J2の全日程が終了し、J1タイトル争いもサンフレッチェ広島のリーグ初制覇で決着がつくなど、2012年シーズンも終焉を迎えつつある。そんな中、ここへきて目に着くのが、豊田陽平(鳥栖)、森島康仁(大分)ら大型FWの台頭だ。

まず豊田だが、今季J1初昇格を果たしたサガン鳥栖のエースとして2010年から活躍。2011年には23得点を挙げ、J2得点王に輝いた。そして今季は序盤こそ久しぶりのJ1のプレッシャーの厳しさに苦しんだものの、夏場以降ゴールラッシュを披露。9〜11月の3カ月間で11点を固め取りし、気づいてみれば、得点ランキングトップを独走している佐藤寿人(広島)の背中が見える位置につけてきた。12月1日の最終節を残す現段階で、佐藤が22点、豊田が19点と2人の間はわずか3ゴール差。豊田が横浜F・マリノス戦でハットトリックを達成するようなことがあれば、J1得点王の座を手中にする可能性さえある。この大躍進ぶりは注目に値する。

185僂箸いΨ辰泙譴紳龍蹐鮓悗詼田は星稜高校時代から注目された選手だった。1学年下の本田圭佑(CSKAモスクワ)らとともに2002年全日本ユース選手権決勝に進出。国立の舞台で柴崎晃誠(東京V)や兵藤慎剛(横浜F・マリノス)らを擁する国見と戦い、準優勝に輝いたこともある。その後、名古屋グランパス、モンテディオ山形、京都サンガと渡り歩き、浮き沈みのあるキャリアを強いられたが、2008年北京五輪ではエースFW候補に指名されるなど、その潜在能力の高さは反町康治監督(現松本山雅)も一目置いていた。

「豊田の身体能力は抜群で、高さも強さもある。それをどう生かすかが問題だった」と星稜高校時代の恩師・河崎護監督も語っていたが、それを思うように生かし切れないところが彼の紆余曲折の原因だった。が、鳥栖に行ってからはやるべきことが明確になり、よりシンプルにゴールに向かうようになった印象だ。昨季J1で日本人得点王に輝いたハーフナー・マイク(フィテッセ)と比べると、コンスタントに数字を残しているといっても過言ではない。

一方の森島だが、ご存じの通り、内田篤人(シャルケ)や槙野智章(浦和)らと同じ87年度の生まれである。滝川第二高校時代は1つ年上の岡崎慎司(シュツットガルト)、1つ下の金崎夢生(名古屋)らとプレーし、泥臭くゴールに迫るスタイルが評価されてきた。吉田靖監督が率いたユース代表の頃はエースとして攻撃陣を牽引。2007年U-20ワールドカップ(カナダ)にも出場し、2得点を挙げた。この森島の活躍に目を付けた大分トリニータが2008年途中にレンタルで彼を獲得。そのまま完全移籍することになった。

ところが2009年、大分は財政危機が表面化。同時にJ2降格を余儀なくされる。清武弘嗣(ニュルンベルク)や東慶悟(大宮)ら才能ある若手が次々と他クラブに買われ、家長昭博(G大阪)らレンタルで来ていた選手が出ていく中、彼は残留を余儀なくされた。2010年からチーム再建請負人として大きな期待を寄せられたが、2年間不振が続き、サポーターから罵声を浴びせられるなど、過去にない苦境に追い込まれた。

「僕には本当に批判が多かった。『もう終わった選手』と言われたり、大分県民から『出て行け』と言われたりと、ホントにいろいろあった。清武とかみんな出て行って、2010年シーズンからJ2に降格してゼロからのスタートだったけど、昔の自分はもう捨てた。調子乗りの頃(2007年U-20W杯)の自分を振り返るとホントにかっこ悪い。そういう苦しい時期があったから成長できたと思う」と本人もJ1プレーオフ決勝の時、しみじみ語っていた。

そんな中、原点に戻って自分自身のプレースタイルをゼロから見直したことが急成長につながったのだろう。今の森島は単にゴール前でクサビに入るだけの選手ではなく、スルーパスやサイドチェンジなどゲームメークにも参加できるようになった。前からの献身的な守備も際立っている。同僚の村井慎二も「デカモリシ(森島)がシーズン後半になって急激に変化したのが大分の起爆剤になった。今は絶対にエゴイストにならないし、守りの面でもチームを助けてくれる。昔の自分を吹っ切ったから今があるのかな。一緒にやっていて頼もしい存在です」と太鼓判を押した。今回のプレーオフ準決勝での4ゴール、そして決勝でのアシストは決してフロックではないはずだ。

彼らのように、点の取れる大型FWは日本サッカー界全体にとって喉からが手が出るほどほしい人材に他ならない。今のザックジャパンの1トップは前田遼一(磐田)とハーフナーの2人に依存している状態だが、豊田や森島が参戦してくれば競争も熾烈になる。来年2月のラトビア戦(神戸)では成長著しい選手を呼んで試すという話もあるだけに、ぜひともザッケローニ監督には彼らにチャンスを与えてもらいたい。豊田は27歳、森島は25歳と年齢的に考えても決して遅くはない。2013年の新たなFW争いに期待したいものだ。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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