1月7日(火)。『花園』こと、全国高校ラグビー大会決勝の前座として、12時30分から『もうひとつの花園』と呼ばれる『U18合同チーム東西対抗戦』がキックオフされた。3500人の観客の前で、東軍は赤、西軍は青のジャージーを着て、50人のラガーマンが「聖地」の芝生の上で楕円球を追った。

この試合は『花園に出場できない少人数校の高校ラガーメンに夢と希望を与え、高校ラグビー全体の盛り上げにつなげる』ために行われており、今年で6回目。東西それぞれ25人の選手たちは、毎年夏休みに菅平高原で開催されている『KOBELCO CUP 全国高等学校合同チームラグビーフットボール大会』の部員不足の学校の生徒で構成する、U18の全国9ブロックの選抜チームから、さらに選抜され、東西の各チームの代表として選出された。

試合は今年も女子レフリーの高橋真弓さんが務め、東軍ボールで始まった。前日と当日しか一緒に練習する時間はなかったものの、前半、展開力に優れる西軍が見事なパス回しからなどで3トライを挙げ、19-0でリード。東軍も相手ゴール前まで攻め込む時間もあったが、得点を挙げることができず、後半20分以降に西軍がトライを重ね、31-0で今年も西軍の勝利。本家の『花園』同様、『西高東低』で、西軍の通算5勝1敗となった。

ここで高校ラグビーを取り巻く現状を簡単に見てみよう。まず少子化の影響で、過去15年ほどで高体連に加盟する運動部に参加する人数が25万人ほど減り、120万人になっているという前提がある。そして、ラグビー部は1984〜85年にかけて放送されたTVドラマ「スクール☆ウォーズ」影響で、1991年度にはピークを迎え、全国で5万7826人と最多の部員数となり、同年度、花園に参加した高校も最多の1,490校だった。

だが、10年前の2003年度にはラグビー部は全国で1252校、部員は3万0419人となり、2013年度の全国のラグビー部員は2万3972人で、花園参加数は999校(ラグビー部がある高校は1089校)だった。さらに花園参加数は2000年度に828校までに減少したものの、翌年度から合同チームの参加も認められたため、2002年度からは900校台で推移。ちなみに他の競技で言えば、サッカー(男子)は4166校で15万8119人、野球は約4000校で硬式が16万7088人、軟式1万0945人で計17万8033人だ。

高校のラグビー部員の減少に歯止めが効かない中で、ラグビー部のある高校がさほど減っていないのは、各学校の先生の勧誘、指導といった努力のたまものであろう。その中で、花園で開かれる『U18合同チーム東西対抗戦』は、15人に満たない少人数学校の部員の目標であり、モチベーションとなっているのは間違いない。

「私が勤務する三重県では各校が部員不足に悩み、合同チームの活動が増えてきています。しかし、高校ラガーマンにとって『花園』は憧れの地ではないでしょうか。その地でプレーを与えられることは合同チームの目標の一つとなっています」(東軍・松坂高校、喜田裕彰監督)。

近年、スポーツ界でよく耳にするようになった言葉がある。それが『細道』を意味する英語『パスウェイ(pathway)』だ。つまり、ポテンシャルを持ったアスリートを、インターナショナルレベルやメダリストへの『パスウェイ』を構築し、育成していくという文脈で使われる。

2019年に日本でラグビーワールドカップが、2020年の東京オリンピックで男女のセブンズ(7人制ラグビー)が行われる。ポテンシャルを持った選手を発見、育成、次のステージに引き上げる『パスウェイ』として、このような試み、大会には意義がある。せっかく楕円球に触れたポテンシャルを持っている選手を見逃さず、育成して次のステージへと『パス』しなければならない。

そういった意味で、すでに『U18合同チーム東西対抗戦』は効果を出しているといえよう。第1回大会にはWTB(ウイング)宮前勇規選手(三重・名張西)が出場している。高校時代からラグビーを始めた宮前選手は、天理大時代には大学選手権の決勝に進出し、国立競技場でもプレー。今年からNECに入り、その突破力を武器に、すでにトップリーグの舞台に立っている。

また「中学時代は野球をやっていてケガをしたので何も部活をやらないつもりでいましたが、高校の顧問に誘われて」と、ラグビーを始めた身長196cmのLO(ロック)宇佐見和彦選手(愛媛・西条校)は第2回大会に出場。今年度は立命館大の選手として関西大学Aリーグで優勝。さらに宇佐見選手は昨年度と今年度の夏の日本代表合宿に招集。日本代表を率いるエディー・ジョーンズ ヘッドコーチにも空中戦での潜在能力を認められており、来年度からトップリーグでプレーする予定。

今年出場し、西軍の主将を務めたSO(スタンドオフ)大嶺景丸主将(沖縄県立宜野座高3年)は言う。「楽しかった! 高校生活最後が夢の舞台でのプレーで感謝しています」。春からは今年度、大学選手権のセカンドステージに初めて進出した朝日大に進学予定。また東軍のPR(プロップ)瀬谷基浩(北海道中標津高3年)は「芝生は柔らかくて、なかなか良かったです。高校生活最後に花園に来られて嬉しかった!将来はトップリーグでプレーしたい」と声を弾ませた。4月からは今年度、関東大学リーグ戦で優勝した流通経済大に進む予定だ。

今大会のパンフレットには「花園から世界へ」と大きく書かれていた。2019年、2020年の国際大会に、花園だけでなく「もう1つの花園」からも、世界に羽ばたく選手が出てくるに違いない。

※データは主に全国高等学校体育連盟及び、日本高等学校野球連盟のホームページを参照

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斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365 」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「突破!リッチー・マコウ自伝」(東邦出版)など著書多数。≫Twitterアカウント

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