2009年エジプト、2011年コロンビア、2013年トルコと3大会連続でU-20ワールドカップを逃している日本。負の連鎖を止めるためにも、何としても2015年ニュージーランド大会の出場権を獲得しなければならない。その大目標に向け、今年春から95年生まれ以下の選手たちで構成されるU-18日本代表が始動。まずは今年10月に中国で開催されるアジア1次予選に挑むことになっている。

その前哨戦と位置付けられたのが、8月15〜18日に静岡県内で行われたSBSカップ国際ユース大会だ。かつてジュビロ磐田の黄金期を築いた鈴木政一監督がどのようなチーム作りをしているのか、そして今回のタレントたちのレベルがどうなのかをチェックすることは、今後を占ううえで非常に重要だった。

U-18日本代表は、まず15日にU-18ウルグアイ代表(実際は今秋のU-17ワールドカップUAE大会に出るチーム)と藤枝で対戦。2−0で幸先のいい勝利を収めた。16日は草薙に場所を移してU-18ロシア代表とのゲームだったが、1次予選の連戦を考えて指揮官はメンバーをほぼ入れ替えずに戦い、金子翔太(JFAアカデミー福島)の2点、越智大和(広島ユース)の1点、北川柊斗(名古屋U-18)の1点で4−0と圧勝した。そして休養日を1日挟んで18日にエコパで迎えた最終戦は静岡ユースと激突。川辺駿(広島)の終了間際の得点で1−0の勝利を収め、3連勝で優勝というノルマを果たした。

このうち、2日目のロシア戦を現地取材したのだが、今大会の鈴木ジャパンはエース・南野拓実(C大阪)と今季J2・17試合に出場している深井一希(札幌)を招集できなかったものの、前回ユース代表としてアジア最終予選を戦った松本昌也(大分)や今季アジアチャンピオンズリーグ(ACL)を経験した川辺らを軸に連動性の高いサッカーを披露。この時期にしては非常にチーム完成度が高かった。しかし鈴木監督は「選手たちはもっとできる。その能力を出しきれていない」と不完全燃焼感を抱いているようだ。

というのも、18歳というのは世界的に見ればプロとしてコンスタントにピッチに立っていてもおかしくない年齢。実際、南野はセレッソ大阪で完全にレギュラーをつかみ、日本代表の柿谷曜一朗や山口蛍らと遜色ないパフォーマンスを見せている。だが、それ以外の同年代の選手たちはJクラブで必ずしも出場機会を得ていない。深井も今季序盤はよかったが、最近8試合ピッチに立てていない。SBSカップに参加した松本、三浦弦太(清水)、ハーフナー・ニッキ、望月嶺臣(ともに名古屋)、田村翔太(湘南)らプロ1年目の選手たちは実戦経験をほとんど積めていないのだ。Jクラブのユースチームや高校サッカーでプレーしている選手たちは連戦続きで相当に負荷をかけているのに、プロになった途端、試合をしなくなるのが問題というのは、かなり前から言われていること。そういう選手たちを集めて鍛えなければならないU-18代表の監督は大変だ。

「選手たちの環境に問題がある。試合に出ていないから彼らの目標設定も定まらない。ユース代表でアジアを勝ち抜くだけじゃなく、彼らは五輪代表、A代表を目指していく選手。そういうことを自発的に考えられなければ厳しい。チーム発足時よりはかなりよくなってきたとは思うけど、まだまだ足りない」と指揮官は苦言を呈していた。

そういう発言が出てくるのも、磐田の黄金期をリードした経験があるからだろう。当時のチームには日本代表で活躍した中山雅史、名波浩、藤田俊哉らを筆頭に、若手だった福西崇史、田中誠、鈴木秀人(現磐田ユース監督)、奥大介らキラリと光る選手たちがいた。当時の磐田では、試合出場機会に恵まれない彼ら若手だけを集めて集中的にトレーニングし、サテライトの試合に出していた。こうした底上げが彼らの才能を大きく開花させたのだ。

今はクラブ経営の悪化によってサテライトがなくなり、若い世代の実戦の場がなくなってしまった。それが問題視され、レンタル移籍が活発化し、柿谷や齊藤学(横浜)のようにJ2クラブで再生する選手も増えた。が、まだまだその数はわずかだ。クラブによってはレンタル移籍に消極的なところもあり、サッカー選手にとって一番伸びるといわれる18〜20歳の貴重な時期を逃してしまうのだ。

ユース代表で活動できるのは月1回程度。それ以外はクラブでプレーしている。その環境が改善されなければ、ユース代表が抜本的に強くなることもありえないと鈴木監督は考えている。

「南野を一度だけ招集したけど、試合に出ていることもあって、攻守ともに別格だった。他の選手たちもいい刺激になったと思う。実際、松本なんか十分やれる力を持っている。彼らが揃って試合に出るようになって、応用力や適応力を身に付けてくれるといい」と指揮官も強調していた。

現時点でかなり完成度の高く、飛躍の可能性が大いにあるチームだからこそ、どれだけ多くの面々がJで出場機会を得ていくかが進化のカギとなる。選手たちには高い意識とモチベーションを持って日々を過ごしてほしいものだ。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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