関東にいると関西以西のチームを見る機会が少ない。京都サンガFCなどはその典型で、年に2〜3試合見れたら御の字だ。そんな彼らだが、元日本代表の柳沢敦を筆頭に興味深い選手が多い。DF水本裕貴は北京五輪に出場しているし、増嶋竜也、角田誠らもワールドユースで活躍するなど馴染みがある。そして最近は17歳のスピードスター・宮吉拓実もいる。彼について加藤久監督は「すごい才能を持った選手。今は柳沢と交代で使っているけど、そのうちスタメンになる可能性も大いにある。楽しみにしていてください」と太鼓判を押すほど。17日は大きな期待を持って味の素スタジアムのFC東京対京都戦に足を運んだ。

この日は4月中旬とは思えない寒さで、気温が10度を下回った。そんな異常気象が影響したのか前半は両者合計でシュート3本(東京=2本、京都と=1本)という低調な内容だった。京都の角田が開始11分という早い時間帯に先制したこともあり、東京は攻めあぐんだ。長身FW平山相太も同い年の水本と韓国代表DF郭泰輝に挟まれつぶされる。「自分も相手を背負ってボールを持つことが多くて、もっと工夫をつけなければいけなかった」と平山も反省する。いい時の東京ならもっと攻めの分厚さがあるのに、この日の前半はよさが全く出なかった。

その大きな要因に「京都の堅守」があった。京都の最終ラインは右から増嶋、郭、水本、森下俊。右サイドの増嶋もご存知の通り本職はセンターバックで、左サイドの森下も磐田ユース時代から3バックのリベロを長く務めてきた。1対1に強いといわれる選手を4バックにずらりと並べるところが実に堅実だ。そしてボランチの角田、片岡洋介もDFをこなせるマルチな守備能力を持った選手。この6人がブロックを作れば、東京といえども、簡単にこじ開けられなくなるのも当然だろう。

京都の指導陣である加藤監督、秋田豊ヘッドコーチ、森岡隆三コーチはいずれも現役時代に日本代表DFとして活躍した人物。加藤監督と秋田コーチはハードマーカーとしてならしたし、森岡コーチは頭脳派リベロとしてトルシエ元日本代表監督に重用された。それだけの経験値があるのだから、守りは当然手堅くなる。

森岡に聞くと「今季は昨季より攻撃的に行こうと開幕からやってきたけど、6試合で11失点もしている。そこでこの試合はアウェイというのもあって守備を修正して入った。1点をリードして下がりすぎてしまったのは課題だけど、守りはかなり安定したと思う」と話していた。開幕からボランチに使っていたチエゴがフィットせず、決定的なミスを何度か繰り返していたのをコーチ陣は懸念していたようだ。そこで片岡を入れてバランスを取ったのが功を奏したようだ。

彼らの堅守は後半も見ごたえがあった。東京の城福監督はまず長友佑都を左MFに上げてサイドに起点を作ろうとしたが、これが不発に終わると、今度は売出中の重松健太郎を投入。長友を元の右サイドバックに戻して、中村北斗を左MFに置いた。これでだいぶ動きにメリハリがついてきたが、京都の堅守は変わらない。このまま逃げ切れそうな予感があった。それだけに後半26分に水本が重松にPKを与えたシーンは残念だった。

DFに跳ね返ったボールを奪った重松が強引に突進しようとしたところを水本が止め切れなかったのだ。「水本には責任はなかったが、落ちつきが足りなかった。それが悔やまれるところ」と加藤監督はかばったが、こういうミスがなくならない限り、京都が飛躍することはできないだろう。

この失点の直後、注目の宮吉が柳沢と交代で出てきた。同じ92年生まれの宇佐美貴史(G大阪)と双璧をなす新世代のスターは確かに速さと鋭さを持っていた。が、出場時間が10分程度と短すぎて真の力は見極められなかった。1-1に追いつかれてから攻めをてこ入れしても、なかなか流れは変えられない。この日の京都は素晴らしい堅守に偏りすぎてアグレッシブな一面があまり見られなった。森岡も「守備に入れると攻撃が薄くなる。バランスが難しい」と話していたが、現在の彼らは最良のバランスを見出すのに苦慮しているようだ。

年代別代表経験者にディエゴら多くのタレントを擁しながら、7節終わって勝ち点(というのは、京都にとっては納得できない数字だろう。「万年中堅クラブ」という位置づけから脱するために一体、どうするか。日本代表DFだった3人の指導力がこの先、より一層問われてくる。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

お知らせ

◆FC東京 vs. 京都サンガF.C.
4月19日(月)18:00 J sports 1
4月20日(火)13:00 J sports 1
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