ルパン近藤 [写真:ジャパンスポーツ Japan Sports]

記者島津です。誰よりもフィギュアスケート研究に没頭して来られたフィギュアスケーター、ルパン近藤こと近藤琢哉さん(慶應義塾大学四年、2014年現役引退)に女子選手紹介と観戦ポイントをお伺いしました。取り急ぎここだけは押さえましょう!続いて女子海外注目選手編です。

ルパン近藤
アートをスケートに取り入れたい、スケートでもアートを学びたいという現役時代を過ごす。スポーツファンが大好きなスケーティングの爽快な速さとクイックな動作(踊り)を持つスピードスター。お洒落でまごころのある『ルパン三世』は語り継がれる名演。The Chemical Brothersのロック寄りの儲かった曲ではなくブレイクビーツで滑る(=選曲の時点で偉業)。ハタチ頃に岩井俊二の少年少女像に傾倒し、テリー・ギリアムの映画『12モンキーズ』を絶対見たい日があった。

TK: 近藤琢哉さん
PP: Pigeon Post ピジョンポスト 島津愛子

女子日本代表選手編はこちら

キム・ヨナ選手(23)韓国
『シンプル・イズ・ベストの神』
男達よ、力みとは無縁の体の使い方と克己心に打ちひしがれるがいい

TK:韓国選手権(1月)を見たんですけど、正直な感想としては、やっぱり全盛期と比べるとまだ完全に戻ってないのかな、と。それが、オリンピックまでのこの短い期間でどれ位まで上げてきたか、っていうのが一番の見どころだと思います。
PP:どの辺りがまだ不足していますかね?
TK:後半の体力とか、ジャンプ自体も全体的に「調整しながら降りて来てる」と感じますね。
PP:「調整しながら」?
TK:前は、バシッと迷いなく降りて来てると感じたんですけど、今はちょっとずつタイミングだったり体のバランスがズレたところを直しながら降りてる、みたいな。Sweet Spot(ココっていうところ)にハマってない。GOE(出来映え)でマイナスになるほどじゃないですけど。
PP:ジャンプのスピードはどうですか?
TK:前のほうがあったと言えばあったんですけど、逆に言えば省エネでも飛べるようになっているのかもしれないですね。ただ、あれだけのブランクがあって、今のレベルに至ってるのはそれだけでスゴイと思います。完全にスケートを止めてたわけではないと思うんですけど、競技を離れてたんで。今回、優勝争いにも食い込んでくるでしょうし。

PP:私は、バンクーバー後のモスクワの世界選手権(2011年)で、ヨナを1回だけ生で観たことがあるんです。五輪優勝以来1年休んでいたせいか、バンクーバーで評価されていたほどの圧倒的なスピードは出ていないように感じて。「あっこちゃん(鈴木明子選手)やコストナーのほうが速い」と。
TK:そうですね。
PP:でも、陸上競技をやっていた者からすると、震撼の『体の使い方』で!滑り出しの最初っから最後のポーズまで、全ての動きがまったく力まずに出来ていて、それにバビりました!!!
TK:(笑)
PP:頭で意識することなく体が自分の理想のフォームで運動する、それをアスリートは目指すと思うんです。陸上は単純な動作の繰り返しになるんですけど、フィギュアスケートは複雑な動作の連続なので、それを力まずによどみなく流れるようにやっている、っていうところが演技構成点の高さとして出ているのかな、と思いました。
TK:そうですね。演技構成点に関してはやっぱり、「減点するところがどこもない。」って言うとネガティブに感じがちなんですけど、それどころか「プラスにせざるを得ない」みたいなところが強みじゃないですかね。
PP:技の加点も。
TK:それを狙ってやったのがバンクーバーだと思うんですけど、狙ってもなかなか出来ないじゃないですか。それをしっかり手堅くやれる、っていうのは相当な練習量が必要だと思うし。ジャンプもスケーティングも、やってることはシンプルなんですよ。シンプルに(エッジを氷に)乗せて、そのスピードを活かしてシンプルに飛んでる、スピードがあるから良い流れで降りる、という。
PP:シンプルだけに、全てがラクに見えるんですよね。

ユリア・リプニツカヤ選手(15)ロシア
『スーパーサイヤ女子』
今しか出来ないユリアの物語 in Sochi

TK:リプニツカヤは、プログラムがおもしろいです!
PP:少女性を文芸的に使っていますよね!15歳の今しか出来ない役どころを与えられている。
TK:女子だと男子に比べてジャンプの回転数も少ないし、「じゃあ、どうしたら女子のおもしろさって出るのかな」と考えた時に、例えば柔軟性、滑らかさ、『女性らしさ』っていうのが女子シングルの魅力だと思うんですよ。それを突き詰めていったらこうなるんじゃないかな、っていう最終形がリプニツカヤって気がしますね。
PP:スーパー女子、みたいな選手が出て来たんですね!
TK:そうですね。だから僕も最初に見た時びっくりしましたね。
PP:「滑らかさ」というのは?
TK:ロシア特有だな、と思うんですけど、ジャンプの予備動作がすごい短いんですよ。踊りと一体化してそのままポンッと飛んじゃう、みたいな。それで、プログラムを通して見た時にジャンプが浮かない。要はジャンプを簡単に飛ぶ(加点がつく)、ってことなんですけど(予備動作が長いジャンプは減点の対象になる)。ジャンプ飛ぶぞ飛ぶぞ、って構えない。
PP:ジャンプ加点要件の、1)ジャンプの助走の意外性・工夫・難易度と、7)エフォートレス(簡単に行っている)の2項目のクリアで、GOE+1の加点を飛ぶ前から計算できますね(加点要件については日頃フィギュアスケートを見ないスポーツファンがソチ五輪フィギュアスケートで心底盛り上がるための一夜漬け事項参照)。
TK:スピン(我が目を疑う軟体で速く回る)とかに目が行きがちなんですけど、僕はそこがスゴイな、と。

アデリーナ・ソトニコワ選手(17)ロシア
『気合い入った兄さん』
男勝りの本人とジャンプ×個性的なセンスのクセになるコラボ

TK:ソトニコワはリプニツカヤの逆で……ジャンプ飛ぶぞ飛ぶぞ、っていう(笑)
PP:力入ってますよね!(笑)
TK:ジャンプがほんとにパワフル。あれはちょっと……(笑)それこそ、「現代版伊藤みどり」みたいなイメージですね(「女子で男らしさを出したジャンプ」女子日本代表編)。
PP:ソトニコワは、性格的にもそうですよ。昨季の世界選手権は通常より小さいアイスホッケーサイズのリンクだったのですが、「小さいリンクでもどうってことないです。どんな時にも臨機応変に備えていないと。」って!
TK:(笑)軸とかブレちゃっても「エイヤァッ!」って飛んじゃう、みたいな。見てて気持ちがいい。豪快というか。ジャンプが粗く見えると言えばそうなんですけど、それでもキッチリ降りて来ます。
PP:男勝りだ!
TK:そうですね!
PP:本人にぴったりなイメージですよ!
TK:ソトニコワは、前の衣装が真っ赤なツナギだったり(『ボレロ』)、衣装もおもしろいし、振付も一味違いますよね。
PP:スピンのポジションも四角を作りますね!
TK:最初ソトニコワを見た時は、パワフルさとおもしろさが目を引きました。

グレイシー・ゴールド選手(18)アメリカ
『なにもかもパーフェクト嬢』
アメリカ女子のゴールデンヒストリーは繰り返すか?

TK:ゴールドはやっぱり、華がありますよね。
PP:そりゃあもう。
TK:そりゃあもう、ズバ抜けて華があるというか(照)
PP:(笑)ズバ抜けてますか。
TK:(キリッと)滑り自体がうまい、っていうのもあります。
PP:ゴールドの体の使い方はヨナに似てる気がしますよ。力みがない。
TK:そうですよね、スイスイ進んで行く、というか。
PP:ジャンプも。シンプルにやってる、って感じですかね。
TK:それは思います。シンプルだけに、どこか特筆してということではなく総合的にうまい、というか。
PP:いえ、特筆して美貌が光ってます☆
TK:(笑)そうですね。アメリカ女子の歴史を見てきて、15歳のタラ・リピンスキーが長野五輪でバッと出て来て史上最年少の金メダル、16歳のサラ・ヒューズがソルトレイクで金メダル、とかあったんで、案外今回グレイシー・ゴールドの目はあると思うんですよ。
PP:団体戦フリーで自己ベストも更新しましたし。
TK:今回そういう歴史が再び繰り返すのか、っていうのも見どころです。

ケイトリン・オズモンド選手(18)カナダ
『パワフルなショウマン』
墓標に刻みたい氷上の名言

PP:オズモンドは大きいんですよ(ISUバイオでは165cm)!18歳だけど大人っぽいし、シニア女子って感じです。
TK:ちょっと18歳には見えないですよね。オズモンドはソトニコワと違ってまたパワフルって感じなんですよね。ジャンプも高いし、ランディングで多少グラついてもグッと堪えられる。あっこさんの足元のうまさとは別に、力でしっかり抑えられる。あとはやっぱり、滑り云々って言うよりも、見せるのが上手だな、と。会場全体に見せるのがうまい。見ている側が楽しくなってしまう、というか。そういう空気を作るのがうまいんじゃないかな、と思います。女子をあんまり見ないということもあるんですけど、今まで僕オズモンドを知らなくて、今回の団体戦を見て「あ、うまい選手だな」と思ったのが印象ですね。

PP:カナダ選手権(1月)で、オズモンドのコーチのラヴィ・ワリア先生の名言をお伝えしたんです。「(シーズン前半に怪我をしていたオズモンドに)何が起こっても、楽しむ心で乗り越えなさい」って。墓標に刻みたいな、っていうことを言われていて!
TK:(笑)へぇー。
PP:それまで、私が墓標に刻もうと思ってたのは、室伏重信、室伏広治の父がいるんですけど。
TK:ハイ(笑)。
PP:その重信の、「自分は地球で、ハンマーは月。一緒に太陽の周りを回っている。」っていう!
TK:ハイ(笑)。
PP:(笑)それは陸の名言で、琢哉さんにも氷の名言を選んで頂きたいな!と。
TK:ハイ!アレクセイ・ミーシン(エフゲニー・プルシェンコのコーチ)の言葉で、「ジャンプの正確さっていうのは、練習で10本飛んで10本降りることじゃなくて、大事な試合で1本降りることだ」みたいな。
PP:それはまさにプルシェンコですよね。
TK:だと思います!

カロリーナ・コストナー選手(27)イタリア
『ダントツのスケーティング(※ルパン近藤の推しメン)』
スピードの仕組み

TK:コストナーは、個人的には一番好きな女子選手なんですけど。
PP:スケーター'sスケーターっていう感じですよね。
TK:とにかく滑りがうまい。ダントツでうまいです!もちろん「一歩が伸びる」っていうこともあるんですけど、細かい足技も利く。細かく刻める。手足が長い(169cm)と、見せる上でも滑る上でも持て余しちゃったりする選手が多いんですね。神経が通ってない瞬間がある、というか。そういうのが一切なくて、どの瞬間も細部までコントロールされている。
PP:スケーティングも速いですよね!
TK:無理に(氷をエッジで)押してるとかではなくて、滑りがダントツでうまいからあのスピードも出せるし、細かいステップも踏める。
TK:数シーズン前は、最初にジャンプをミスるとそのままボロボロ崩れてプログラムが破綻しちゃうみたいなことが時々あったんですけど、そういうのがここ2シーズン位なくなって、大体安定して結果を残せるというのが大きく変わった部分だと思うんですよ。今回も団体ショートがかなり良かったですし、十分メダルもあると思いますね。金メダルも!
PP:オオ!
TK:っていうか僕は応援しています!(笑)

PP:【スケーティングが速い】というのがフィギュアスケートで何を意味するかというと、【踊りを見せられる距離をより長く取れる】ということだと思います。近藤琢哉選手もそうだったのですが、どうやってスピードを出されていたのでしょう?
TK:しっかり傾くこと・氷に圧力をかけることですかね。
PP:「傾く」?
TK:体全体を倒すというか。ジェットコースターでもそうなんですけど、上がって落ちる瞬間に「ブゥウン!」と加速するじゃないですか。あの原理を使って、倒す時に加速をする。力でグイグイ氷を押していくんじゃなくて、倒して「ヒュウウン!」と上って行って、また倒して。その繰り返しだと思いますね。
PP:「落差」を利用する、ってことですか?
TK:そうですそうです!そんな感じです。

アシュリー・ワグナー選手(22)アメリカ
『気合い入った姉さん』
イヤミのないドヤ感

TK:僕がワグナーを生で観た時、「なんて速いスピードでジャンプ飛ぶんだ!」ってびっくりしました。
PP:ワグナーもど根性飛びみたいな感じで(笑)
TK:そうですよね(笑)
PP:「気合い入った姉さん」ですね?
TK:「気合い入った兄さん」がソトニコワだったら、「気合い入った姉さん」がワグナーです(笑)
PP:(笑)
TK:最近はアメリカの中でも安定して代表としてやって来てますし。前は、数いるアメリカの選手の一人、という感じだったのが、今はアメリカを代表する選手、という風に雰囲気が変わってきたなあ、と。
PP:Pigeon Postでも山内記者が、「演技のドヤ感」と、その面をフィーチャーしております!
TK:それがイヤミじゃないのがいいです!

日頃フィギュアスケートを見ないスポーツファンがソチ五輪フィギュアスケートで心底盛り上がるための一夜漬け事項】に近藤さんから一言

TK: ジャンプに目が行きがちですけど、どれだけステップが細かいかとか、スピードが出てるかとか、そこもまた演技の差だと思うんですよ。スピードについて考えると、スケーティングがうまいからスピードも出るわけです。ファーストインプレッションで「わぁー、なんかこの人スゴイな!」と思ったら、足元に注目すると男女共にもっとおもしろく見られると思います。

男子編はこちら

解説:近藤琢哉 Takuya Kondoh
テキスト:島津愛子 Aiko Shimazu

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Pigeon Post ピジョンポスト
フィギュアスケーターの"声" "今"を届ける記者チーム(Pigeon Post HP)。
日本チームを中心に、世界のフィギュアスケートを特集する日本語英語のバイリンガルサイトで、インタビュー・リポートを掲載。Twitterをポータルとして、新しい記事の紹介やニュース、イベントのリポートまで、ワンストップで伝える。FacebookもTwitterと連携させている。

お知らせ

◆ISU世界ジュニアフィギュアスケート選手権2014
3月21日 (金) 〜23日(日)エキシビジョンまで全種目放送!
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◆ISU世界フィギュアスケート選手権2014 公式練習
3月28日 (金) 〜29日(土)女子シングル・男子シングルの最終グループの公式練習を放送!
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