これを、「デジャヴ」(既視感)と呼ぶのだろうか。日本が快調に攻撃を繰り返し、何度も韓国ゴールを脅かしていた前半38分、一発のロングボールが前線のパク・チュヨンに入り、そのままドリブルで持ち込まれ、DFがかわされて失点を喫してしまう……。

これまでの、U-23日本代表の試合で何度も繰り返されてきた光景だった。懐かしさすら感じさせる同じ光景は、後半にも繰り返された。1点目などは、カウンターですらない。単にDFがクリアしたボールがワンバウンドして吉田の頭を越して、パク・チュヨンに渡ってしまっただけのことだ。「事故のような」と形容していい。だが、事故のたびに失点していたら、サッカーなどできない。とにかく守備に不安を抱え続けていたいU-23日本代表。オリンピック本大会に入ってからは無失点の試合が続き、守備が進歩したのかと思っていたら、やはり最後の韓国戦で、懐かしい光景を繰り返してしまったのである。

これまで失点が少ないままで乗り切ることができていたのは、前線の頑張りによるところが大きかった。前の選手が徹底的に相手ボールを追い回し、時には高い位置でボールを奪ってショートカウンターでゴールを奪い、悪くてもパスコースを限定することで守備陣の負担を軽減する。そうした動きができていた。しかも、お誂え向きに、初戦で対戦したスペイン代表は後方、中盤でゆっくりボールを回すチームだった(しかも、フル代表ほどうまくない!)。初戦とあってコンディションの良かった日本の前線の運動量は90分間衰えなかった。

だが、そんなサッカーを、中2日という非常識なスケジュールの中で6試合繰り返すことなど、できるわけがない。6試合目となる韓国戦では、45分で足が止まってしまう状態だった(当然だろう)。しかも、韓国は日本のパス・サッカーを警戒して、自陣内のスペースを埋め、ロングボールで強力なトップを生かす戦い方を徹底していた。ご丁寧なことに、トップにはパク・チュヨンだけではなく、チ・ドンウォン、ク・ジャチョルとストライカータイプの選手を3人も並べてきたのだ。

日本の前線でのプレスは効かず、日本のDFが裸で曝された。こうして、「センターバックの守備力」という日本最大のウィークポイントと、「センターフォワードの決定力」という韓国最大のストロングポイントがマッチアップする状況が生まれたのだ。結果は、想定通りというわけである。しかし、前半の足が動いている時間は、守備を固める韓国を相手に、日本のパスが面白いように通って、何度か決定機も作っていたのだ。良好なコンディションでやっていれば、結果は違うものになっていただろう。

しかし、6連戦を戦い抜いて、メダル争いをする。オリンピックというのは、もともとそういう戦いなのだ。もちろん、「中2日で6連戦」というのは、どのチームにとっても同じ条件ではある。だが、前線の運動量を生かそうという日本の戦い方は、6試合を戦い抜くにはあまりにも負担が大きすぎた。韓国のように強力なトップが(それも複数)いれば、ロングボールを武器に戦うこともできる。ブラジルのような決定力があれば、準決勝の韓国戦のように省エネに徹して、90分の間に何度か本気で攻めて、確実に点を取って勝負を決めてしまうことだってできる。だが、日本は攻撃面でも守備面でも、とにかく走り続けるしかなかったのだ。

日本の6試合を振り返ってみよう。初戦は、パーフェクトな狙い通りの試合をして、スペインから勝点3を奪った。2戦目のモロッコ戦は、打って変わって、厳しい内容。永井の俊足でなんとか1点を奪って勝点3をゲット。そして、3戦目。日本は前線を大幅に入れ替えて、主力に休養を与えた。もし、モロッコ戦が引き分け以下に終わってホンジュラス戦を迎えていたら、主力を休ませることができなかったはず。そうなったら、準々決勝敗退に終わった可能性は大きい。準々決勝は、休養十分の前線がよく走ってエジプトに快勝。だが、やはり連戦は無理だったようで(しかも、打撲を負った永井の動きも悪く)、準決勝、3位決定戦は運動量が落ちて連敗を喫してしまった。

要するに、理想の戦い方ができたのは、最初のスペイン戦と中5日の休養ができたエジプト戦だけだったのだ。前からプレッシャーをかけてボールを奪い、ショートカウンターで得点して勝つ。そのコンセプトは、日本選手の特性を考えれば当然の選択だったし、関塚監督はうまくチームをまとめたと思う。だが、「中2日で6連戦」というオリンピックで勝つには、それだけでは不十分だったのだ。つまり、疲れて動けない状態のとき、相手がロングボールを蹴ってくるような状況のときには、「別の戦い方」もできるようにしておかなければならなかったのだ。

後方からパスをつないだり、相手の攻撃を受け止めてこちらもロングボールで対抗したり……。試合毎に、相手によってやり方を変えたり、試合の中でも時間帯によってやり方を変えたりできるようにしなければオリンピックの6試合を戦い抜くことはできない。それを実践して見せたのが女子代表だ。苦しい状況の試合では、開き直ったかのように守備を固めて、カウンターに徹して、あるいはセットプレーを生かして、したたかに戦い抜いて決勝までたどり着いた。そのままだったら、日本の戦い方に対して批判が生まれていたことだろうが(実際、敗れたブラジルの監督がそのようなことを言ったと報じられている)、決勝で世界最強のアメリカに対して本来目指すサッカーをやり抜いて、批判の芽を封じ込めてしまった。

次回以降、日本が本気でオリンピックのメダルを目指すのなら、やはり、柔軟に戦い方を変えられるチームを作るしかない。もっとも、監督が望んだとおりの選手を自由に招集できないような状況ではそこまでのチーム作りができるわけもない。今後も「海外組」が増えていくようであれば、オリンピック代表のチーム作りはますます難しくなっていくのであろうが……

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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