12月8日に東京・国立競技場で行われたJ1昇格プレーオフ決勝・京都サンガ対徳島ヴォルティスのゲームは、2013年Jリーグ公式戦のラストを飾る大一番。ガンバ大阪、ヴィッセル神戸に続く、3番目のJ1昇格の座をかけて、今季J2の3位と4位の両者が激突した。

J1昇格プレーオフ制度は昨年から始まり、今回が2度目だが、いまだに違和感は少なからずある。年間リーグの価値を考えた場合、年間3位の京都がすんなりJ1に上がるのが筋だからだ。けれども、プレーオフの存在によって、シーズン終盤まで多くのチームがモチベーションを高く保った状態で戦えるのは事実。今季に関しては特にその傾向が強く、11月24日の最終節も大いに盛り上がった。この日も2万3000人を超える大観衆が集結し、世間の関心を集めた。そういう数々のメリットを考えると、プレーオフの存在を肯定しなければならないのかもしれない。こうした賛否両論を封じるためにも、京都が確実に勝って、J1切符をつかむべきだった。大木武監督も選手たちも何をすべきか十分分かっていただろう。

彼らは引き分けでもOKという条件を踏まえ、序盤から細かいパスを駆使したポゼッションサッカーで主導権を握った。元日本代表の山瀬功治やオシムチルドレンの1人である工藤浩平らを擁する個人能力の高い集団は、しっかりとボールをつないでいれば、いつか相手が崩れるという計算があったはずだ。実際、前半25〜35分にかけての時間帯には、リスタートから秋本倫孝やバヤリッツァがゴール前に飛び込んだり、素早いカウンターから横谷繁が決定的シュートを放つなど、得点が生まれそうな場面は何度かあった。

そういう決めるべきチャンスを決められないと、ピンチが訪れるのがサッカーの常。京都にとって悪夢だったのが、前半39分の徳島の先制点だった。アレックスのCKにドフリーで飛び込んだのは千代反田充。京都のマークが津田知宏と高崎寛之の2トップに分散されたスキを巧みに突く見事なゴールで、徳島が大きなアドバンテージを得る。その4分後には、右サイドバック・藤原広太朗が前線に出したフィードが高崎の頭に当たってこぼれ、ここに抜け出した津田がゴール。早い段階でリードを2点に広げる。先週末のプレーオフ準決勝・Vファーレン長崎戦を含め、最近5試合でわずか2点しか取れていない京都にとって、この2点はあまりに重すぎた。

後半も出足がいいのは徳島の方だった。京都の大木監督は自分たちのパスサッカーを貫きながら、原一樹、三平和司、宮吉拓実ら持てるカードを次々と投入。流れを変えようと試みるが、うまくいかない。最終的に徳島の球際の強さとハードワーク、徹底した守備からの鋭いアタックに押し切られてしまう。昨年の大分トリニータに続いて、今年もまた年間順位が下だったチームが、3番目のJ1昇格切符を手に入れることになった。

その徳島だが、大塚製薬という優良企業をメインスポンサーに持つ、J2屈指の資金力と環境を誇るクラブである。柿谷曜一朗(C大阪)や柴崎晃誠、千代反田ら才能ある選手を呼べたのも、恵まれたバックグラウンドによる部分が大きいだろう。その反面、このチームにはややぬるま湯的な空気があったようだ。大分やモンテディオ山形といった地方クラブをJ1昇格に導いた小林監督は、そんな選手たちを原点に回帰させ、泥臭くしぶとくボールに食らいつくことから徹底させたという。

「球際を激しく行ってハードワークすることを監督から繰り返し言われました。積極的な守備が浸透し、夏場から結果が出るようになった。やっぱりサッカーはまず球際で負けたら話にならない。そこが一番大事だということを自分も再認識できた」とサンフレッチェ広島からレンタル移籍してきた大崎淳矢も言う。攻撃面で創造性やひらめきのある選手たちが守備をするようになれば、鬼に金棒だ。実際、徳島で再生された柿谷も守備力が飛躍的に向上したから日本代表に定着できた。そういう成功モデルが身近にいたことも、徳島の選手たちのいいモチベーションにつながったのだろう。

「小林監督の始動は本当に分かりやすい。試合翌日のミーティングでも1人1人のいい面悪い面を映像にして見せてくれたりと、個人的にアドバイスをしてくれる。いろんなクラブでプレーしてきたけど、そこまで丁寧にやってくれる監督は初めて。そういう細かいことの積み重ねがあったから、チーム全体が大きく変化したのかなと思います」と念願のJ1復帰を現実のものとした柴崎も確固たる手ごたえをつかんでいた。

その小林伸二監督が2014年のJ1をどう切り抜けるかは非常に興味深いところ。今季の徳島を見る限りでは、徳島にはJ1で堂々と残留できるだけの力はない。今季の大分と同じ道を歩む可能性も皆無ではないだろう。それを避けるためにも、まずは効果的な選手補強が必要になってくる。その一方で、指揮官もチームの最大の武器であるハードワークを突き詰めていくべきだ。

昨年J1初参戦したサガン鳥栖のように、彼らは自分たちの泥臭い戦い方を貫くしか生き残る術はない。四国初のJ1クラブとなった彼らの今後に期待しつつ、動向を見守っていきたい。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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