[写真]トニシオ・バオフ選手

黒のジャージはラグビー界では強さの象徴である。天理大も、1984年の全国大学選手権(第21回)でベスト4に進出し、準決勝を国立競技場で慶應大と戦った。当時、関西の大学ラグビーは、同志社大と天理大が2強だった。

だが、他大学が人材確保のために推薦制度を充実させるなどさまざまな方策を講じるなか、同志社大と同様に天理大も立ち遅れた。当時の天理大には体育と外国語の学部しかなく、人材確保は難しかった。強豪大学では100名を超える部員が当たり前だった1980年代も、50名以下の部員が普通だった。80年代後半に実力の低下が成績に表れはじめ、1990年には関西大学AリーグからBリーグへ、翌年にはCリーグへと下り坂を転げ落ちるように降格した。当時は部員の練習に取り組む姿勢も低下の一途だったという。

そんな窮地に、ラグビー部再建の責務を背負って登場したのが小松節夫監督だった。

小松は、天理市の出身で天理高校を卒業したあとフランスに留学。パリのラシンクラブで2シーズンにわたってプレーし、フランスの創造的なプレースタイルを学んだ。帰国後は同志社大ラグビー部、日新製鋼ラグビー部で主にCTBとして活躍。さまざまな経験を経て、生まれ故郷に帰ってきたのである。2年間のコーチ生活を経て、1995年より監督に就任した小松は、理詰めのプレースタイルを選手に叩き込む。とはいえ、物腰の柔らかい小松は叱り飛ばすようなことはしない。理解できない選手にも粘り強く諭すように言って聞かせた。「なぜトライができたのか、なぜトライを獲られたのか。なぜ?と問いかけ続けました。ラグビーの仕組みを教えるところから始めたわけです」

小松監督の理想とするプレースタイルの特徴は、ボールを下げないことにある。「ラグビーはパスを前に投げることができませんが、攻めるスペースは前にあるんです。ボールを持った選手が突進して相手選手を巻き込んだら、すぐにフラット(真横)なパスを出して、そこに次の選手が走り込む。そうやって前のスペースを攻めるのです」。人材に恵まれず、体格も小さな天理は、「人材によって戦い方を変えるのではなく、人材を得れば勝てるスタイル」(小松監督)を磨き続けた。パワー負けはしても、パスによる抜き合いなら負けない。タックルのできない選手はレギュラーにしない。こうして天理大学は着々とチーム力を上げていく。

2002年、Aリーグに再昇格。2008年に、SO立川理道(天理高校)、トンガからの留学生アイセア・ハベア(日本航空第二高校)ら、同世代のなかでも飛び抜けた逸材が期せずして入部すると飛躍的にチーム力は上がった。2010年にキャプテンとなった立川直道(理道の兄)は人格者として知られている。彼は、早朝練習で厳しい走り込みを敢行するなど、本格的に日本一になるためのトレーニング環境を率先して作り始める。その年は、35年ぶりの関西大学Aリーグ制覇を果たしたものの全国大学選手権(第47回)は2回戦で敗れた。しかし、翌2011年には全国大学選手権決勝に進出。王者・帝京大と終了間際まで同点という大接戦を演じ、敗れたものの全国のラグビーファンに「小さくても勝てる」天理ラグビーのおもしろさを伝えた。

強くなれば志の高い選手が集まってくる。昨夏(2012年)には全部員が入居できる寮が完成し、栄養管理も充実し、悲願の日本一を狙う環境が着々と整えられた。今季は関西大学Aリーグの4連覇がかかる。しかし、現実には課題が多い。大学選手権準優勝メンバーの先発組で残っているのは、CTBトニシオ・バオフのみ。メンバーは大きく入れ替わった。相変わらずサイズも小さく、大舞台の経験値の低さもあって、今季は試練のシーズンとなると言われていた。予想通り、9月29日の開幕戦では、強力FWの大阪体育大に押し負け、手痛い黒星スタートとなった。若い選手たちがどこまで成長できるか。監督就任18年目となる小松監督の手腕の見せどころである。

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村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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