[写真]アメリカ遠征でファンサービスするネイマール

ブラジル代表が、ロンドン五輪2試合を終えた。そんな中、快勝しても、辛勝しても、話題になるのはネイマールだ。

辛勝となったのは、初戦エジプト戦。ブラジルは前半で3ゴールを奪い、そのうち1点は、ネイマールがドリブルから、フッキとのワン・ツーで決めた。しかし、後半に2点を返され、最後は1点差を守りきる展開となった。

試合後、ネイマールの印象を聞かれたエジプトの監督が「彼には才能があるが、時々チームを手助けするよりも、自分を披露するために、プレーしているようだ。」と語ったそうだ。率直な感想なのか、報道陣の質問に誘導されたのかは、その会見場にいたわけじゃないので分からないが、ネイマールにとって、最もイヤな言われ方の1つ。「僕はいつだって、チームの勝利のために戦っている。」というのが、こうした批判に対する、いつもの答えだ。

U−17、20では、自分が目立つことが優先となる選手もいるだろう。しかし選手達は、自分が目立とうとするだけでは、チームは勝てないこと、チームが勝たなければ、自分が多少目立つプレーを見せたとしても、印象に残るのは「敗戦」だけであること、その選手にとっても「輝けなかった大会」として終わってしまうことを、経験から学んでいる。

個人主義という批判に関して、6月の親善試合メキシコ戦に、0対2で敗戦した後の、マノ・メネーゼス監督の説明が分かりやすかった。ワールドカップ予選を戦っているフル代表に、五輪候補選手による代表チームで挑んだ試合の後「メキシコはポジショニングが良いので、個人技で打開する場面じゃなかった。そこでミスをすると、カウンターのチャンスを与えることになるからね。もう少し落ち着いて、忍耐強く、パスを回す成熟さが必要だった。」守備を固める相手に対し、選手個々やチームとしての若さが出て、個人技で打開しようとしてしまった、という反省だ。

同じ6月の親善試合アルゼンチン戦では、3対4で敗れた。メッシ、イグアイン、ジ・マリア、マスケラーノらベストメンバーを揃えたフル代表に対し、ブラジル五輪代表候補チームは、先制しながらも、取って取られての展開になった。「若い時にはまだ恐れがなくて、勢いがつけば、何も悪いことは起こらないと考える。それで、必要以上に攻撃に出過ぎた面もある。」と、マノは語った。選手達のパーソナリティの強さを称えての台詞だった。

ブラジルに「芸術サッカー」という言葉がある通り、ブラジル人は華やかな個人技を見るのが大好きだし、それができる選手こそ、ブラジルの象徴だと誇りにする。国内には今、ネイマール風のソフトモヒカンの少年達が溢れている。4、5年前、クリスチアーノ・ロナウド風の少年が増えたことを思い返せば、少年達がネイマールに憧れるのは、サッカーの国ブラジルとしては、とても健全だ。

しかし、ネイマールのプレーはいつも、批判と称賛の紙一重。2002年ワールドカップ優勝監督のルイス・フェリッピ・スコラーリは、こう語っていた。「戦術的な規律と、技術的な規律のなさをミックスできれば、強いチームを構成できる。今、ブラジルも戦術的に成長している。戦術練習もよく積まれている。ただ、技術面では、個人技、ドリブルといった我々ブラジル人の持ち味が、減ってきている。そういう方向に選手達を育てていないからだ。現時点、戦術的に規律がなく、創造的で、誰も予想しないようなプレーをしたがるのは、ネイマールだ。練習を積んだチームは作れるが、彼のようなアドリブの効く選手は、どんなクラブでも代表でも、1人や2人、欲しいものだ。だから、我々は彼を称賛するんだ。」

ロンドン五輪2戦目のベラルーシ戦は、3対1と快勝した。ネイマールは1ゴール2アシスト。報道陣の中には「ネイマールを個人主義と批判した人達の感想を聞きたいもんだ。」と、意気揚々と語る人もいた。もちろん、チーム戦術を重視するネイマールに対し、今度は「あそこまで守備に戻る必要があるのか」「左サイドに縛られ過ぎじゃないか。」等々、議論は常にあるが。

ネイマールはいつも「批判されても落ち込むんじゃなく、サッカーで解決する」と語っている。ブラジル国民に愛され、期待されながら、批判もされ続けるサッカー人生で、戦い続ける20歳だ。

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藤原 清美
90年からテレビ番組を制作。サッカーとブラジルに常に関わってきたことから、2001年、リオデジャネイロに移住。以降、リオをベースにサッカーとスポーツを中心に取材。特に、ブラジル代表に関しては、ワールドカップ4大会をはじめ、完全密着取材を続行中。また、世界中で活躍するブラジル人スター選手の訪問取材などで各国を飛び回り、日本・ブラジル両国のテレビ・執筆など、幅広く活動中。»藤原清美オフィシャルブログ

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