今週、千葉県内で行われたU-16日本代表合宿を見に行った。2011年U-17ワールドカップ(メキシコ)で日本をベスト8に導いた吉武博文監督が同じジュニアユース世代を継続して率いており、1年数カ月にわたってチーム作りが進められてきた。

彼らは昨年9月のAFCU-16選手権(1次予選=ラオス)は韓国に2-4で敗れたもののグループ1位で通過。現在は今年9月の最終予選(イラン)に向けて強化の最終段階を迎えている。9月にはアルメニアで直前合宿を行ってイランに向かうことになっているが、とにかく1次リーグは死の組だ。サウジアラビア、韓国、北朝鮮という強豪揃いのC組で2位以内に入り、さらに準々決勝で勝たなければ、世界切符はつかめない。2007年韓国、2009年ナイジェリア、2011年メキシコと日本のU-17代表は3大会連続で世界大会に出場しているだけに、今回の選手たちにも大舞台に立って、将来につながる経験をしてほしいものだ。

吉武監督はジュニアユース世代のエキスパート。大分市立明野中学校時代に永井秀樹(FC琉球)や三浦淳宏(現解説者)を指導し、大分トリニータの育成アドバイザー時代にも清武弘嗣(ニュルンベルク)・功暉(福岡大)兄弟を教えている。特に清武弘嗣に関しては、カティオーラFCでプレーした中学1〜2年時にオスグットに悩まされるなどクラムジー状態に陥り、吉武監督と先輩後輩の関係だった清武の父・由光さんの勧めもあって、大分U-15に移って再生を図った経緯がある。清武本人も「吉武先生に助けてもらった」と公言するほど、深く恩義を感じているという(このあたりのエピソードは筆者の最新著書「僕らがサッカーボーイズだった頃」を読んでいただければ幸いである)。

そんな実績が買われて協会の仕事に転じ、昨年のU-17W杯ではバルサ流の連動したサッカーを見せる好チームを作って結果を出した。その主力だった石毛秀樹(清水)はすでに飛び級でJリーグに出場しており、岩波拓也(神戸)と植田直通(大津高)の両大型センターバックもU-19日本代表に名を連ねるとともに、将来の日本の最終ラインを担う存在として注目されている。

「96ジャパン(96年生まれ以下の現代表)は94ジャパン(メキシコで戦った94年生まれ以下の代表)の経験がある分、全くゼロからのスタートではない。2か3からスタートして最終到達点を12とか13まで持っていけると思う。チームコンセプトの全員攻撃全員守備というのは変わっていないし、選手たちもそれをよく理解してくれている。今は最終予選直前だけど、94の世界大会の時と同じようなレベルまで到達している印象がある。1年前倒してチーム作りが進んでいるのはすごくいいこと。選手たちにとってはまだ世界へ行くことが夢でしょうけど、94の選手たちと同じようにそれを早く目標に変えてほしい」と吉武監督は前向きに語っていた。

このチームには、高校1年生から高円宮杯プレミアリーグに出場している北川航也(清水ユース)や青山景昌(名古屋U-18)、日本クラブユース選手権優勝を経験した中谷新之介(柏U-18)、抜群の身体能力を誇る酒井高徳(シュツットガルト)の実弟・高聖(新潟ユース)などタレントは確かにいる。宇佐美貴史(ホッフェンハイム)や宮市亮(ウィガン)のいた92年世代のような強烈な個性は見当たらないが、「選手個々のポテンシャルは高くなっている」と吉武監督も太鼓判を押す。だがその反面で、自立心の高い選手が少なくなっているのも事実だという。「子供たちから『どうすればいいか教えて』という雰囲気がつねに感じられる。昔はスキルはそんなに高くないけど、精神力や闘争心でカバーしていた部分があった。そのあたりのバランスをどう取っていくかが、U-16世代の一番難しいところ」と指揮官は改めて口にしていた。

そういう人間力の部分をカバーするために、今回の合宿でも選手たちが自主的に問題を解決するためのグループワーキングを取り入れたり、宿舎でカレー作りをして団結力を高めたりと、ピッチ内外から多角的なアプローチを行ったという。キャプテンを置かないのも、「自分がやらなきゃダメなんだ」とチーム全員に考えさせるための手段だという。「キャプテンを作るとその選手にみんなが依存してしまう恐れがある。全員が責任感を持ってやってくれないと、今回のような厳しい最終予選は突破できない。結果的に負けたとしても、自分たちのスタイルを出して、横綱相撲をするのが我々の目標。それだけのいい戦いをしてもらわないといけない」と吉武監督も強調していた。

「チームの向かうところは定まったという感じ。自分たちがやるべきことをやれば、94ジャパンより上へ行けると思う」と酒井高聖も力強くコメントしていた。彼らがタフな国際経験を数多く積んで、より高い目標設定を持ってくれれば、香川真司(マンチェスターU)のように世界トップで活躍する選手も増えるはず。そういう期待を持って、最終予選突破を強く祈りたい。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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