のJクラブの戦いを見ていきたい。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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