再会は人生の滋養である。そんな言葉、あるのかどうか知らないけれど、何かと別れの機会が多い人生にあって、再会というのはちょっとした喜びであり、ある種の滋味であると思う。ぼくは再会という言葉を聞くと、「朋あり遠方より来る、また楽しからずや」というあの論語の一節が思い出される。朋あり遠方より来る、また楽しからずや。けだし、名文である。

Jリーグの試合を観戦しにスタジアムへ足を運ぶと、まれに、「あ、この選手、今はこのクラブにいたんだ」となることがある。これも一種の再会である。完全に一方的ではあるが、こういうフットボール的な再会は、その選手が自分と同年代のベテラン選手だったりすると、その喜びもひとしおである。テレビでフットボール観戦をしていても、この種の再会を経験することがある。例えばUEFAチャンピオンズリーグのグループリーグの試合で、東欧や北欧のクラブの試合を見ている時に、「ああ、この選手」という懐かしさを味わうことはたまにある。

現在、J SPORTS で放送されているCSKAモスクワのロシア プレミアリーグも、フットボール的再開が期待できそうなコンテンツである。本田圭祐とCSKAモスクワを通じて楽しむロシア プレミアリーグ版「あの人は今」。これはフットボールの楽しみ方としては邪道かもしれないが、こういう「おまけ」的要素も、またフットボールの側面であると言えなくもない。

今シーズン、CSKAモスクワとともに上位争いを繰り広げるゼニトとスパルタク・モスクワは、ロシアリーグで最も気になるクラブに数えられることは間違いないが、今季はCLの本戦に出場するので、日本でも露出機会は多くなりそうである。その気になればどちらも最低6試合ずつは見られるわけで、これだと遠方の友人というよりは、近場の飲み友達という風合いの方が強い。従って、この場では割愛することにする。

それに、ローマ時代に“ゼロトップ・システム”で一世を風靡したスパレッティー監督率いるゼニトも、アルメリアとバレンシア時代にその豊かな才能を周知のものとしたエメリ監督率いるスパルタク・モスクワも、どちらかというと「あの人は今」ではなく、「あのフットボールは今」とした方がより的確な気がする。ちなにみ、ロシアリーグでのCSKAモスクワとの今後の対戦は、ゼニトが11月24日(CSKAアウェー)、スパルタク・モスクワが10月6日(CSKAアウェー)、4月13日(CSKAホーム)に予定されている。

さて、ここで「あの人は今」に主眼を置いて、先ず紹介したいのが近年加速的に知名度を上げているアンジ・マハチカラだ。想像力をかき立てる不思議な名前のこのクラブは、ロベルト・カルロスが在籍したこともあって、日本のフットボールファンの間ではすでに馴染みがあり、何を今更という感はないでもないが、やはりエトーの近況は気になるところである。

大金を手にしたエトーがすでに安逸としたフットボーラー的老後生活を謳歌しているのか、あるいは貪欲なゴールハンターとして、相変わらず目の輝きを失わないでいるのか。一見の価値あり、である。それに、現在クラブを率いるヒディンク監督の巧みなベンチワークも久々に拝見してみたい気がする。一昨シーズンまでチェルシーに在籍していたユーリ・ジルコフも、一部のファンにとっては「あの人」にカテゴライズされるかもしれない。CSKAモスクワとの対戦は12月1日に予定されている(CSKAアウェー)。

次に紹介したいのが古豪ディナモ・モスクワだ。東欧フットボール界のマジックフレーズ、“ディナモ”を冠する首都モスクワのクラブなのだから、その名前だけで強豪の香りぷんぷんである。実際、旧ソ連時代は多くのリーグ制覇を成し遂げており、昨季はリーグが4位、国内カップ戦準優勝と、まずまずの成績を残している。しかし、今季は目下最下位である。そんな苦しい状況にあるディナモ・モスクワの「あの人」は、かつてブンデスリーガでその名を轟かせた(ちょっと大袈裟かな)ケヴィン・クラニーと、日本人であればその名に聞き覚えがあるであろう豪州代表ディフェンダーのウィルクシャーである。ううむ、渋い。クラニー、ウィルクシャー、そして最下位沈降と、何だか渋味の三段活用みたいなことになっている。このシブ目の「あの人」たちとは、9月29日(CSKAホーム)と4月6日(CSKAアウェー)に再会できる予定になっている。

ラストにご登場頂くのはまたしてもモスクワのクラブ、ロコモティフ・モスクワだ。何しろこのクラブはプレミアリーグのファンにとって「あの人」の宝庫なのである。昨シーズン途中、フェードアウトするようにスパーズから消えて行ったチョルルカとパブリュチェンコを筆頭に、かつてシティに在籍し、その後スポルティング、マラガ、レバンテと渡り歩いた末に現在地に辿り着いた流浪のフットボーラー、カイセド、そしてウェストハムでそこそこの働きをしていたダ・コスタらがスカッドにその名を連ねているロコモティフ・モスクワこそ、あの人は今を堪能するのに最も相応しいクラブと言えるかもしれない。

また、このクラブは、クロアチア代表を指揮し、その攻撃的に洗練されたチーム作りでユーロの度毎に楽しませてくれたビリッチ監督が率いているので、「あの人は今」というちょっとした付加価値なしに、純粋にフットボールの試合として楽しませてくれそうである。そんなロコモティフ・モスクワとCSKAモスクワのダービーマッチは、11月3日(CSKAホーム)と5月4日(CSKAアウェー)に予定されている。

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平床 大輔
1976年生まれ。東京都出身。雑文家。1990年代の多くを「サッカー不毛の地」アメリカで過ごすも、1994年のアメリカW杯でサッカーと邂逅。以降、徹頭徹尾、視聴者・観戦者の立場を貫いてきたが、2008年ペン(キーボード)をとる。現在はJ SPORTSにプレミアリーグ関連のコラムを寄稿。

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