我が故郷のクラブ・松本山雅があと一歩で出場を逃したJ1昇格プレーオフ。先週24日は渡欧中で松本へ行くことができず、得失点差でVファーレン長崎に6位の座を譲る形になったことにショックを受けていたが、気持ちを切り替えて1日の準決勝の動向に注目した。今回のカードは3位・京都サンガ対6位・長崎、4位・徳島ヴォルティス対5位・ジェフユナイテッド千葉の2試合。戦力的には京都と千葉が有利ではないかと見ていた。

京都対長崎はともにJ1昇格経験のある大木武、高木琢也両監督の対戦となった。かつてのヴァンフォーレ甲府をJ1へと導いた大木監督は、その時のキャプテンであるベテラン・倉貫一毅にキャプテンマークを託し、甲府時代の教え子である秋本倫孝をアンカーに据えて意思統一を図ることを忘れなかった。一方、横浜FCをJ1昇格を経験している高木監督の方も、J2初参戦ながら大躍進した今季の主力であるDF山口貴弘や金久保彩、奥埜博亮らを並べ、1トップを務めることが多かった幸野志有人を控えに回すという策を講じた。

京都としては90分間で負けなければOKだったため、どうしてもセフティに戦う意識が強かったのだろう。全体にシュート数が少ない試合展開となった。「サッカーはエンターテイメント」という哲学を持つ大木監督にしてみれば、不完全燃焼感の強い内容だったが、昨年のように準決勝で敗れ去るわけにはいかない。昨年の敗退の経験者たちもそのあたりを頭に入れながら戦ったはずだ。大木監督も「ハーフタイムには0−0でいいとは思わなかった。できれば点を取りたかったが、その前に取られたら終わりだという気持ちもあった」と正直な気持ちを打ち明けた。

逆に勝たなければ決勝には進めない長崎は、ガムシャラに攻めに行ったが、守護神のオ・スンフンの再三にわたる好セーブもあって相手の手堅い守りをこじ開けられない。守備の要である山口が退いたのも痛かった。結果的にスコアレスドローに終わったが、このスコアが長崎の現時点での実力を物語っているようにも思われた。高木監督も「最後は京都の牙城を崩せなかった」と潔く力不足を認めた。その両指揮官の意地と意地のぶつかりあいは、見る者を熱くさせたといっていいだろう。

一方の徳島対千葉も、大分トリニータ、モンテディオ山形を昇格させた手腕を誇る大ベテランの小林伸二監督と山形、アルビレックス新潟、大宮アルディージャを率いた鈴木淳監督の対戦だった。鈴木監督は大宮時代に毎年のようにJ1残留を果たすなど、しぶとい戦いをするのに長けた監督だが、J1昇格経験はない。そういう意味で、小林監督に分があるのではないかと見られた。

案の定、この日の内容は徳島の方が手堅かった。彼らも今日同様、90分間で負けなければ決勝に進めるということで、守備を重視した戦い方を選択。そういう中で前半のうちに津田知宏がゴール前に飛び出してキム・ヒョヌンのファウルを誘いPKをゲット。これをドウグラスが確実に決めたことで、かなり優位な状況に立った。

千葉はこの時点で2点を取らなければ、次のステージに進めないという劣勢に立たされた。それでも直後の右CKから35歳のベテラン・山口智がヘッドで押し込んで1−1に追いつく。「ジェフを立て直したい」とガンバ大阪の残留要請を断り、昨季から古巣に戻ってきた彼の心意気が同点弾に結びついた。

だが、千葉はここ最近の低調ぶりを断ち切ることができず、後半もゴールを奪えない。ケンペス、谷澤達也、兵働昭弘、森本貴幸といったそうそうたるタレントを擁しながら、それを有効に使いきれないのはここ数年と全く同じ。徳島の体を張った守りに跳ね返され、1−1のままタイムアップの笛。昨年はプレーオフ決勝で涙を飲んだ千葉は、またもJ1復帰の道を閉ざされてしまった。サッカーは個々の能力が高くても勝てるとは限らないが、近年の千葉の足踏み状態は目に余るものがある。フロントを含めて本気で立て直しを図らなければ、万年J2は現実になってしまう。2年連続でプレーオフで敗退した現実を重く受け止める必要があるだろう。

この2試合を受け、12月8日の東京・国立競技場でのファイナルは、京都対徳島戦に決まった。大木武・小林伸二という百戦錬磨の指揮官同士がどういう采配を見せるかは非常に気になるところ。大木監督はこういう大舞台だからこそゴールに強くこだわるだろうが、しぶとい小林監督の堅守を崩せるほどのアタッカーが今季の京都にはいない。次のゲームも1点差勝負になりそうな雲行きだ。両監督の動きに注目しながら、今季Jリーグラストゲームを見てみたい。

photo

元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

お知らせ

イラスト ◆Facebookページ J SPORTS×Football 毎日更新中!
スーパースターの武者修行時代 その2 クラウチ編はこちら

スカパー!×J SPORTS J SPORTS オンラインショップ