今季開幕から主力の負傷者が続出し、大量失点を繰り返して出遅れを余儀なくされたシャルケ。首位のバイエルン・ミュンヘンには大きな差をつけられ、レバークーゼン、ボルシア・ドルトムントにも引き離される格好になっていた。だが、ウインターブレイク明けは守備面が修正され、ハンブルガーSV、ヴォルフスブルクに連勝し、順位をUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)圏内の4位まで上げてきた。ヴォルフスブルク戦で出場停止となった内田篤人も2月9日のハノーファー96戦で復帰。彼のもどったシャルケが本拠地・フェルティンスアレーナでどのような戦いをするかが気になるところだった。

6万人を超える大観衆を味方につけたシャルケは前半から主導権を握り、相手陣内に攻め込んだ。が、あと一歩詰めが甘く、思うようにゴールを奪えない。しかもボランチのノイステッターが負傷し、アイハンとの交代を強いられるアクシデントが発生。不穏なムードが漂う。それでも前半39分、彼らはオバシとのワンツーで左サイドをダイナミックに駆け上がったコラシナツのマイナス気味のクロスをファルファンが軽く押し込んで先制。その5分後には、ファルファンが猛然と攻め上がった内田にタテパスを出し、内田はゴールラインぎりぎりのところからマイナスのボールを出す。ここに詰めたのが若きMFマイヤー。前半終了時点で2−0とシャルケは3連勝に大きく近づいた。

後半も彼らが余裕ある戦いぶりを見せ、ハノーファーを寄せ付けなかった。イェンス・ケラー監督も残り7分の時点で交代枠を3枚使い切り、勝利を確信したに違いない。ところがその直後にショッキングな出来事が起きる。ドリブルで中盤まで攻め上がった内田が相手を股抜きし、着地した瞬間に右太もも肉離れを起こしてその場にうずくまった。その負傷は過去に何度も繰り返している古傷。交代枠を使い切っていたため、彼は再びピッチに戻ったが、周りに止められてタイムアップ前にベンチに退いた。

「明日病院へ行って調べますけど、もう慣れてるんで。ケガをした瞬間、交代してほしいと言ったんですけど、ケヴィン(=プリンス・ボアテング)ができるだろって言うんで戻りましたけど、やっぱりベンチから下がれと言われた。時間はかかりますけど、ケガはもう友達みたいなもんだからね。付き合っていかないといけないと思います」と本人はいつも通り淡々としていたが、2014年ブラジルワールドカップを4カ月後に控えた大事な時期に回復時間を要するケガをしてしまったことは大きな不安材料に違いない。

この日の内田は動きにキレがあり、瞬間的な動き出しの速さ、反応の鋭さと全ての面において高いレベルのパフォーマンスを見せていただけに、より悔やまれる。おそれく25日のUCLのレアル・マドリード戦、3月5日の日本代表対ニュージーランド戦の出場は難しいだろうが、とにかく早期復帰を果たしてもらうしかない。

内田がそういう状況だけに、ザックジャパンのもう1人の右サイドバック・酒井宏樹の動向が気になるところだったが、この日の彼は出場なしに終わった。前節のボルシア・メンヘングラッドバッハ戦で出場停止となり、代わって冬の移籍でプルゼニから移籍してきたライトラルがいい仕事を見せたこと、彼自身が風邪で体調を崩していたことから、この日は出番がなかった。

ハノーファーは今季の成績不振のため、2010年1月から指揮を執っていたミルコ・スロムカ監督が解任され、新たにトルコ人のタイフン・コルクト監督が就任したばかり。スロムカ監督からは信頼を勝ち取りつつあった酒井宏樹にとって、この指揮官交代の影響がどう出るかが1つの注目点だったが、ここへきてライトラルの評価は高まりつつあるようだ。このまま彼も出場機会を失うようなことがあれば、日本代表の右サイドバックに黄色信号が点る。国内組のベテラン・駒野友一(磐田)も負傷を抱えており、これまで最も選手層が厚いといわれてきたポジションが一気に不安要素になりかねない。現在、日本代表欧州組のボーダーラインの選手たちを視察に回っているザッケローニ監督だが、今は中核となる面々を再チェックした方が得策かもしれない。

コートジボワール、ギリシャ、コロンビアという強豪相手の戦いを考えた時、内田も酒井宏樹もどうしても必要な戦力だ。2人にとっては今は正念場。ここを何とか乗り切ってこそ、ブラジルで成功をつかめる。今は苦しいだろうが、彼らにはこの逆境を克服する底力があるはず。その真価をぜひともしっかりと見せてほしいものだ。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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