横浜F・マリノスの木村和司監督が「かわいそう」という言葉を2度も口にした。

Jリーグ第22節で、川崎フロンターレを3-1と撃破した後の記者会見でのことだ。もちろん、その前に、「気持ちいいね」とも言っていたのだが……。なにしろ、相手の川崎は中2日の試合だった。川崎は、8月29日のJリーグ(対清水エスパルス)の後、9月1日にはナビスコカップ準々決勝(対鹿島)の第1戦を戦い、その後も、9月5日に天皇杯2回、9月8日にナビスコカップ準々決勝の第2戦。そして、最後が9月11日の横浜FM戦。つまり、14日間に5試合を戦った。天皇杯2回戦(対鹿屋体大)では主力組は休んだものの、中村憲剛はこの間に日本代表でも2試合に出場しており、最後の横浜FM戦が14日間で6試合という強行日程になる。

一方の横浜FMの方は、9月5日に天皇杯の試合はあったものの、ナビスコカップはすでに敗退してしまっているから、Jリーグの試合としては8月29日の新潟戦からなんと2週間ぶりの試合なのだ。コンディションの差は言うまでもない。最近は、試合後の監督の発言として「相手は中3日なのに、うちは中2日。Jリーグはなんとか考えてくれ」という話をよく聞く。それなのに、鹿島との死闘から中2日の川崎が、中13日の横浜FMと対戦したのだから勝負になるわけはない。

開始55秒でCKから先制した川崎だったが、いつものようなスピードがなく、ボールをつないで攻めるしかなくなり、攻めは遅くなり、しかもパスをカットされてカウンターをでピンチを招く、そんな展開となった。なんとか前半を1-0でリードして折り返せるかと思ったものの、アディショナルタイムに山瀬功治に決められて同点とされ、さらに後半開始早々に兵藤慎剛にミドルシュートを決められて、万事休した。前半終了間際の山瀬の同点ゴールは、松田直樹からハーフライン付近にいた中村俊輔にボールが渡った瞬間の山瀬の動き出しがすべてだった。

じつは、川崎の守備ラインは21分と28分にも、同じような形でDFとDFの間を小野裕二に破られて決定的なピンチを招いている(21分のチャンスの場面で、小野は川崎のGK相沢貴志と衝突して脚を傷めて、後半の立ち上がりに交代を余儀なくされた)。どれもDFの対応の緩慢さが招いたピンチだった。なにしろ、この暑さである(水曜日の鹿島戦のときだけは、23度で雨と肌寒いような天気だったが)。9月4日の日中に行われた高円宮杯全日本ユース(U-18)選手権の試合では、両チームのGKが脚を痙攣させて交代という珍しい場面まであった(この試合の公式記録の気温は39度を超えていた!)。

暑い暑い日本の夏。おそらく、ペルシャ湾岸を除いて、世界でいちばん暑かったのではないだろうか!こんな夏に、週2回の試合を組むというのは、まさに無謀の極みでしかない。しかも、午後の蒸し暑い時間の試合も多い。夏休みの稼ぎ時と言っても、商品(試合内容)の質を落としてしまったら、長期的に見れば観客のJリーグ離れを招きかねない。……となると、某前会長が主張していたように「秋春制」移行が必要になるのであろうか?いや、雪の多い日本の冬ではリーグ戦開催が不可能なのもわかりきったこと。「春秋制」は維持せざるをえないだろう。

まず、最初にできることは、夏の暑い時期はナビスコカップなども含めて週2試合開催は絶対になくすことだろう。もちろん、Jリーグクラブの経営状態を考えれば、試合数を減らすことはできない。水曜開催も必要だろう。だが、週2試合開催は気候の良い春か秋に集中すべきだろう。いや、本当のことを言えば、やはり暑い時期は休みにすべきではないだろうか。冬も休み。夏も休み。日本の気候を考えれば、いい試合を見せるにはそうするしかない。

たとえば、正規リーグ戦は気候の良い春(3月〜6月)と秋(9月〜12月)に集中させる。春リーグと秋リーグの優勝チーム同士の「チャンピオンシップ」を開催して年間チャンピオンを決めてもいいだろうし、アルゼンチンのように「アペルトゥーラ(前期)」、「ラウスーラ(後期)」のチャンピオンをそれぞれ決めるだけでもいい。さらに、試合のできない冬季には、南日本を舞台にカップ戦を行い、夏の暑い時期には北海道・東北でカップ戦をしてもいいのではないだろうか?

試合数を制限する。そして、試合数が増えるにしても、きちんと休養日およびオフを設定する。それが、試合内容を良くするためにも、選手生命を長くするためにも必要なことだ。たとえば、来年1月のアジアカップ。少なくとも、南アフリカ・ワールドカップに出場した選手には休養を与えるべきだろう。そうでないと、日本代表の主力は、来年の夏にパンクしてしまう!

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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