26日のUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)・ボルシア・ドルトムント対ナポリ戦を取材し、ドルトムントの香川真司(マンチェスターU)がいた2シーズン前からの進化について前回書いたが、翌27日にはその香川が先発フル出場した、UCL・レバークーゼン対マンチェスターU戦を現地取材するチャンスを得た。レバークーゼンのバイアレーナを訪れるのは、2006年ドイツワールドカップ直前に行われたドイツ対日本のテストマッチ以来。高原直泰(東京V)が2ゴールを叩き出した7年前の一戦に懐かしさを覚えつつ、香川真司のパフォーマンスに注目した。

この日のマンチェスターUはGKデ・ヘア、DFスモーリング、ファーディナンド、エヴァンス、エヴラ、ボランチ・ジョーンズ、ギグス、右MFバレンシア、左MFナニ、トップ下・香川、FWルーニーの4−2−3−1。香川がトップ下で起用されるのはデビッド・モイーズ監督就任後初。ファンペルシーの負傷欠場によってこのポジションが与えられた形だ。そんな彼の一挙手一投足に大きな期待が寄せられた。

そのマンチェスターUだが、立ち上がりの20分間はホームのレバークーゼンに押し気味に試合を運ばれた。今季ブンデスリーガで7得点を叩き出すエースFWキースリング、4点を挙げるソン・フンミンら好調のアタッカー陣が積極的にシュートを狙った。マンチェスターUはそれをしのぎ、22分の香川のボール奪取からギグス→ルーニー→バレンシアとつながって先制点を手に入れる。「いい速攻でゴールが入ったんでキレイだったと思います」と香川自身も自画自賛する1点目が入り、試合の流れがガラリと変わった。

そこからマンチェスターUは一気に主導権を握る。31分にはルーニーのFKにスモーリングとDFスパヒッチが競り合い、スパヒッチの頭に当たってオウンゴールで2点目が入る。トップ下の香川はFWのルーニーと絶妙の連携を見せながらゲームを作り、ゴールチャンスを演出していた。先週末24日のプレミアリーグ・カーディフ戦を右足首の負傷で、欠場したとは思えないキレ味鋭い動きを披露した。

後半になると、香川が自らゴールに飛び込んでいくプレーが増える。その筆頭が、バレンシアが右から浮き球クロスに頭で飛び込んだ後半4分の決定機だ。GKレノと衝突し、ゴールには至らなかったものの、ドルトムント時代や、昨季マンチェスターUのいい時に見せていた得点感覚の鋭さが垣間見えた。バレンシアがボールを持った瞬間、香川がフリースペースに飛び込んでシュートを狙う形は2度3度あり、これを確実にモノにできるようになれば、香川は点取屋としてワンランク飛躍できそうだ。

彼らはその後も攻撃の手を緩めず、21分にCKからエヴァンスが3点目をゲット。32分には香川の創造性あふれる浮き球のスルーパスから、ルーニー→スモーリングと渡って4点目が生まれる。さらに43分にはギグスの縦パスに抜け出したナニが5点目を奪い、レバークーゼンを一蹴。UCL決勝トーナメント進出を決めた。トップ下で75分あまりプレーした香川はルーニーとの相性のよさも追い風になり、持ち前の創造性や運動量、ゴールへの飛び出しの鋭さをうまく発揮していた。左サイドでやるよりも明らかにやりやすそうで、この日のパフォーマンスで指揮官に新たな印象を植え付けたと言っていいのではないか。

「ルーニーは常に周りの選手をいかしてくれますし、しっかりと得点にも絡める選手だから、自分が合わせてもらってる感じはすごくある。やってて楽しいです。トップ下に関しても、自分は動きながらプレーするタイプの選手なのでやりやすい。しかし代表でも左をやってるように両方で高いものを示していきたいし、それは自分にとって必ず意味のあること。今の自分は状況に応じて足りないものを求めているので、しっかりとハードワークしていきたいです」と香川もトップ下で手ごたえをつかんだようだ。これでモイーズ監督も彼を戦力としてより重視するだろう。

前回の原稿で、冬の移籍で香川がドルトムントに復帰する可能性について書いたが、それは限りなく低くなったと言っていい。このまま調子を上げていけば、マンチェスターUで必要不可欠な戦力としてシーズンを戦えるはずだ。ただ、トップ下の定位置を確保しようと思うなら、得点を量産することが絶対条件になってくる。ドルトムント時代にフィニッシャーとして華々しい活躍を見せていた彼には、その重要性がよく分かっている。

「今日もやっぱりゴールが必要でしたね。うちにはサイドにガンガン行く選手がいるから、ゴール前の動き出しの質であったり、そこの精度を高めることが必要になってくる。あとはコンビネーションのところでもっと要求していくしかないかなと思います。今の自分はどちらかというと、周りをいかす方になっている。もっとフィニッシュに行けるようにしたいです。後半は多少よくなったけど、それを最初からやっていけるようにしたい」と彼は自分の課題を明確に捉えている。今季初ゴールが飛び出せば、そのまま一気に得点を重ねていけそうな予感もある。そのきっかけを香川がつかむのはいつなのか。新境地を開拓しつつある彼の今後が楽しみだ。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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