[写真]左から打田しづか選手、山口茜選手、ワン イーハン選手

本人曰く「しょせん、高校1年生(笑)」が、どでかいことをやってのけた。
今年度、福井・勝山高に進んだばかりの山口茜が、全種目を通じて大会史上最年少の16歳3カ月で8強入りすると、4強、決勝進出……と次々に最年少記録を更新。
ついには決勝でも打田しづか(日本ユニシス)を破り、日本人としてこの大会初めてのタイトルを獲得したのだ。16歳3カ月での優勝は、スーパーシリーズ(=SS)の男女シングルスを通じて最年少で、日本選手のSS単制覇は、昨年フランスOPの三谷美菜津(NTT東日本)以来2人目のこと。いくつもの肩書きがついたこの偉業、山口にとってはSSの出場自体がわずか2回目で、しかも予選からの勝ち上がりというから恐れ入る。

「実感が湧きません。優勝なんて、夢にも思わなかった。(日本)代表の合宿では、だれとやっても負けてばかりですから。格上の人たちばかりなので、向かっていけたのがよかった。ただ、国際大会になれば年齢は関係ありませんよね」

たとえていえば、入学したばかりの高校1年生が、いきなり甲子園で好投するようなものか。いやいや、世界選手権3位のシンドゥ・P.Vや、昨年この大会を制した戴資穎(台湾)といった世界トップランカーを破るのだから、同じ高校生が相手の甲子園より、何倍も価値がある。とはいっても、目にも止まらぬスピードでばったばったと三振を奪う速球派ではない。なにしろ身長は、ネットの高さとほぼ同じ156センチ。強打一発でねじ伏せようにも限界がある。それならば――と丹念にコースをつき、緩急を駆使して打ち取るための仕掛けをほどこす頭脳派が山口だ。

相手を前におびき出し、足を止めたと思ってもそこからフィニッシュを焦らない。もう一度後ろに振り、相手の動きを読み、じっくりためて仕留める。決勝で当たった打田によると、
「すべてのショットの質がいいから、彼女が待っているところに打たされているようでした。しかも、前に詰めてくるスピードが速いし……」
と、4月の大阪国際に続いての連敗に、すでに高校生だとはとらえていない。身長がない分、動き回るしかない……と山口はいうが、ショットの質の高さ、読みの鋭さはどこからくるのか。

「地元では男子コーチと打ち合いますから、いろんなフェイントには、予測して動かないとついていけません。そうするうちに、自然に読みが磨かれてきたのかも。また代表に入り、トレーニングしたことで体幹が強くなり、脂肪が減って筋肉が増えました」

ここに、3歳から補助輪なしで自転車に乗ったバランス感覚や、天性のラケットワークが加わって、スーパー高校生が誕生したわけだ。「世界では10代が活躍しているといっても、雲の上のイメージ。まだ1回勝っただけなので、その仲間入りできるように頑張りたい」と、照れ笑いしながら快挙にも謙虚。中国勢がのきなみ、国内の大運動会あとでコンディションを崩していたとはいえ、昨年準優勝の廣瀬栄理子でも、今季急成長の高橋沙也加でもなく、優勝は高校1年生。最年少記録は、しばらく破られそうにない。

[写真]左から田児賢一選手、リー・チョンウェイ選手、グエン・ティエンミン選手、ガオ・ファン選手

惜しかったのは男子シングルスの田児賢一(NTT東日本)で、どの大会よりも思い入れの強いここで、日本男子シングルスとしてこれも史上初めての決勝進出。王者・リー・チョンウェイ(マレーシア)との14度目の対戦はまたも敗れたが、1ゲーム目は先にゲームポイントを握るなど肉薄した。「あそこで1点を取れないのが力のなさ」と自嘲する田児。ただ相手のチョンウェイは「田児は、ホームで最高のパフォーマンスをした。次に当たるときはもっときつい試合になるのでは……」と警戒を強めている。日本勢として初めての男子シングルスのSS制覇を、早く見たい。

 
 

photo

楊 順行
1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し野球、バドミントンなどの専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆している。

スカパー!×J SPORTS J SPORTS オンラインショップ