日本女子代表(なでしこジャパン)が、ナイジェリア女子代表との親善試合で連勝した。もっとも、相手のナイジェリアは平均年齢21歳程度の若いチームであり、最初からチーム力にははっきりした差があったので、2連勝は当然の結果ではある。女子代表の試合を見るのは7月の東アジア選手権以来だった。あの時の、すべてがチグハグだった試合ぶりと比べると、ナイジェリア戦は見違えるようだった。「改善された」と言うべきか、「本来の姿を取り戻した」というべきか……。

長崎での第1戦はテレビで観戦しただけだったが、澤穂希の存在感が際立っていた。いつも思うことだけれども、本当に攻守ともに、ポイントとなる場面に必ず顔を出す澤の戦術眼には恐れ入るばかりだ。長崎での試合では、澤と宮間あやがボランチでコンビを組んだのだが、澤が隣にいることで宮間が安心感を持って、気持ちよさそうに、のびのびとプレーしていた。東アジア選手権では、宮間は不調だった。攻撃のスイッチを入れるパスを出すどころではない。宮間のミスをきっかけにピンチを招く場面があまりにも多かった。

宮間は、長崎の試合で取り戻したリズムの良さを、千葉での第2戦にもそのまま持ち越していた。PKでの先制点を決め、FKから阪口夢穂の2点目をアシストと、宮間は2ゴールに絡んだが、そんなゴールの場面は、宮間であれば当たり前のプレーだろう。相手のDFとDFの間を通して、サイドの選手を走らせる絶妙のスルーパスこそが、宮間の本当の見せ場だった。ナイジェリアの中央での守備はかなり堅かったので、いつも以上にサイドを使う意識が高かったように見えた。そして、宮間は守備面でも見事に貢献した。

相手のMFがドリブルで持ち上がってくるような場面で、しっかりと相手のコースを抑えて攻撃を遅らせたり、ボールを奪ったり。とくに、相手のドリブルに対して、わざと片方のサイドを開けて誘い込んでボールを奪ったり、アプローチに行くタイミングをわざと遅らせたりと守備面での駆け引きが見事だった。かつて、佐々木則夫監督が就任して、最初に僕たちを驚かせたのが、澤のボランチ起用だった。攻撃的なセンスは折り紙つきの澤だったが、彼女のゲームを読む眼は守備でも生きた。いや、「生きた」どころの話ではない。ピンチを招きそうな場面でスーパーマンのように澤が現われて、何度も日本の危機を救ったことがいったい何度あったのか。

千葉での試合で、守備のうまさを発揮する宮間を見ながら、僕は澤が最初にボランチで起用された試合のことを思い出していた。やはり、澤の後継者は宮間あやなのであろうか。日本は、長崎での第1戦と千葉での第2戦で大幅にメンバーを入れ替えた。「入れ替えた」というよりは、まったくの別チーム。2試合ともに出場したのは、宮間のほか、川澄奈穂美と大儀見優季のわずか3人だけだった。

つまり、千葉での試合には澤はいなかったわけである。澤の復帰によってリズムを取り戻した日本が、澤がいなくなってどうなるか……と思ってみていたのだが、前半の45分は、まるでピッチの上に澤が立っているように感じた。宮間のプレーを見ていると、まるで澤が宮間に乗り移っているかのように感じたし(失礼、宮間さん!)、あるいは宮間の横で澤がサポートしているようにも思えた。

長崎と千葉でまったく違う選手を出した日本代表。一つのチームを二手に分けたようなチーム構成だった。もちろん、これは若い選手をテストするためだ。若い選手だけを集めて試合をするのではなく、ワールドカップ優勝メンバーとともに、すでに程度完成されている「なでしこジャパン」というチームの中で多くの若手を起用して、その対応力を見るのが目的だった。そのため、たとえば、千葉での試合では左サイドが弱くなってしまったし、フィニッシュの場面でイメージが共有できない場面が多かった。その結果、アタッキングサードまではボールをうまく運べたのにフィニッシュまでつなげられず、結局、PKとセットプレーでの2ゴールだけに終わってしまった。

そして、後半に入ると、パワーを生かして攻め込んできたナイジェリアに対して受身に回ってチャンスを作らせてしまったが、岩清水梓の相変わらずの総合的な守備力でしのいでそのまま2-0で逃げ切った。積極的なラインコントロールで何度もオフサイドを取れたのが最大の収穫だったか……。そして、攻撃面でも前半に比べるとテンポが明らかに落ちてしまっていた。前半は、ピッチ上にまるで澤が立っているかのように感じられたのだが、後半はどうやら澤は帰ってしまったようだった。

やはり、澤穂希の存在感は大きい。そして、ワールドカップ優勝メンバーと若手の格差も、まだまだとてつもなく大きい。千葉の試合でも、若手で可能性を感じさせてくれたのは、左サイドバックで先発し、85分間プレーした上野紗帰と最後の10分間だけ与えられた短時間で何度かアイディアの豊富さを見せた田中美南くらいのものだった。

すばらしい成績を残したチームは、クラブチームでも、代表チームでも、世代交代が大きな問題になる。次のワールドカップまで、あと2年。2年であれば、澤も含めてまだまだあまり顔ぶれを変えずに乗り切ることも可能だが、レベルアップのためには何か、新しいことを持ち込まなければならない。

さらに、日本の女子代表の将来を考えたら、若手の登用は不可欠だ。それとも、澤さんに2020年の東京オリンピックまでやってもらいましょうか……。

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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