日本代表が柿谷曜一朗(C大阪)の劇的決勝弾で韓国代表を下し、初タイトルを獲得した東アジアカップ(韓国)から約1カ月。14日には日本がウルグアイ戦(宮城)、韓国がペルー戦(水原)に挑んだ。常連メンバーと東アジア組との融合に本腰を入れ始めた日本とは対照的に、韓国の方は引き続きK・Jリーグ組の見極めに重点を置いていたようだ。

洪明甫(ホン・ミョンボ)監督が招集したメンバー20人を見ると、Kリーグ勢は7月末の日韓戦でゴールを決めた尹一録(ユン・イルロク=FCソウル)や日本でも活躍した李根鎬(イ・グノ=尚武)ら12人、Jリーグ勢が金昌洙(キム・チャンス=柏)、金珍洙(キム・ジンス=新潟)ら8人。8月のインターナショナルデーは1試合のみで、活動が3日しかできなかったため、指揮官はリスクを冒して欧州組を呼ぶのを避けたのだろう。

そのペルー戦は、すでに報道されている通り、スコアレスドローという結果に終わった。韓国は今回、金信旭(キム・シンウク=蔚山現代)や李東国(イ・ドング=浦項)のような大型FWを外し、運動量の高い李根鎬のようなタイプのFW4人を呼び、テストしたという。しかし、結果的に相手守備陣をこじ開けることができなかった。

東アジアカップの韓国も、日本戦以外はオーストラリア・中国戦ともに0-0で、洪明甫監督体制が発足してからわずか1点しか取れていない。決定力不足は極めて深刻だ。具滋哲(ク・ジャチョル=ヴォルフスブルク)や池東源(チ・ドンウォン=サンダーランド)のように試合に多少なりとも出ている欧州組が加われば、少しは状況も改善されるのだろうが、2014年ブラジルワールドカップに向けて道のりが順風満帆とは言い切れないところがある。守備崩壊に悩む日本を含めて、アジアをリードすべき両国が困難に直面しているのは確かだ。

その韓国代表でフィジカルコーチを務めているのが、日本人の池田誠剛(現杭州緑城フィジカルコーチも兼務)氏である。池田氏とは中村俊輔(横浜)がマリノスの新人だった頃に知り合い、長い間注目してきたが、昨夏のロンドン五輪銅メダル獲得に貢献されたのを機に取材を深め、その活躍ぶりを1冊の本にまとめさせていただいた。「日本人初の韓国代表フィジカルコーチ・池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由」(カンゼン刊)というものである。

その中で、池田氏は日韓両国のサッカースタイルや選手の身体的・メンタル的特性の違い、日韓両国サッカー界の進むべき道などを語っているのだが、「やはり重要なのはお互いが刺激しあって切磋琢磨していくこと」だと改めて強調していた。

東アジアカップの日韓戦が行われたソウル・蚕室オリンピックスタジアムで「歴史を忘れた民族に未来はない」と書かれた横断幕が韓国側サポーター席で掲げられた事件などを踏まえても、昨今の日韓関係は決して良好とは言えない。そういう状況下で、日本人が韓国で働くのはリスクが大きい。とりわけ代表チームというのは反日・反韓感情がダイレクトに反映されやすい。実際、昨年のロンドン五輪3位決定戦の後、朴鐘佑(パク・チョンウ=釜山)が「独島は我が領土」と書かれた紙を掲げた事件が起きた際には、池田氏にやその周辺にも誹謗中傷があったという。

それでも彼は「日韓両国のサッカーのレベルが引き上げないと、アジアが世界のトップに食い込むことはできない」と考え、洪明甫監督とともに韓国代表で働く道を選んだ。現在、韓国で働く日本人フィジカルコーチが池田氏を含めて4人いることを以前、本コラムでも書いたことがあったが、韓国サッカー界にとってフィジカル面を専門的に強化する指導者はまだまだ稀有な存在である。だからこそ、ジェフ市原、横浜F・マリノス、浦和レッズで長年フィジカルコーチを務め、百戦錬磨の経験を持つ池田氏に白羽の矢が立ったのだ。

「池田コーチが来てくれたのは韓国代表にとっても大きなプラス」と韓国メディアも好意的に受け止めているし、Kリーグクラブ関係者も「選手が代表から帰ってきた後、コンディションがよくなっているのは池田氏のおかげだと思う」と前向きに言うほど、その仕事は高く評価されている。そういう有能な日本人コーチの存在を日韓両国のサッカー関係者・ファンはもっとよく知るべきだし、その働きぶりがリスペクトされていい。池田氏がいることで、我々日本人にとっても韓国代表の動向がより興味深くなるのは間違いないだろう。

韓国も2010年南アフリカワールドカップでは日本と同じベスト16まで勝ち上がっており、次なるターゲットはそれ以上のステージに進出すること。日本人フィジコはロンドン五輪の時と同じようにその原動力になれるのか…。そこに注目して、これからの韓国代表の変化を見ていきたいものだ。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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