2013年限りでFOX社との現行のローカル放映権契約が満了となるドジャースは、1月末にケーブルテレビ大手のタイム・ワーナー・ケーブル(TWC)社と新たに契約を結んだと発表しました。

注目の条件は、向こう25年間で総額70億〜80億ドル(約6300〜7200億円)!ここ数年、メジャーリーグのローカルテレビ放映権はうなぎ登りですが、その中でも南カリフォルニアという巨大市場を持つドジャースの契約はベラボウです。そもそも昨年、ドジャースが元NBAスターのマジック・ジョンソン氏を含む投資家グループに買収された際の金額は20億ドル(現在のレートで約1800億円)という従来の常識を覆すレベルでしたが、この買収額自体が14年以降に跳ね上がること間違いなしの放映権料を睨んでのものでした。

新契約を25年80億ドルとすると、年平均で3億2000万ドル。一方、今季FOXが支払う放映権料は3900万ドルですから、一気に8倍です。また、ドジャースとTWCとの直契約ではないということもポイントです。ドジャースは自前の放送局を立ち上げ、そこがTWCと契約を結びます。

背景にはメジャーリーグの収益配分制度があります。各球団は、チケット売り上げやローカルテレビの放映権収入から経費を控除した純収入の34%をMLB機構に「上納」しなければなりません。機構はそれら「34%」をプールし、全球団に均等配分します。球団により「34%」の絶対額には大きな開きがあるため、結果的に「富める球団」から「富めざる球団」に収益が配分されます。

ドジャース新契約の年間3億2000万ドルの純収入が「上納」されると、他球団にとっても非常にインパクトがあります。しかし、放映権収入は別会社に入るため「34%」の対象外になり、ドジャースとしては「節税」になるのです(余談ですが、ヤンキースを始めとする「富める」球団の間で、別会社の放送局の設立が広まりつつあります。これは、機構の目指すところと異なるため、いずれ系列の別会社の純収入も「34%」の計算対象とする動きが出てくるものと思われます)。

メジャーリーグの歴史を振り返ると、テレビとの関わり方は大変興味深い変遷を見せていることに気づきます。一般家庭にテレビが普及し始めた50年代には、「テレビ放送を抑制しないと、メジャーリーグは崩壊する」と言われました。また、その後70〜80年代でも「テレビで放送するのはアウェイのゲームのみ、地元での試合は放送させない」という球団が数多く存在しました。

しかし、この考え方は完全にひっくり返ります。「テレビで多く見た方が、関心が高まり球場に行きたくなる。球場に行くとその後もテレビで見たくなる」ということが判ってきたからです。かくして、テレビ放映権の価値は急騰しました。また、テレビ局にとっても「リアルタイムで見たい」層が多いスポーツ中継は、「録画して後で見る」ケースが多いドラマや映画より相対的に価値が高まっています。録画で見られるとCMをスキップされることが多いからです。

しかし……契約期間は25年ですよ。テレビビジネスの在り方やライフスタイルは時代とともに劇的に変化します。はたして、20年後も人々は「スポーツ中継はリアルタイムでなきゃ」と思い続けるでしょうか?試合開始30分後からディレイ再生で追いかけながらCMをスキップするのが主流にならないでしょうか?いずれにせよ、ビジネスモデルが破綻せず末長くメジャーリーグが人々の心を掴み続けることを願うのみです。

photo

豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:shotaro.toyora@facebook.com

お知らせ

■Facebookページ「MLB on J Sports」がスタート!
MLBの放送予定、コラム、ブログの更新情報や、
中継スタッフからの番組情報などをお届けします。
>>「MLB on J Sports」はこちらから

スカパー!×J SPORTS J SPORTS オンラインショップ