2004年のレッドソックスは、カート・シリングの「血染めのソックス」の力投もあって、86年ぶりに世界制覇。ベーブ・ルースをヤンキースにトレードしてから世界一になれないという「バンビーノの呪い」を解きました。

しかし、メジャーリーグには今なお解けない「呪い」が存在しています。それが、カブスとそのファンを悩ませる「ヤギの呪い」です。

「ポストシーズン名場面集」第3回は、「ヤギの呪い」が解けたかに見えながらも夢が潰えた2003年のナ・リーグ・チャンピオンシップシリーズ(LCS)、カブス対マーリンズ第6戦の「バートマン事件」をご紹介します。

そもそも「ヤギの呪い」とは、1945年のカブス対タイガースのワールドシリーズで、カブス本拠地のリグレー・フィールドにいつものようにヤギを連れて観戦に来たあるファンが、この日に限って入場を断られたことに端を発しています。

これに激怒したこの人物は「2度とリグレー・フィールドでワールドシリーズが開催されることはないだろう!」と言い放って球場を後にしたそうです。そして皮肉なことに、結果はその通りとなっています。

2003年、14年ぶりに地区優勝を果たしたカブスは、ディビジョン・シリーズでも強豪ブレーブスを下しました。マーリンズとのLCSでは第5戦を落としたものの、それでも3勝2敗とリード。残り2戦は本拠地のリグレー・フィールドが舞台であること、マーク・プライアーとケリー・ウッドの両エースを温存していることで、カブスの絶対有利は動かないものと見られていました。

実際、第6戦はこの年18勝のプライアーが期待通りの好投を見せ、8回1死まで3対0でリード。58年振りのワールドシリーズまであと5アウトに迫った場面で事件は起きました。

ルイス・カスティーヨのファウル・フライをカブスの左翼手モイゼス・アルーが捕球しようとしたところ、三塁側レフトフィールド寄り最前列に座っていた長年のカブスファンのスティーブ・バートマン氏が思わずグラブを差し出し、アルーは捕球できずファウルとなったのです。

ここから流れが変わりこの回一気に8点を失って敗れたカブスは、翌日の第7戦も落とし、「呪い」を解く絶好の機会を逃してしまいました。

その後この魔のボールは「憑き」を落とすため、熱狂的なカブスファンが数多く見守る中、爆破されました。しかしそれでもまだ、カブスはワールドシリーズには進出できず、最後の世界一からすでに104年!が経過しています。

この一件は、カブスファンの間で感傷的に語られることが多いように思えます。しかしこの場面、審判は「ファンによる守備妨害」を適用していません。審判のジャッジを正とするなら、アルーが捕球できなかったのはバートマンのせいではありません。

今にして思えば、捕球できなかったアルーが、バートマンに怒りを向けるような地団駄のポーズを取ったことが、「バートマンが妨害した」かのような印象を強めているように思えてなりません。

長年の夢を摘んだ責はバートマンより、むしろその後の失策や継投ミス等で自滅したカブス自身にあると私は思っています。

【豊浦彰太郎のポストシーズン名場面集】
1. シリングの血染めのソックス
2. ミスター・オクトーバーの3連発
3. 今なお続く“ヤギの呪い”
4. 大地震直後に開催されたWS

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豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:shotaro.toyora@facebook.com

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