U-22シリア代表のイマド・ハンカン監督は、シリア人プレスの「日本にはずっと負け続けているが……」という意地悪な質問に対して「日本は技術や経験のレベルが高い」と答えた後で、「国内リーグのレベルも高い」と、代表の強化がJリーグ効果であると述べた。まさに、その通り。国内に高いレベルのプロリーグがあり、そこで経験を積むことによって選手たちが成長し、それが、代表の力に反映される……。かつて、いち早くプロ化した韓国を相手に、日本のサッカー界が感じ続けてきたのと同じ現象と言っていい。

しかし、シリアとの試合を見ていると、「それは本当なのか?」と疑いたくなってしまう。

同点に追いつかれて苦戦したからではない。シリアは、すばらしいチームだった。1対1の戦いでは日本選手が苦しめられ続けた。強いチームと戦えば苦戦するのは当然のこと。追いつかれた後、きちんと反発心を示して2点目を奪って勝ちにつなげたのは、日本の選手たちの強さである。

問題は、試合の進め方の部分だった。

先日のアウェーでのバーレーン戦もそうだった。前半1点をリードして迎えた後半、無理なパスをつないで攻め急いでバーレーンにボールを奪われて、何度も危ない場面を作ってしまったのだ。幸い、バーレーンとは実力差があったから、バーレーンの攻めをしのぎ、さらに2点目を奪って「快勝」という結果を手繰り寄せることができただけのことである。そして、ホームでのシリア戦。日本は、同じような過ちを犯してしまったのである。

パスはつながって、ポゼッションではシリアを大きく上回った前半だったが、シュートまで持っていく姿勢に欠け、シュート数では日本の9本に対してシリアは7本。攻めの消極さが目立った展開だったが、終了間際にCKから扇原貴宏が上げたクロスを濱田水輝が決めて日本が先制。「これで楽になる」と誰もが思って迎えた後半の戦い方が問題なのだ。

シリアの選手たちは、前半の戦いの中で「日本選手を相手にしても1対1で十分に勝負できる」ということを肌で感じ取ったのであろう。後半に入ると、1点を追って、積極的に仕掛けてきた。高い位置からプレッシングをかけ、ボールを奪うと前線にボールを入れて、日本チームに圧力をかけてきたのである。後半の立ち上がりの15分間くらいは日本が何度もチャンスを作ったが、その後はシリアの攻撃に受身に回る時間が多くなってくる。

さて、そういう時に、どういう戦い方をするのかが問題になるのだ。

日本チームは、最終ラインにはもともと不安がある。2次予選のクウェート戦を思い出すまでもなく、簡単に失点を許す場面をこれまで何度も見せられてきた。もっとも、最近は、日本のDFにも度胸が据わってきたようで、1対1でも臆せずに体を当てて止めにいったりもできてきた。実際、シリアの猛攻に対しても、シュートコースに体を入れてブロックして、最終ラインはよく耐え続けていた。また、扇原と山口蛍のセレッソ・コンビが組んだボランチもよく守備をしていた。

問題は、トップと2列目の選手の意識である。

日本のDFは1対1でシリアの選手を押さえ込めているわけではない。とするなら、前線の選手が相手にプレッシャーをかけて、シリアの前線へのボールの供給を止めるしかないだろう。つまり、1点をリードして、残り時間が次第に少なくなってくる状況。しかも、相手の圧力で押し込まれる場面が増えているという試合の流れ。そうしたものを考えれば、守備の意識を高くしなければならないはずだ。

もちろん、カウンターから2点目を奪って勝負に決着をつけることができれば、それに越したことはないのだが、それよりも、まず守りを意識すべきではないのか。ボールを奪って攻めに入ったとしても、無理に得点を狙って攻め急ぐのではなく、まず相手にボールを渡さないことを考えなければいけない。

だが、20歳を過ぎたプロ選手たち(大学生もいるが)が、そうした判断ができずに攻め急いでしまうのである。無理にドリブルで仕掛けてボールを奪われる場面が何度かあった。そして、案の定、早めに前線に送り込まれたボールをアルスマが個人の力で突破して同点ゴールを決められてしまう。

ベンチワークも遅かった。

同点ゴールを決められたのは、日本が最初の交代のカードとして永井謙佑の準備を終えた時点だった。直後の75分に永井が交代。6分後に山崎亮平が投入され、関塚隆監督が3枚目のカードを切ったのは、後半のアディショナルタイムに入った93分のことだった。

相手が前がかりになり、また疲労で足が止まる後半に、俊足の永井を入れるというのはたしかに合理的な交代である。だが、60分以降、押し込まれる状況が続いていたのだ。もう少し早いタイミングで永井を入れて、相手に守備の意識を持たせることはできなかったのか?あるいは、相手のMFにプレッシャーをかけて、前線へのボールの供給を防ぐために、中盤にフレッシュな選手を入れる交代ができなかったのか……。

「1点のリードを守りきろう」という姿勢が、選手からも、ベンチワークからも感じられなかったのである。

シリアの監督も言うように強力な国内リーグで揉まれているはずの日本のプロ選手たち。彼らが、そういう当たり前の判断ができないのか。それは、ユース年代を卒業してプロに入る19歳から20歳前後の選手がトップではなかなか出場機会を得られず、実戦を経験する場が少なくなっているからに他ならない。大学に進めば実戦はいくらでも経験できるが、それでは同じ年代の大学生との試合がほとんどとなってしまう。

結局、U-22代表の選手の多くは、クラブではなかなか90分フル出場する機会も得られず、あるいは出場していても、周囲のベテラン選手に依存してプレーしているだけなのだ。シリアとは2月にアウェーゲームが待っている。日本の選手にとってはシーズンオフで、中東の選手にとってはシーズンの盛りの時期であり、国立競技場でのゲームよりはるかに苦しい戦いが予想される。もちろん、シリアの守備の弱点も明らかになったのだから、点を取ることはできる。

とするなら、リードしてからの戦い方が再び課題になることだろう。いや、ホームでシリアを破って、勝点でリードしている以上、0-0または同点であっても事実上リードしているわけだ。展開によっては守りきって勝点1を確保する。そんな戦い方も意識して準備しておいてほしい。

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授