29日に大阪・長居スタジアムで行われた日本代表対Jリーグ選抜のチャリティマッチは非常に意味のあるものとなった。

選手たちが募金活動に参加し、自らのメッセージを書いたTシャツを着て登場するという試みは、過去のサッカー界にはなかったかもしれない。スタジアム周辺でもJリーグOBや岡田武史前日本代表監督らが募金やチャリティグッズ販売を率先して実施した。長居があれだけ多くの人で溢れ返ったのは、2002年日韓W杯の時以来か、それ以上といってもいいかもしれない。岡田前監督が「『何かしたい』というみんなの思いがすごく伝わってきた」と話したように、東日本大震災で苦しむ被災者を助けようという気持ちで多くの人が団結していた。サッカーの力を改めて痛感させられる1日だった。

チャリティマッチの結果はご存知の通りだが、2-1で日本代表がJリーグ選抜を下した。前半15分、本田圭佑(CSKA)の突破から得たFKを遠藤保仁(G大阪)が直接決めて代表が先制。19分には本田が小笠原満男(鹿島)から奪い取ったボールをすぐさまスルーパス。DFの裏に走りこんだ岡崎慎司(シュツットガルト)が2点目を叩き込んだ。後半は両者ともにメンバーがガラリと変わったが、37分に川口能活(磐田)のロングフィードを攻撃参加していた田中マルクス闘莉王(名古屋)がヘッドで落とし、そこに走りこんだカズ(三浦知良=横浜FC)がゴール。カズダンスで会場がこの日一番の盛り上がりを見せるとともに、試合のインパクトも大きく増した。

そんな展開だが、日本代表にとっても収穫と課題の両方が垣間見えた。

最も大きかったのは、ザック監督が「攻守のバランスが取れた理想のシステム」と考える3-4-3をテストし、一応の成果を収めたことだ。3-4-3については昨年末の大阪合宿で初めて指導した。サイド深くまで攻められた際にはストッパーがズレて対応し、空いたスペースを両ワイドのMFかボランチが埋める、クサビが入ってDF1人が対応した時には残りのDF2人とワイドのMFが絞って4バックになるなど、細かい約束事の多い独自の新布陣だけに、今野泰幸(FC東京)などは「まだ全然整理がつかない」と戸惑いを口にしていた。

それでもこの日は守備の混乱は見られなかった。Jリーグ選抜のコンディション不良もあり、クサビのボールが入らず、サイドも切り崩される回数が少なかったことも大きかったが、選手たちは戦術を理解しながらプレーしていた。そんな中、特に光ったのが内田篤人(シャルケ)と長友佑都(インテル)の両ワイドに位置するMFだ。4バックより高いポジションを取れることで、彼らはボールを奪ってスムーズに攻撃参加できるようになった。内田などは小笠原のパスを数回カットして本田圭佑、前田遼一(磐田)らと絡みながらタテに速い攻めを見せていた。

「ボールを取ってすぐ攻撃に移れていたし、狙いはできたんじゃないかと思う。初めてにしてはよかった」と前向きだった。長友も「サイドで起点ができるのはすごくやりやすい」とコメント。ザッケローに監督も「内田と本田、長友と岡崎というタテの関係がよくできていた」と自信をのぞかせた。当面は4-2-3-1がベースとなるだろうが、ザックジャパンの基本布陣は徐々に3-4-3になるのではないか。そんな期待を抱かせる前半のパフォーマンスだった。

しかしながら、1月のアジアカップ(カタール)優勝メンバーの大半が揃ってベンチに下がった後半、日本代表はノッキングを起こした。パス回しが連動せず、思うように主導権を握れなくなったのだ。ザックジャパン初招集の阿部勇樹(レスター)と柏木陽介(浦和)のボランチは長谷部誠(ヴォルフスブルク)と遠藤のような落ち着きを見せられず、松井大輔(グルノーブル)と槙野智章(ケルン)の両ワイドのMFも本職でなく、やりにくそうだった。ここ数日の紅白戦で気を吐いていた乾貴士(C大阪)、彼と交代して途中から出てきた家長昭博(マジョルカ)も持ち前のスピーディーなドリブル突破を出せるような状況がほとんど訪れなかった。「後半は見劣りした」とザック監督からも辛口評価が飛び出したほどだ。

確かに、後半のメンバーは実戦経験が少なく、松井のように本職でない位置で苦労した者もいた。アジアカップでガチンコ勝負を繰り返してきた主力組のようなコンビネーションを期待するのもムリがあるのかもしれない。しかし後半のメンバーがもっと奮起しなければ、代表の底上げは難しい。今回の対戦相手がコンディションの整っていなかったJリーグ選抜だったことを考えると、より厳しい視線で見る必要がありそうだ。

今回のいい面、悪い面をどう今後につなげていくのか。Jリーグとの兼ね合いで7月の南米選手権辞退の可能性があるだけに、今後が心配になってくる。3-4-3を含めて代表の完成度を高め、秋からの2014年ブラジルW杯アジア予選をしっかりと戦うためにも、南米選手権出場の道を絶対に探るべきだと思うのだが…。協会とJリーグには最良の選択をお願いしたいものだ。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。