MLBは各球団が80試合弱を消化し、もうじき今季の折り返し地点を迎えます。ヤンキースのイチロー選手は今季も打率.267と低迷しています。6月は同.292と4月(.268)、5月(.247)から若干復調傾向にはありますが、現在3年連続で打率は2割台と、残念ながら衰えは否定できません。

エイジングは何人たりとも避けられませんが、イチローの「加齢」にはやや特徴的な傾向があります。イチローは現在39歳。今季ポストシーズン中の10月22日には40歳となります。四十路を寸前に控え衰えるのは致し方ないことですが、体調管理とトレーニングには人一倍気を遣い、20代の頃から体型の変化がほとんどないイチローが、37歳のシーズン(2011年)にはすでに衰えが顕著に見えて来たのはやや意外でした。メジャー移籍以降、09年のWBC後に胃潰瘍で故障者リスト入りした以外は、ほとんど故障知らずであることを考慮するとなおさらです。

イチローを、歴代の安打製造機のスター達と比べてみると一層その感があります。

首位打者を7度獲得し、通算成績は打率.328、3053安打、92本塁打、353盗塁のロッド・カルー(91年殿堂入り)は、39歳だった85年は打率.280でこの年限りで引退しています。前年は15年続いた3割がストップしたとは言え.295。印象としてはかなり余力を残しての引退でした。

首位打者8回で、通算打率.338、3141安打、135本塁打、324盗塁のトニー・グウィン(07年殿堂入り)は、39歳の99年も打率.338でした。この頃はかなり故障がちだったのですが、残2年の現役生活も試合数は限られたものの.323、.324と打撃技術自体はいささかも陰りはありませんでした。

首位打者5回で通算打率.328、3010安打のウェイド・ボッグス(05年殿堂入り)の39歳シーズン(97年)は、5年ぶりに3割を切る.292でした。翌年は.280とさらに低下させるも、最終年の99年には.301と盛り返しています。

史上最多の4256安打のピート・ローズは、39歳の80年には6年ぶりに3割を切って.282でしたが、翌年は.325と盛り返し45歳まで現役を続けました。

イチローの場合、彼ら歴代のスター達と比べるとやや「老化」が早く感じられるのはなぜでしょうか?やはり、それは「四球をほとんど選ばない」打撃スタイルにあるのではと思います。

野球史家のビル・ジェームズは、野手のスキルを以下のように分類しています。
「スピード、 高打率」=「若さのスキル(加齢で衰える)」
「四球を選ぶ技術、パワー」=「ベテランの技術(加齢しても衰えない)」

要するに、イチローのようにスピードスターの安打製造機で、四球が少なくパワーはそれほどではない選手は典型的な「加齢に弱い」タイプなのです。

イチローの通算四球率(四球÷打席)は5.9%で、同時代(01年以降)の平均8.4%を大きく下回ります。一方、カルーは9.7%、ローズは8.8%で、比較的早打ちと言われたグウィンでも7.7%、選球眼に定評があったボッグスに至っては13.2%です。やはり、脚力が衰え内野安打が減少してくると、それなりに打数を減らすことが必要になって来るようです。

中には、若いころは四球が少ない単打者タイプで、キャリア後半には選球を重視し長打力を増したジョージ・ブレット(99年殿堂入り)のような選手もいます。彼は加齢に合わせスタイルを変更することにより、76年、80年、90年、と3つのディケイドで首位打者になりました。

イチローの場合、ブレットのようなモデルチェンジを選択しなかったことが響いていることは間違いないでしょう。しかし、自分のスタイルに徹底的に拘ったことがここまでの成功の要因であったことも事実です。

現地時間の23日には、ヤンキースタジアムでのレイズ戦の前に通算67回目の「オールドタイマーズ・デイ」が開催されました。50年代の5連覇を支えたホワイティ・フォードやヨギ・ベラ、「ミスター・オクトーバー」のレジー・ジャクソン、98−00年の3連覇の中心選手の1人だったバーニー・ウイリアムズら約50人の「レジェンド」が集いファンの喝采を浴びました。将来のこのイベントにおいて、イチローが「21世紀の最初の10年間で最も偉大な安打製造機」として紹介される場面を観てみたいものです。

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豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:shotaro.toyora@facebook.com

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