日程の関係で(つまり、J1と重ならないため)、このところJ2の試合を続けて見ることができた。中でも、第26節、27節と連続で、J2で首位を独走する柏レイソルを見たのは楽しい経験だった。第26節がジェフユナイテッド千葉との千葉ダービー、そして、第27節がコンサドーレ札幌との「石崎ダービー」である。

千葉との試合は、壮絶な攻め合いだった。昇格圏から離されつつある千葉だったが、さすがに柏相手のダービーということで、フクアリも満員(18,031人)で埋まり、開始早々からフルパワーで柏を攻め立てる。一歩も引かずに柏も応戦し、激しい攻め合いとなったのだ。柏がリードすれば、千葉が追いすがる激しい攻防が繰り広げられた。千葉も全力で戦ったが、やはり柏の攻撃サッカーが上回り、千葉は次第に足が止まっていった。そして、結局、柏が千葉を3-2で退けた(この試合はTV解説の仕事が入っていたので、僕は後半の途中でスタジアムを後にしたのだが……)。

第27節の札幌戦は、大雨の中の試合となった。前日まで真夏日、猛暑日だった関東地方も、雨とともに一気に気温が下がり、試合開始時の気温は公式記録で16・8度。朝からの雨で、ピッチは全面水含みとなっている。千葉と違って、札幌は守備を固めてきた。4-4-2の後ろの2本のフラットなラインで、スペースを消してしまう。柏は、やはり両サイドバックが高い位置に上がって攻撃をしかけようとするのだが、札幌はしっかり守って、後半に勝負を持ち越そうという戦法だった。しっかりパスをつないで組み立てた柏も、とうとう攻め崩すことができず、札幌の石崎信弘監督(元・柏監督)の「思う壺」かと思われたのだが、前半のロスタイムに札幌のMF上里一将が2枚目のイエローカードで退場となってしまう。雨でスリッピーなピッチのおかげで、選手が自分の予想以上に滑ってしまい、それがファウルにつながるのだ。その分、割り引いて見てもらわないと困るのだが、主審の岡部拓人氏は律義にカードを出し始めたものだから、どうしても警告が多くなってしまう。

そして、後半に入って、1人多い柏が60分にCK崩れからのクロスを北嶋秀朗がヘディングで決めて先制すると、あとは一方的な展開となってしまう。PKで2点目が入った後、札幌は古田寛幸のミドルシュートで一矢を報いたものの、その後宮沢裕樹もイエロー2枚で退場となり、結局は5-1という大差の試合になってしまったのだ。この試合の柏は、中盤の底に本来はDFの小林祐三を起用したこともあり、また、相手がしっかりブロックを作っていたことで、前半は攻めあぐねだった。だが、後半は小林をサイドバックに回し、茨田陽生(「ばらだ あきみ」と読む)をボランチに置き、サイドには沢昌克を投入。より攻撃的な形にして、1人少なくなった札幌を攻め立てた。ネルシーニョ監督は、後半の狙いとして、「後半はよりクリエイティブにするため、沢を入れ、茨田をボランチにした」と言う。

この2試合を見て、19歳の茨田の動きは、僕もたいへん気に入った。柏の中盤は、トップに北嶋と林陵平。2烈目にレアンドロ・ドミンゲスと茨田。そして、3列目は大谷秀和と栗沢僚一(千葉戦で栗沢が退場となったため、札幌戦では小林を起用)という布陣。つまり、「4-2-2-2」である。2列目のレアンドロ・ドミンゲスは前線での攻撃の組み立てのパス出し役。3列目の大谷はゲームをコントロールし、トップにボールを入れる役割。そして、2列目の茨田は、パス回しの輪に参加しながら、再三トップに飛び出していく動きを見せる。つまり、茨田はパス出し役でありながら、同時に最終ラインの裏でパスを受ける役回りも果たしているのだ。トップ下にいて、あまり動かずに、テクニックを生かして前線にラストパスを送る。これが、古典的なゲームメーカー像である。だが、マラドーナなら別だろうが、今ではパス出し役も動かなければいけない時代である。

たとえば、ASローマのフランチェスコ・トッティ。パスを出す名手でありながら、同時に前線に飛び出して、難しい浮き球のパスを処理する能力に長ける。そのトッティの能力を生かして編み出されたのが、一部で「ゼロトップ」と呼ばれるシステムだった。茨田も、そのトッティと同じように、速いスピードで動きながらボールを処理するのがうまいのだ。だから、飛び出す動きの中でボールをもらっても、そのままシュートに持っていくことも、パスを回すことも可能になる。最後の最後。後半のロスタイムに5点目となるゴールを茨田が決めたのも、サッカーの神様の取り計らいであったかと思わせるような、そんな茨田の活躍ぶりだった。一方の札幌の19歳古田も、サイドでのドリブルや、札幌にとって唯一の得点となったミドルシュートなど、その能力を遺憾なく発揮した。

香川真司、内田篤人、長友佑都と、このところ、若い日本人選手が海外クラブに移籍し、それぞれチームで認められて活躍している。そういった海外流出は、「下手をしたら、Jリーグのレベル低下をもたらすかもしれない」と、一部で批判を受けている。だが、柏レイソル対コンサドーレ札幌の試合を見ていると、両チームの19歳、茨田陽生と古田寛幸がこれだけ活躍しているのだ。日本のサッカーの層も本当に厚くなったものだ。若い選手を見に行くのが楽しみになる、このところのJリーグであった。

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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