本当にスゴイ。ただただ、スゴイのひとことだ。二年連続でア・リーグ東地区の優勝争いに割り込んでいるオリオールズの主砲クリス・デービス一塁手は、7月14日の前半最終戦で4試合連続となる37本塁打を放った。もちろん今季メジャー最多である。過去最多がバリー・ボンズの39本塁打だから、いかにハイペースの本塁打量産なのかが分かる。
「誇りに思っていいことだよね」
とデービス。白人の大柄な選手で、見るからに力がありそうだ。
「自分の仕事をしているって証でもあるからね。でも僕の前を打っている選手たちがいい仕事をしているってことでもあるんだ」

デービスは1986年、テキサス州ロングビューという町に生まれた。地元の高校卒業後はヤンキース、エンゼルスから2年連続で下位指名されるが入団せず、地元のナバーロ短大に進学。2006年、レンジャーズにドラフト5巡目(全体146位)指名されてプロ入りした。ちなみに同年のドラフトは、先頃ノーヒッターを達成したばかりのティム・リンスカム(ジャイアンツ)やジャスティン・バーランダー(タイガース)、クレイトン・カーショー(ドジャース)らのサイヤング賞投手をはじめ、エバン・ロンゴリア三塁手(レイズ)や今季開幕から13連勝したマックス・シャーザー(タイガース)など、オールスター選手を何人も輩出している。

デービスは2年後にメジャーデビューを果たし、最初の2試合で本塁打を記録するなど、当時からそのパワーを発揮したが、全体の3割が三振という欠点もさらけ出してメジャーとマイナーとの間を行ったり来たりするようになる。彼がオリオールズにトレードされたのは、レンジャーズがリーグ連覇を狙っていた2011年だった。救援投手陣のてこ入れに、当時オリオールズの上原浩治投手を獲得する際、レンジャースはデービスと今では救援投手陣の一角を占めるトミー・ハンターを交換要員に差し出したのである。

デービスがメジャーに定着したのは昨年で、5月のレッドソックス戦では延長17回にもつれ込んだ熱闘の際に投手として登板。2回を抑えて勝利投手になったことで有名になった。もっともシーズンが終わってみると、33本塁打を放ってチームの15年ぶりのポストシーズン進出に貢献し、チームの主砲に成長していた。

今季は前出のようにすでに昨季の本塁打数を超えており、文句なしのオールスター初選出。ホームランダービー初出場も当然である。あまりにも突出したその才能に対し、前半戦は「PED(=パフォーマンス向上薬品)を使っているのではないか?」と正面から問われることもあったが、本人はあまり気にしていないようだ。
「そんなもの必要ないのに、摂る必要ないじゃないか」と地元紙に語ったデービス。「今までより、しっかりと球を捉えられるようになっただけだよ。二十代半ばになって食事にも気を使うようになったが、薬なんてやってない」

少年時代、マーク・マグワイアとサミー・ソーサの本塁打競争を見ていたそうだ。
「興奮したよね。でも後でPEDの話が出て一気に冷めた感じがする。僕は今でも(ロジャー・マリスの)61本塁打が記録だと思う」

デービスの行く末にあるのはマリスの61本であり、マグワイアの70本であり、ボンズの73本である。マリス以外は薬物疑惑に汚れてしまった記録である上、アレックス・ロドリゲス(ヤンキース)やライアン・ブラウン(ブリュワーズ)ら、薬物疑惑(イタチごっこは終わるのか?参照)で出場停止が確実と見られる長距離砲たちがその着地点を見出せぬ今、デービスはメジャーリーグにとっての救世主なのかも知れない。

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ナガオ勝司
1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員

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