オレンジと青の段柄ジャージのフィフティーンが、ボールを広く展開するラグビーと、激しいタックルで国立を沸かせてきた姿を懐かしく思うラグビーファンは多いだろう。法政大は、関東大学リーグ戦優勝13回、全国大学選手権優勝3回を誇る名門だが、関東大学リーグ戦優勝は2004年から遠ざかっており、2008年度を最後に国立の地を踏むことができないでいる。

全国大学選手権でも、2011年は関東大学リーグ戦5位で関東第5代表決定戦に勝利しての出場権を得たが1回戦で敗退。昨年、2012年はセカンドステージで筑波大に大敗(3−61)するも、関西学院大と慶応大に接戦で連勝。しかしグループ2位でファイナルステージには進めなかった。そこから遡ること、2010年には関東大学リーグ戦で7位となり、史上初めての入れ替え戦に回る憂き目を見ている(山梨学院大に勝利し1部には残留)。当然、全国大学選手権出場も19年ぶりに逃してしまった。

そんな伝統校を復活させるために今年から就任したのが、谷崎重幸監督。法政大OBであり、東福岡高監督時代には3連覇を含む4回の花園(全国高校大会)の頂点を経験した。そんな名将・谷崎監督が東福岡高を去り、法政大初のフルタイムの監督に就任する(契約期間は3年)というニュースは、今春のラグビー界の大きな話題になった。

「タイミングですね。福岡にいれば、もう少し安泰ではあったかもしれません。でも今年で55歳、子どもも大学に進学したし、母校に必要とされるなら、お役に立てるなら、チャレンジしたいと思った。30年前のオレンジの血が騒いだのかもしれません」(谷崎監督)。

谷崎監督は就任後から、東福岡高時代と同様に「試合では1対1のブレイクダウンが一番多い」と接点の基本練習を徹底した。また1対1を支える選手個々の強化のために毎朝ウェイトトレーニングを1時間ほど行い、昨年までは選手たちに任されていた朝食を学食で一緒に食べるようにした。さらにフィジカル強化のために東福岡高時代からの盟友である松田孝幸氏を招へいしたり、トレーナーが寮に常駐して選手のケアにあたれるようにするなど、環境面での整備を進めた。

東福岡高時代の教え子でもあるFL(フランカー)西内勇人(3年)は「大学に入ってからも練習時間はあまり減っていません。でも内容は濃くなりましたし、環境や自分の意識は変わりました」と感じている。高校生を長年にわたり指導し、ニュージーランドへのコーチ留学を経験している谷崎監督からは、勝負師というよりもラグビーを通じた教育者という面が感じられる。

大学でもそのスタンスは変わらず、「一つ一つ、小さなことを惜しまずに仲間のために体を張れる選手を育てたい。人間力ですね」と語る。ラグビー面での指導は元九州電力のHO(フッカー)谷口大督ヘッドコーチや元NECのPR(プロップ)福田智則コーチ、BK(バックス)は元東京ガスのSH(スクラムハーフ)穂坂亘コーチにある程度任せつつ、規律や部全体のマネジメントにも携わっている。

「谷崎イズム」はすぐに結果となって現れた。春は早稲田大、慶応大に惜敗したものの、夏の練習試合では慶應大にリベンジ(32−12)し、昨年の全国大学選手権で大敗した筑波大には敗れるも、24−26と2点差まで迫り、「法政大強し」の印象を与えた。また夏には中国電力を破り、トップリーグのコカコーラ・ウエストの胸を借り、さらに法政大OBのトップリーガーや日本代表経験者がスポットでコーチにあたるなど、強化は順調のように見えていた。

しかし、期待感の中で開幕した今年の関東大学リーグ戦。初戦の立正大戦こそ勝利したものの、日本大、流通経済大、中央大、大東文化大との試合はすべて接戦にもつれ込むも勝利を逃し続け4連敗を喫してしまった。大東文化大に敗戦後「1対1、当たりの部分では負けていないのですが、FWでもBKも(トライを)取れるという器用な面があって、チームとしての方向性にまだ気づけていない。競りながらもすべて勝ち切れていない。もっと実践的な練習をしたい」と谷崎監督は悔しさを露わにしていた。

「勝たせてやれなかったのは私の責任です。しかし、まだ試合があるし、全国大学選手権出場はあきらめていません」と谷崎監督が言えば、選手やコーチも「プロセスは間違っていない。監督を信じてやっていきたい」と谷崎監督に全幅の信頼を置いている。ディフェンスで淡泊な部分もあるが、あとほんの少しFWとBKの歯車が噛み合えば、トライを取れるチャンスでしっかり取り切れば、白星を挙げることができるはずだ。

4月、就任直後の谷崎監督は「私が来て、すぐにどうこうなるものではないと思います。ただ、スタッフと協力してどこよりも大きな根っこになって、選手を陰で支えて花を咲かせたい」と抱負を述べていた。やはり根が張り、芽が出て、花が咲くまでは時間がかかると、今までの指導歴で実感していたが故の台詞であろう。まず残りの東海大戦(11月9日)と拓殖大戦(11月24日)で、4月から取り組んできた成果をしっかり出し切りたい。

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斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材中!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)など著書多数。≫Twitterアカウント

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11月24日(日)午前11:50 J SPORTS 1 生放送 #7 中央大学 vs. 日本大学
11月24日(日)午後01:50 J SPORTS 3 生放送 #9 拓殖大学 vs. 法政大学
11月24日(日)午後01:53 J SPORTS 1 生放送 #8 東海大学 vs. 流通経済大学

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