6月のコンフェデレーションズカップ(ブラジル)と8月のウルグアイ戦(宮城)の世界トップとの4試合で13失点を喫した日本代表にとって、今回の9月2連戦は守備再構築が最重要テーマだった。しかし6日のグアテマラ戦(大阪・長居)は相手との力関係の差があまりにも大きすぎた。放ったシュート数は日本の25本に対し、グアテマラが3本。ボール支配率も62.4%に対し、相手は37.6%と開きがあった。ザッケローニ監督も試合後の記者会見で「沢山のチャンスを作ったが、ゴール前の決定力が欠けていた」と3点しか取れなかった攻撃陣への不満を口にしており、守りに関しては本当に修正できたかどうかを確認するには至らなかった。

2日からの大阪合宿で、指揮官が守備の距離感やサイドにボールが行った時の追い込み方などの約束事を繰り返したため、選手たちはそれを実践しようと確かに努力していた。キャプテンの長谷部誠(ニュルンベルク)が「相手どうこうに関係なく、全員で守備意識を高く持ってやれたのはよかった」と言い、ここ最近大きなミスを繰り返してきた吉田麻也(サウサンプトン)も「無失点で抑えたし、全般的に悪くなかった。まず1回いい形ができたと思う」と安堵したように、大きな崩れはなかった。

けれども、このグアテマラを抑えたからといってワールドカップ出場国レベルの相手を完封できる保証は全くない。10日のガーナ戦(横浜国際)で相手がボアテング(シャルケ)、エシエン(チェルシー)といったタレントたちを来日させ、試合に出してくれれば、練習の成果がある程度はハッキリするはずだ。6日のザンビア戦に勝利し、2014年ブラジルワールドカップアフリカ最終予選にコマを進めた彼らがベストメンバーを送り出してくれることをまずは期待したい。守備面は次戦後に評価すべきだろう。

一方、攻撃に関しては、前半は自陣に引いて守りを固める相手を攻略しきれず苦しんだ。1トップに東アジアカップ(韓国)でデビューした大迫勇也(鹿島)が入り連携面でスムーズでない部分があったこと、マンチェスターUで出場機会に恵まれていない香川真司が前線へ入り込む動きが少なかったこと、3度のビッグチャンスを迎えた清武弘嗣(ニュルンベルク)が決定機を外したこと、パス回しが各駅停車になっていてダイナミックさに欠けたこと…などが要因として挙げられる。香川が「前半はゴール前に入る人数が少なかったし、時間が経つごとに攻撃の難しさを感じた。自分自身、シュートをほとんど打っていないし、本当に悔しい。代表で求められているゴールという結果を残せずに責任を感じる」と不完全燃焼感を露わにしたように、前半の攻撃陣は空回りしていた。

それが本田圭佑(CSKA)と柿谷曜一朗(C大阪)の投入によってガラリと流れが変わったのだから、見る者を驚かせたことだろう。前半のアップ中やハーフタイムにも本田は柿谷としきりに話をして、コミュニケーションを取っていた。「あまり相手に左右されずにやるようにと曜一朗には事前に伝えていた」と本田が語るように、ウルグアイ戦の時より柿谷の長所を生かしたプレーを心掛けていたのだろう。2人がパス交換したり、一方が作ったスペースに入ったりというコンビネーションは前回より確実に多くなった。

後半開始5分の本田の先制点の場面も、長友佑都(インテル)の左クロスに柿谷が鋭く反応。ニアサイドに流れてDF2人とGKを引きつけ、本田のマークをDF1人にした。「あれがダビド・ルイス(チェルシー)だったら触られていた」と本田はあくまで自分に厳しい発言をしていたが、それでも柿谷との意思疎通がうまくいったことには手ごたえをつかんだようだ。「今まで日本代表のFWは割と両極端だった。デカくてもあまり足元を得意としないプレーヤーだったり、逆に足元はうまくても前で得点って数字を挙げられない選手だったり…。曜一朗は全てを兼ね備えている。ようやくこういうタイプのプレーヤーが出てきたと思う」とメディアの前で公言したのだ。

柿谷も本田の評価を手放しに喜んだわけではなかったが、主力組と組んでわずか2試合目てここまで息の合ったプレーができたことに自信を得た様子。「理解のスピードが他の選手と一緒ならここにいる意味がない。人よりは早く吸収して取りこめないといけない」と発言していた。

加えて、周りを生かしつつも、60mのドリブル突破から本田にスルーパスを出した場面を筆頭に、自分の持ち味を要所要所で出せるようになってきた。「ただボールを取られてもいいからドリブルするだけなら小学生でもできる。昨日はスペースがあったので、ワンタッチでつないだ方がいいと思ってやった。自分で行ける時はやります」と言う柿谷には非凡なインテリジェンスが感じさせる。

その彼と本田がガーナ戦に先発するのはほぼ確実。次のゲームは現状での最強布陣といえる構成で真の実力が試される。重要な一戦で柿谷のゴールをぜひ見てみたい。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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