この8月は日韓戦を3度見た。最初がロンドン五輪男子3位決定戦、2度目が19日のSBSカップでのU-19日韓戦、そして最後が30日のU-20女子ワールドカップ準々決勝だ。男子の2戦は1勝1敗だったが、U-19の方は相手を詰め切れずにPK戦の末に何とか勝利を収めている。ヤングなでしこにはそんな消化不良感を払拭するような快勝を期待したかった。

東京・国立競技場に2万4000人を超える大観衆が詰めかける中で行われたこの一戦は、日本が先手を取る形でスタートした。開始早々から激しくプレスをかけにいっていたヤングなでしこは高い位置でボールを奪い、西川明花(FC高梁吉備国際大)のスルーパスに反応した柴田華絵(浦和)が巧みに抜け出して先制。6分後に韓国に追いつかれたものの、柴田の見事なミドルシュートが決まってすぐさま2-1に。

さらに田中美南(日テレ)と高木ひかり(早稲田大)のお手本のようなワンツーから今大会絶好調の田中陽子(INAC神戸)が3点目を叩きだし勝負あり。後半は疲労と夜露でボールが滑ったこともあって、相手に押し込まれる時間帯も見られたが、相手を寄せ付けずに史上初のベスト4進出を決めた。今月最後の日韓戦でヤングなでしこが快勝してくれたことで、多くの関係者やサッカーファンが溜飲を下げたことだろう。

今大会のヤングなでしこは田中陽子らアタッカー陣の多彩な攻撃に目を奪われがちだが、守備面での奮闘も見逃せない。この韓国戦も高さや強さ、パワーでは相手の方が上だったが、16歳の土光真代と20歳の木下栞(ともに日テレ)の両センターバックが韓国のヨ・ミンジ(10番)とチョン・ウナ(11番)の強力2トップをしっかりとマーク。さらに彼女らに前を向かせないように、猶本光と藤田のぞみ(ともに浦和)の両ボランチが確実にプレスバックして挟みに行き、相手のよさを消していた。前線からの献身的なプレスの効果もあり、危ない場面をほとんど作らせなかったのは収穫だ。

ただ、残念だったのは、前半15分にチョン・ウナにゴールを決められたこと。この失点場面は、中盤でヨ・ミンジにボールが入った瞬間にマークが3人ほど集中し、その裏をスピードある右MFチェ・ユリ(12番)に抜け出され、左MFイ・グミン(20番)に左タテを突破されてクロスを入れられるミスが重なってしまった。最終ラインを統率する木下は「失点シーンはニュージーランド戦でやられた場面とよく似ていた。あの試合の後、みんなでクロスの対応やセットプレーの守備について話し合って、かなりよくなってきたとは思うけど、少しでもマークがずれるとやられてしまう。それを再認識した」と改めて反省を口にしていた。

日本のセンターバックは土光が163cm、木下が165cmとあまり高さがない。なでしこジャパンが女子ワールドカップで優勝、ロンドン五輪で準優勝するなど日本女子サッカーが飛躍的進歩を遂げ、選手たちの体格面は多少なりとも改善されているが、センターバックに関してはまだまだ高さと敏捷性を兼ね備えた人材が少ないと言わざるを得ない。なでしこジャパンを見ても、170cm以上あるセンターバックは熊谷紗希(フランクフルト)1人。彼女並みのサイズを備えた選手を下の年代から数多く発掘したいところだが、今回のヤングなでしこも平均的な高さしかない。それを木下らもよく分かっていて、大柄な選手たちの多い外国勢といかに対峙するかを日々研究しているようだ。

「今回の韓国はロングボールを蹴り込んでこなかったけど、世界大会に出ればそういう相手もいる。自分たちは高さがない分、リスクマネージメントを大切にしないといけない。ポジショニングだとか、相手の位置に合わせてズレる動きを的確にやっていくことが大事。なでしこジャパンの映像を見ると、1つのクロスに対して、岩清水(梓=日テレ)さんや熊谷さんだけでなく、全員が指示を出しながら首を振って状況判断しながらカバーに入っていた。そういう全員で指示を出しあって守るといった意識が私たちはまだまだ足りない。高さがない分、みんなでカバーしあえないと、ここから先はかなり厳しい。1人で取れないなら、2人3人でボールを取ることをもっと突き詰めていかないといけない」と木下は神妙な面持ちで語っていた。

韓国戦では1失点はしたものの、組織的守備はある程度うまくいった。今後もそれを継続し、精度を高めていくことが重要だ。4日の準決勝の相手はドイツかノルウェーで非常にフィジカルが強いし、決勝に勝ち進んだ場合は頭1つ抜けていると評判の北朝鮮と対峙することになる可能性が高い。ここから先は高さと強さを兼ね備えた敵との対戦が続くだけに、より守りを固めていく必要がある。ヤングなでしこらしい一体感と結束力を存分に発揮して、相手をシャットアウトしてほしいものだ。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。