ブラジルで「スリーライオン」を胸につけられるのは23人だけ(クリックで写真拡大)

「私にとっては頭が痛い問題だが、いいニュースでもある。彼らがその飛行機に乗りたいという欲望を見せてくれたことが、私はうれしい」。5日にロンドンのウェンブリー競技場で行われたデンマークとの親善試合に1−0で勝利したあと、イングランドのロイ・ホジソン監督は、そう苦笑いを浮かべた。

千金のゴールは、MFアダム・ララナからの左クロスをファーサイドでFWダニエル・スタリッジがヘディングで決めた。さらにこの試合のマンオブザマッチは19歳のMFラヒーム・スターリングだった。いずれも代表歴が「10」以下の新鋭たちである。2014年ワールドカップ(W杯)に出場する最終メンバーの23人を選ぶうえで、選択肢が増えたから苦慮する、というのだ。

イングランドは昨年10月、W杯予選最終戦でポーランドを下して出場権を得たが、11月の親善試合ではホームでチリ、ドイツに2連敗。絶対に勝たなければならなかった一戦で、ホジソン監督は5人のリバプールの選手をセット起用した。これが機能してパスと走りが連動し、序盤から優位に試合を進めたが、ゴールが割れない。ようやく後半37分、スタリッジが決勝点を決め、勝ち切った。

実は今回のW杯でのイングランドの期待度は、いつになく低い。もともとホジソン監督の人気が低いうえに、イタリア、ウルグアイ、コスタリカと同じという厳しいグループDに入ったことが決定的だった。「D」とは「Death=死」とか「Danger=危険」を意味する、とメディアが書くため、巷では「どうせ1次リーグ敗退だろう」という空気が蔓延している。

だがイングランドのチーム内では、ホジソン監督が語ったように、激しい「ブラジル行き航空券争奪戦」が繰り広げられている。頭痛のタネとなっている語った3人以外も、新鋭たちの台頭が激しいからだ。プレミアリーグでの激しい競争を勝ち抜き、続々とイングランド人の若手が育っている。その筆頭はアーセナルのMF、22歳のジャック・ウィルシャー。後半左足を痛めて途中交代し、復帰まで最短で6週間の重傷を負ったが、23人入りする可能性が十分にある。マンチェスター・ユナイテッドで香川真司のチームメートである23歳のFWダニー・ウェルベックは、ほぼ間違いなくブラジル行きのチケットは手にしている。

後半から途中出場して代表デビューを飾った、サウサンプトンで吉田麻也のチームメートである18歳のルーク・ショウは、最終的にブラジル行きの飛行機に滑り込む可能性がある。トットナムの22歳のMFアンドロス・タウンゼントも、かなりいい位置にいる。逆にチェルシーの103キャップのMFフランク・ランパードや、107キャップのアシュリー・コールは、いまや「キャンセル待ち」をしている状態だ。

W杯予備登録の30人のメンバーリストを提出する締め切りは5月13日。最終の23人の締め切りは6月2日だ。今季のプレミアリーグは首位が何度も入れ替わる激しい優勝争いもさることながら、同時並行で繰り広げられる、ブラジル行きのチケット争奪戦もまた、このリーグ終盤の見どころである。

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原田 公樹
1966(昭和41)年8月27日横須賀生まれ、呉育ち。国学院大学文学部中退。週刊誌記者を経てフリーのスポーツライターとして独立し、99年に英国へ移住。ウェンブリースタジアムを望む、北ロンドンの12階のアパートメントに住んでいる。東京中日スポーツやサッカーマガジンに寄稿し、ロンドン・ジャパニーズの不動の左サイドバックでもある。 »Twitterアカウント »メールを送る

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