桜が満開となった7日は大宮アルディージャ対セレッソ大阪戦を取材に出かけた。大宮公園は桜の名所として有名だが、まだまだ寒い。キックオフ16時の気温は10度を下回るほどで、強風の中のゲームとなった。

やはり注目は、若手育成に長けていたレヴィー・クルピ前監督からセルジオ・ソアレス監督に指揮官が代わったセレッソ大阪がどんな変貌を遂げたかだった。クルピ前監督が率いた昨季の彼らは「2点取られても3点取って勝てばいい」という攻撃サッカーを前面に押し出すチームで、大量得点も大量失点も多かった。初参戦となったアジアチャンピオンズリーグ(ACL)では宿敵・ガンバ大阪を破って8強入りしたものの、Jリーグの方では安定感を欠いて12位にとどまった。

その不安定さを修正するのが、新指揮官の役割だったようだ。ソアレス監督はクルピ監督の採っていた4-2-3-1の基本布陣を踏襲し、主要メンバーもそのまま起用し続けている。前任者のベースを生かしながら、自分の色を出そうというのは賢いとやり方だ。特に守備面の強化には積極的な姿勢を示しており、5試合終わって通算失点3というのはまずまずの出来である。

大宮戦でもその成果は確実に出ていた。守備の組織力が上がり、プレスの意識も高まっていたのだ。「大宮はビルドアップを大事にしてくるチーム。中盤でカルリーニョスやラファエル、チョ・ヨンチョルが絡みながらつないでくる。そこで中盤でしっかりプレスをかけてボールを奪った後、速い仕掛けをすることが一番有効だと考え、選手たちに指示した」とソアレス監督は語っていたが、面白いように中盤でのプレスがはまって次々とゴールチャンスを作った。

象徴的だったのが、後半22分の3点目。関塚ジャパンでも活躍したボランチ・山口蛍のインターセプトからブランキーニョへと渡り、彼がドリブルで相手をひきつけ、右から飛び出してきたキム・ボギョンにパスしてゴールという見事なカウンターだった。山口蛍の献身的な守備を指揮官も絶賛していたが、彼と扇原貴宏のロンドン五輪代表コンビは確かにチームのバランスをうまく取っていた。昨季途中からレギュラーをつかんだ2人の成長が、今のC大阪を力強く支えているといっても過言ではないだろう。

そして攻撃面では、清武弘嗣の存在を抜きには語れない。「大宮戦は今季に入ってから一番よかった」と本人も語っているように、ドリブルやパスで再三、攻撃の起点を作った。左MFのポジションをベースにしながら中央、右へと流動的に動いて相手守備陣をひきつけ、ブランキーニョやケンぺス、キム・ボギョンにラストパスを送るプレーは頭抜けた印象を残した。香川真司(ドルトムント)、家長昭博(蔚山現代)、乾貴士(ボーフム)と同じポジションの選手が次々と海外へ出て行った後にチャンスをつかみ、五輪代表・A代表へと瞬く間にステップアップした男は「今は自分がチームの中心なんだ」という自覚を持ってプレーしているに違いない。

自らが得たPKを思い切り決め、試合後に「この勝利にひたるんじゃなくて、すぐに切り替えて明日からしっかりやりたい」と前向きなコメントをしていたのも、高いプロ意識の表れだろう。今季は体調不良とケガが重なって出遅れていただけに、コンディションが心配されていたが、この日の一挙手一投足を見る限りでは全く問題なさそうだ。今夏の海外移籍が有力視される彼のJでのパフォーマンスを見られる機会は残り少ない。そのチャンスをしっかり生かしたいものだ。

攻撃面でもう少し欲を言えば、外国人選手たちの得点力をアップさせたいところ。前線でターゲットになれるケンぺス、チャンスメーカーとして幅広い仕事をこなせるブランキーニョと今季のC大阪はまずまずの助っ人補強をしたが、まだ2人ともリーグ戦では1点ずつしか奪っていない。大宮戦でもケンぺス、ブランキーニョともにシュートを打てるチャンスにパスを選択する場面が少なくなかった。大宮の攻撃陣に比べれば積極性は感じられたが、もっと強引に行った方が決定力は向上するはず。この2人の動向が今後の彼らのカギになるといっても過言ではないだろう。

C大阪には彼ら以外にも、途中出場で類稀な創造性を示した柿谷曜一朗、成長著しい若手FW永井龍などがいて、攻撃のタレントは非常に豊富だ。ベテランの播戸竜二も「ウチの若手はホントにすごく伸びてる。俺も負けてられへんっていう気持ちになる」と大いに刺激を受けているようだ。清武、山口、扇原の五輪トリオを筆頭に、若い才能が切磋琢磨しあうことでチームはさらに活性化されるだろう。この調子で勢いが出てくれば、優勝争い参戦もありえる。そんな期待を持てる大宮戦だった。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。