関東大学対抗戦Aグループと関東大学リーグ戦1部の16校が参加する交流試合、「関東大学春季大会」がこの春よりスタートした。これは公式戦の試合数を増やすとともに、いままで大学選手権等に限定されていた対抗戦勢とリーグ戦勢の対戦機会を増やすことで、大学ラグビーの強化と活性化につなげる目的で新設された大会だ。開催方式は前年の成績をもとに両リーグが上位Aグループ(4校)と下位Bグループ(4校)に分かれ、それぞれ同グループ内の相手リーグの4校と総当たり戦4試合を行う。

新しい戦力を試したい時期でもあり、まだまだどのチームも成長途上の段階だが、緊張感の中で公式戦を戦うことによって見えてくるものがあるのは確かだ。ここでは今季の大学シーンをわかせてくれそうな関東の9校プラス関西の2校をピックアップ。招待試合や練習マッチを含めた戦いぶりから、各チームの今季の戦力分析と展望を紹介する。

【慶應大学】
[関東大学対抗戦/2011年度大学選手権ベスト8]

◆春の主な戦績
4月28日 対拓殖大※ ○31-27
5月5日 対同志社大 ○38-19
5月20日 対早稲田大 ●0-36
5月27日 対法政大※ ○36-14
6月2日 対中央大※ ○34-20
6月10日 対明治大 ●19-40
6月16日 対日本大※ ○24-14

※は関東大学春季大会(公式戦)

◆春の戦いぶり
田中真一監督就任2年目の今シーズン、春季大会の開幕戦となった拓殖大戦は辛くも勝利したものの、後半ロスタイムのトライでようやく逆転するなど、内容的には満足できるものではなかった。5月に入り同志社大戦で後半に5トライを奪って逆転勝利を収めたが、宮崎で行われた早稲田大戦はスクラム、モールをはじめFW戦で終始劣勢を強いられ、0-36の完封負け。多くの課題が浮かび上がる結果となった。

それでも翌週の法政大戦は風下の前半こそリードを許したものの、後半に本来のテンポのいい連続攻撃で次々にトライを重ね快勝、立ち直りを感じさせた。続く中央大戦も後半30分以降に3連続トライを挙げて逆転勝ち。春季大会に加え強豪校との招待試合、練習試合が続く厳しいスケジュールをこなす中で、着実に力をつけている。

◆戦力分析
他の有力校と比べ飛び抜けた資質を持つタレントはいないが、ひたむきに、泥臭くプレーできる慶應大らしい選手が揃った。PR平野裕馬を軸にスクラムは安定しており、ラインアウトでは4年生のLO遠藤洋介の存在が光る。バックローでは桐蔭学園時代に全国優勝を経験したFL森川翼が成長し、スターターに定着。U20日本代表でも主軸として活躍するFL石橋拓也が戻りフィットすれば、さらなる戦力アップが期待できる。

過密日程を考慮しBKは複数のメンバーでポジションを回している段階だが、その中でキレのある動きを見せているのがFB新甫拓だ。防御の穴を見抜くビジョンに優れ、プレーメーカーとして欠かせぬ存在となっている。また1年時の昨季から対抗戦に出場しているSH宮澤尚人も、テンポのいい球さばきで攻撃に躍動感を生み出すキーマンだ。

新人で高い評価を受けるのは、SO矢川智基(清真学園)。パス、キックなど基本スキルの精度が高く、ゲームメイク能力も高校時代から定評がある司令塔だ。CTB岩本龍人(國學院久我山)は状況判断と突破力が持ち味の好選手。WTB吉岡征太郎(國學院久我山)は小柄ながら独特のステップワークを生かしレギュラー入りを狙う。190センチ、118キロの巨漢FW大塚健太(國學院久我山)は、LOとして育てていく予定だ。

◆今後の展望
サイズ面の劣勢を克服するため、この春はコンタクト、フィットネス両面で強度の高い練習を続けてきた。同志社大戦、法政大戦、中央大戦と、相手の足が止まりはじめた後半に自分たちの形でトライを挙げ逆転しているのは、その成果の表れだろう。「そこは選手にも自信になってきている。いまやっているのはとにかく基本プレーだけ。チームに厚みが出てくるのは夏以降でしょう」とは野澤武史ヘッドコーチ。

戦術面のベースとなるのは、泥臭いタックルを軸に堅い防御で失点を抑え、少ないチャンスをものにして競り勝つ伝統の慶應スタイルだ。アタックではコンビネーションとアングルチェンジを駆使し、テンポよく継続して相手防御を崩す攻撃に取り組んでいる。法大戦後、「まだ本気じゃないというか。きどっているし、よそ行きのラグビーをしている」と野澤HCは厳しかったが、一歩ずつ、着実に前に進んでいるのは確か。「この春最大のターゲット」という帝京大戦(7月1日/帝京大グラウンド)で、真価が問われる。

photo

直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。

スカパー!×J SPORTS J SPORTS オンラインショップ