ジョン・ダニエルズが2005年の10月、史上最年少の28歳と41日でレンジャーズのGMに就任した時、われわれ在米メディアの何人かは「ああ、またか」と感じた。それは彼が「プロ野球経験のない、東部の名門大学出身の若き秀才」だったからだ。

就任会見でレンジャーズのオーナー(当時)トム・ヒックスはこう言っている。

「彼は本当に明晰な頭脳を持っている。野球図鑑が歩いているようなものだ」

コーネル大学で経済学と管理学を専攻したダニエルズは、2001年にロッキーズの研修生としてメジャーリーグ経営者の道を歩み始めた。当時は各球団が野球の統計分析学=Sabermetricsを積極的に取り入れ、その知識に長けたイェール大学出身のセオ・エプステイン(レッドソックスのGMがカブスのGMに 参照)やハーバード大学出身のポール・デポデスタ(当時アスレチックス)が頭角を現していた頃だった。やがて2002年にエプステインがレッドソックスGMに、2004年にはデポデスタがドジャースGMにそれぞれ就任し、プロ野球経験がなくとも、プロ野球界での経験が浅くても有力なGMになれる」という考えが普通になった。

だがエプステインがレッドソックスを86年ぶりのワールドシリーズ制覇に導いて長期政権を築いたのとは対照的に、デポデスタはエプステインほどの功績を挙げられないまま失脚。ダニエルズも当初は、懐疑の目を逃れられなかった。彼が就任直後から行ったトレードの中には、放出後に史上四人目の40-40(40本塁打、40盗塁以上)を達成するアルフォンソ・ソリアーノ(当時)二塁手(現カブス 戦う男ソリちゃん(元広島)参照)、今季のア・リーグMVPの最有力候補エイドリアン・ゴンザレス(現レッドソックス)など、「何を考えてたんだ?」とファンに糾弾されるような取引が含まれていたからだ。

「今までここにあったものを壊す気はないが、幾つかの物事については新しいアイディアがある」

と就任当時語ったダニエルズだったが、3年契約の期間中のチームが3年連続でシーズンに負け越したため、2009年は単年契約の一発勝負。成績向上の痕跡を残せなければ「更迭」の可能性が高かった。水面下ではレンジャーズ再建を着々と進めていたが、それだけでファンや経営陣を満足させることは難しく、彼は2009年のシーズンを前に「経過と結果」を同時に求められていたのである。(次回に続く)

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ナガオ勝司
1965年京都生まれ。東京、長野を経て、1997年アメリカ合衆国アイオワ州に転居。1998年からマイナーリーグ、2001年からメジャーリーグ取材を本格化。2004年、東海岸ロードアイランド州在住時にレッドソックス86年ぶりの優勝を経験。翌年からはシカゴ郊外に転居して、ホワイトソックス88年ぶりの優勝を目撃。現在カブスの100+?年ぶりの優勝を体験するべく、地元を中心に米野球取材継続中。 訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員。

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