数週間前、摂氏20度を越えたシンシナティの遠征の際、「今年は暖かいね」などと顔なじみの警備員と話していたら、今日(5月18日)のシカゴは気温13度である。リグレーフィールドの外野の壁の蔦は、すでに新緑の緑に変わっているのに、ジャケットを手放せぬアメリカの5月である。

さて、シーズンも1ヶ月を過ぎると、各球団の健闘ぶりや、周囲を落胆させる状況が目立ってくる。最初の数週間なら、「最初だけだろう?」とか、「その内、良くなってくるさ」とファンやメディアも疑い深く、かつ寛容である。ところがこの時期になると、そろそろ「もしかして、いいんじゃないの?」とか、「おいおい、どうなってんだ?」と期待や驚きが混ざってくる。調子のいいチームでは監督や主力選手が賞賛され、調子の悪いチームでは、監督や選手の責任を問い始める。

5月13日、ロイヤルズのヒルマン監督の解任が発表された。言うまでもなく、ヒルマン“元監督”は、かつて日本でファイターズを日本一に導いた立役者である。サイヤング賞投手グリンキーを保持しながら最下位に低迷する責任を取らされたわけだ。シーズン途中の監督交代は、メジャーリーグでは珍しくない。2003年のマーリンズ、2004年のアストロズ、2008年のブリュワーズ、そして昨年のロッキーズなど、監督解任後にプレーオフ出場を果たしたチームもあり、これを起爆剤と考える経営者も少なくないようだ。

日本では元中日の助っ人としても知られるモッカ監督にも、解任話が浮上している。FAで弱点の先発投手陣を補強したにも関わらず、15勝23敗と低迷。首位争いにまったく絡めないことがその理由だろう。だが地元報道陣から、“モッカ監督の責任”について問われたブリュワーズのメルビンGMは、こう言って鼻で笑ったらしい。

「ケン(モッカ)がカーブのボール球に手を出したわけじゃないし、彼が2点や3点を取られたわけじゃないんでね」

もちろんこれは、チームの勝利に値するパフォーマンスをしていないのは選手だ、という意味である。まったく、その通りなのだが、チームが不調の時は誰かが責任を取らなければならない。そして、その「誰か」とは、ほとんど例外なく、監督なのである。ナ・リーグ中地区3位ながら、17勝22敗と波に乗れないカブスのピネラ監督も、地元メディアを中心に責任問題を問われた一人だ。

「私はこの世界で20年以上、生きているんだよ。今さら、誰に何を言われたって気にしないさ」

プロの世界は厳しい。泣き言なんか言ってられないさ、とベテラン監督はやっぱり、鼻で笑った。

(その2に続く)

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ナガオ勝司
1965年京都生まれ。東京、長野を経て、1997年アメリカ合衆国アイオワ州に転居。1998年からマイナーリーグ、2001年からメジャーリーグ取材を本格化。2004年、東海岸ロードアイランド州在住時にレッドソックス86年ぶりの優勝を経験。翌年からはシカゴ郊外に転居して、ホワイトソックス88年ぶりの優勝を目撃。現在カブスの100+?年ぶりの優勝を体験するべく、地元を中心に米野球取材継続中。 訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員。

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