2010年南アフリカワールドカップを半年後に控えて、日本代表のスケジュールが揺れ動いている。日本サッカー協会は当初、1月6日の2011年アジアカップ予選・イエメン戦(サナア)を23日に後倒して主力選手に休養の時間をしっかり与えるとともに、3月3日の同・バーレーン戦(ホーム)を2月2日に前倒しして、数少ない国際Aマッチデーを欧州遠征に充てる考えだった。が、ここへきて2試合ともアジアサッカー連盟の許可が下りず、変更が不可能となった。

これに伴い、2月2日の親善試合の相手を調整していたが、決定に至らず、12月22日予定だった2010年代表日程発表会見も突如としてキャンセルになった。原博実強化担当技術委員長は「ギリギリまで交渉していたが、正式決定できず、発表に間に合わなかった」と説明。イエメン戦と6月初旬の大会直前の強化試合を除き、全て国内で試合をすることが決まった。アウェーに乗り込まなければ、本物の世界基準の相手に揉まれることはできない。岡田ジャパンにとって最悪のシナリオになってしまったといえる。

このマッチメーク問題については次回に詳しく書くことにして、今回はイエメン戦に絞りたい。主力を休養させる必要があることから、岡田監督は若手中心の陣容でチームを構成せざるを得なかった。選出された19人のうち代表常連といえるのは西川周作(大分)だけ。権田修一、米本拓司(ともにFC東京)、村松大輔(湘南)、酒井高徳(新潟)、青木拓矢(大宮)、山村和也(流通経済大)、大迫勇也(鹿島)は19日のU-20日韓戦に出ていた選手たちだ。2006年9月のサナアでの一戦で大苦戦したイエメン相手にこのメンバーで挑むのは勇気のいることだが、指揮官は清水の舞台から飛び降りたようだ。

これまで岡田監督はほぼ固定したメンバーで戦い続けてきた。最終予選の後、多少は新戦力が入ると見られたが、斬新な起用はなし。若手の起用も全く頭になかっただろう。けれども今回、予期せぬ形で飛躍の可能性を秘めた面々をテストする機会に恵まれた。これが、あくまで2014年ブラジルワールドカップの布石なのか、南ア大会のジョーカー探しなのかは難しいところだが、「棚からぼた餅」になることも十分に考えられる。

南ア大会のメンバーに新顔が食い込むとしたら1〜2人が限度だろう。それだけのインパクトと価値がある選手でなければ参入は難しい。今回のメンバーであえて候補者を挙げるとしたら、人材の薄いセンターバックの槙野智章(広島)、吉田麻也(名古屋)、A代表経験のある山田直輝(浦和)と心境著しい米本拓司(FC東京)、小兵FW陣に新たなオプションを加えそうな平山相太(FC東京)、渡辺千真(横浜)あたりではないか。

中澤佑二(横浜)と田中マルクス闘莉王(浦和)に依存するセンターバック問題は、岡田ジャパンにとって最大のアキレス腱と言っていい。特に闘莉王はケガ持ちであることに加え、今季限りで浦和を退団。名古屋に新天地を求めることになった。この選択が成功すればいいが、中村俊輔(セルティック)のような例もある。そんな状況だけに、代役探しは必須といえる。

そこで槙野と吉田に白羽の矢が立ったわけだが、6月の最終予選終盤戦で呼ばれてノーチャンスだった槙野より、吉田の方がチャンスかもしれない。というのも、彼は日本で数少ない190cm近い大型DFだからだ。加えて敏捷性や足元の技術も問題ない。年明けからオランダリーグ1部のVVVフェンロ移籍が有力視されるため、短期間ながら海外経験も積み重ねられる。彼の代表でのプレーぶりには大いに注目したいところだ。

中盤は激戦区で参入は難しいだろうが。今季急成長を遂げた米本とすでに5月のキリンカップ・チリ戦でA代表デビューを果たしている山田の才能は非凡。2人は城福浩監督(現FC東京)率いるU-17代表時代に同じボランチの定位置を争うライバルだった。が、お互いのよさを認め合っている。ともに刺激を与えながら成長していくだろう。もしもイエメン戦で強烈なインパクトを残せば、2人揃ってA代表定着ということも十分あり得る。若い力の爆発的成長に期待したい。

そして平山と渡辺千真の両FWはイエメン戦最大の注目ポイントと言っていい。2人はご存知の通り、国見高校の先輩後輩。ともに回り道してきたが、今季のJリーグで再浮上したのは間違いない。今の代表には彼ら2人のような長身でタメを作るタイプのFWがいない。9月の欧州遠征、10月の代表3連戦でテストされた今季Jリーグ得点王の前田遼一(磐田)も定着しきれなかった。本大会を考えた時、岡崎慎司(清水)ら小兵FWだけで乗り切るのは難しい。前線で体を張れる彼らのような存在が必要なのだ。岡田監督がその重要性を認識できるか。それが気になる。

イエメン戦は「たかがB代表」という目で見ていたらもったいない試合。限られたパイを争う若手のギラギラしたところを見る最高の機会だ。私もイエメンに行って取材するので、また詳報をお届けしたい。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。