来月末、アーセナルが日本にやって来ることが決まった。といっても女子チームのほうだ。アーセナル・レディースは11月25日に来日し、30日に東京・国立競技場で「トヨタ・ヴィッツ・カップ」として、なでしこリーグの優勝チームとチャリティーマッチを戦う。アーセナルは今季、新設された、イングランド女子スーパーリーグ(FA WSL)で初代王者となり、女子FAカップ、WSLリーグカップも制して3冠を達成した、欧州屈指の強豪チームだ。

ベンゲル監督が率いる男子のファーストチームは今季、低迷しているが、アーセナル・レディースはやたらと強い。選手はほとんどがイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの現代表、元代表、ユース代表だ。パワーとフィジカルに加え、中盤のテクニカルな選手が、ショートパスやドリブルで攻撃を組み立てる。剛と柔を併せ持つのが、強さの秘密だろう。

2011年FIFA女子ワールドカップ(W杯)ドイツ大会で、なでしこジャパンが敗れた唯一の試合、イングランド女子代表戦でゴールを決めた、FWエレン・ホワイトとMFレイチェル・ヤンキーもアーセナル・レディースの選手である。

対戦相手は、現在なでしこリーグで、10勝1分けで首位を独走するINAC神戸が有力だ。澤穂希らなでしこジャパンの代表選手が7名所属するため、女子W杯の雪辱戦になるのは間違いない。スタイルが異なるイングランドと日本のチャンピオンが、いったい、どんな戦術で、どう戦うのか。単純にサッカーのゲームとして興味深い。

実は1年ほど前から、このプロジェクトを手伝っており、ようやくここまでこぎ着けた、という印象だ。もともと武蔵丘短期大学の女子サッカー部が、この10年、毎年夏にアーセナル・レディースで合宿を行っていた。この10周年を記念して、武蔵丘短期大学の母体である学校法人後藤学園が、アーセナル・レディースを日本に招待する、ということで始まった話だ。当時はまだなでしこブームの前。「記事にしてもらえないか」と頼まれ、関わるようになった。

その後、3月の東日本大震災で、この計画は頓挫しかけたが、アーセナル側に日本の現状を繰り返し説明。「ぜひアーセナル・レディースのプレーを日本で見せて欲しい。日本の人たちを勇気づけて、チャリティーに協力して欲しい」と訴え続けた。一記者としての仕事の範疇を超えていることは分かっていたが、日本全体が放射能に汚染されているかのような欧州のメディアに対する反発心もあった。徐々にスタッフや選手たちの理解が得られ、アーセナル・レディースは出場料なしで、試合を戦ってくれることに賛同してくれたのだ。

アーセナル・レディースは勝つためにベストメンバーで乗り込んで来る。来日後、出来るだけ早く時差ボケを解消し、コンディションを整えるため、食事のタイミングや練習など、スケジュールに関して、細かい要求をしてくる。彼女たちは本気で勝ちたいのだ。その数々のリクエストから、その真剣さが伝わってくる。

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原田 公樹
1966(昭和41)年8月27日横須賀生まれ、呉育ち。国学院大学文学部中退。週刊誌記者を経てフリーのスポーツライターとして独立し、99年に英国へ移住。ウェンブリースタジアムを望む、北ロンドンの12階のアパートメントに住んでいる。東京中日スポーツやサッカーマガジンに寄稿し、ロンドン・ジャパニーズの不動の左サイドバックでもある。 »Twitterアカウント »メールを送る

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