もはやブブゼラの爆音が懐かしく感じる今日このごろだ。1カ月間にわたって行われた2010年ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会が終わり、すでにJリーグは再開。欧州の各リーグは開幕に向け、プレシーズンマッチが始まった。取材ノートを整理し、試合記録等を見直していると、大会期間中は気づかず、記事にしなかった知られざる事実がいくつか出てきた。なかでも最大の発見は、本田圭佑が実は「俊足」だった、という事実である。本田は「鈍足」というのが、一般的な見方だし、私もずっとそうだろう、と思っていたが、公式記録によって覆された。

今大会、FIFA(国際サッカー連盟)はメンバーの交代や得点時間だけでなく、選手たちのパフォーマンスについて詳細データも公式記録として公表した。これは競技場に設置された複数のビデオカメラによって、リアルタイムで算出されるもので、欧州の各クラブでも採用されているものと同じ最新の技術によるものだ。

出場選手の走行距離から、どのエリアでどんな動きをしたか、敵陣内にどれぐらいいたか、スプリント(短い距離のダッシュ)を何回したか、最高速度はもちろん、誰から誰へパスをし、その成功率がどうだったかなど、細かく分かるのだ。

例えばカメルーン戦でもっとも走行距離が長かったのは遠藤保仁の11.264キロで、最高速度は長友佑都の時速30.13キロ。原付の法定速度並みのスピードを誇ったわけだ。スプリントの回数が最も多かったのは本田の121回だったが、最高速度は時速21.88キロで、GK川島を除くフィールドプレーヤーのなかでは最も遅かった。

次ぐオランダ戦では、阿部が140回もスプリントを行っていて、相手ボールのときにチームで最も長い、5573メートルも動いていた。守備面で大きく貢献したことが分かる。この試合、本田の最高速度は時速21.36キロで、チーム全体の平均程度だった。

ところがデンマーク戦で本田の最高速度は時速28.11キロにも及んだ。途中出場したアヤックスでプレーする、デンマークの俊足MFエリクセンの時速28.72キロにはわずかに及ばないが、日本代表としては最速だ。実はこの記録が出たとき、何らかの計測ミスなのではないかと思い、記事にしなかったのだが、パラグアイ戦で本田は何と最高速度が、時速29.43キロに達した。もちろんこの一戦では両チームのなかで最速だ。

2度連続、計測ミスするとは考えにくい。本田の体型やモーションから、おそらく「鈍足」というイメージを持っていたが、実は俊足なのだ。もっともこの時速29.43キロは一瞬だから、どれくらいの時間、持続していたか、これらの公式記録からは分からない。とはいえ、少なくとも本田が鈍足でないことは、紛れもない事実である。

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原田 公樹
1966(昭和41)年8月27日横須賀生まれ、呉育ち。国学院大学文学部中退。週刊誌記者を経てフリーのスポーツライターとして独立し、99年に英国へ移住。ウェンブリースタジアムを望む、北ロンドンの12階のアパートメントに住んでいる。東京中日スポーツやサッカーマガジンに寄稿し、ロンドン・ジャパニーズの不動の左サイドバックでもある。 »Twitterアカウント »メールを送る

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