4日の2014年ブラジルワールドカップアジア最終予選・オーストラリア戦以来、約1カ月ぶりに埼玉スタジアムへ足を運んだ。30日のJリーグヤマザキナビスコカップ準々決勝・浦和レッズ対セレッソ大阪戦を取材するためだ。23日の第1戦は0-2で浦和が先勝。優位な立場でホームに戻ってきた。C大阪としては何としても2点のビハインドを跳ね返すしかない。この日は浦和の戦い方を徹底的に研究し、柿谷曜一朗を1トップに据える4-2-3-1の布陣でのぞんだ。

C大阪のレヴィー・クルピ監督は「先週の試合を分析した上で、今週の練習の中でいくつかの形を試してみたが、一番結果が出るのではないかと思ったフォーメーションを試合で使った。浦和はディフェンスラインからのビルドアップがうまいので、第1戦とは違って、前からプレスをかけに行かないというところを練習で確認した」と語った通り、ある程度ボールを持たせて中盤で奪い、一気に前線へ展開する形を取った。その戦い方が序盤は的中。ボランチの扇原貴宏から前線の柿谷や左ワイドの南野拓実、右ワイドのエジノにいいボールが何本も出る。開始6分のエジノから柿谷につながり、マイナスのクロスを南野が押し込んだ1点目も相手守備陣のスキをうまく突く形から生まれた。「入りは非常によかった」と選手たちも口を揃えた。

その流れが続いた20分間のうちに2点を奪って畳み掛けていたら、試合の行方は違っていただろう。残念ながらC大阪はその貴重な時間帯を生かし切れなかった。その後、浦和がじわじわとボールを前に運ぶようになり、C大阪に突かれていた守備面も修正。最終ライン裏のスペースを埋めて起点を作らせないようにした。攻守のバランスが整ったところで前半34分には同点弾が生まれる。原口元気のパスを受けた梅崎司が酒本憲幸を1対1でかわし、スライディングに来た山口蛍もやりすごして右足シュートを決めたのだ。「あの1点を取られて相手が落ち着いてしまった」と山口も悔やんだが、梅崎の同点弾が勝負の明暗を分けたと言っても過言ではない。C大阪は後半も巻き返しを図ろうとしたが、試合巧者の浦和から主導権を奪い返せない。楠神順平や杉本健勇らの投入も結果につながらず、今季最初のタイトルを逃した。

今季J1得点ランキングトップの9点を奪っている柿谷曜一朗をはじめとして、ロンドン五輪代表だった山口蛍、扇原、杉本健勇、2011年U-17ワールドカップ(メキシコ)ベスト8進出を経験している南野と、C大阪は「日本代表予備軍」といわれる才能ある若手をズラリと揃えている。7月には国内組だけで挑む東アジアカップ(韓国)もあるだけに、彼らの誰が日本代表入りするか興味深いところ。この浦和戦にもザックジャパンのスタッフが視察に訪れていた。だが、まずまずのアピールを見せたのはゴールを挙げた南野くらいで、それ以外は可もなく不可もなくのパフォーマンスに終始した印象が強かった。

柿谷は前線で起点になることに忙殺されたせいか、シュート0本に終わり、持ち前の得点センスを発揮しきれなかった。「1トップをやってる選手がシュートを打たんかったらチームは勝たれへん。起点になることを意識していたのに、ミスが目立ったし、タメも作れなかった。次はこういう試合をしないようにしたい」と本人も反省しきり。柿谷が日の丸をつけるには、もっと安定感ある仕事ぶりが求められそうだ。

山口にしても、梅崎の失点シーンに絡んだようにまだ一瞬のミスが少なくないようだ。「今季は前目のポジションでやっているんで得点は取れているけど、ボランチとしての経験は詰めていない。代表に呼ばれるとしたら五輪代表でやったボランチだと思うから、現状を考えると難しいと思う。とにかく今はチームで試合に出て結果を残すことが先決」と彼自身、目先の1つひとつの試合にこだわっているという。彼にしても好不調の波をなくすことがザックジャパン入りの条件になってくるだろう。

扇原に関しては、ベンチを温めた昨年よりは調子が上がっている様子。プレッシャーのない局面ではパスセンスを遺憾なく発揮していた。しかし消える時間帯も少なからずあり、チーム内の絶対的地位を確立したわけではないようだ。「まだまだ存在感が足りないし、シュートやアシストという目に見える結果も少ない。もっとゲームのリズムを上げられるようにしないといけない」と本人も課題を口にしていた。

ザック監督も日頃から「若い世代が伸びていない」と苦言を呈している。その壁を破らなければならない筆頭がC大阪のタレント軍団だ。彼らが伸び悩むようだと、日本サッカー界の底上げ自体が叶わなくなる。7月からはJ1も再開されるだけに、東アジアまでの短期間でにれだけパフォーマンスを上げられるかが肝要だ。彼らのうちの何人がザック監督に認められるのか。そこに注目しながら当面のC大阪の戦いを見極めていきたい。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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