この週末は1年半ぶりに韓国へ行った。19日に昌原で行われたU−20日韓戦を見るためだ。釜山から西へ1時間ほど車で行った町・昌原には過去2回訪れたことがあるが、今回はこれまでとスタジアムが違った。このほど完成した「昌原サッカーセンター」は韓国版のJヴィレッジ。メインスタジアムに芝のピッチが4面、雨天練習場、宿泊施設などを兼ね備えた豪華な施設である。ここで2012年ロンドン五輪に向けた韓国五輪代表の初試合が行われるとあって、予想外に多くの観客が訪れた。

試合結果はすでに多くの読者がご存知だろうが、日本は劣勢を強いられながら途中出場の山田直輝(浦和)の2得点で劇的な逆転勝利を挙げた。彼らの世代はちょうど1年前、AFC U-19選手権(サウジアラビア)準々決勝で韓国に0−3の完敗を喫し、日本が95年から7大会続けてきたU−20ワールドカップ連続出場記録を途切れさせている。しかもシュートを2〜3本しか打てず、内容的にもまさに完敗だった。あれから1年が経過した今、米本拓司や権田修一(ともにFC東京)、金崎夢生(大分)ら数人がJリーグで経験を蓄積させたこともあり、実力差は多少なりとも縮まったようだ。現地で視察したFC東京の城福浩監督も「メンタル面の成長が大きい。前向きに捉えていいと思う」と話していた。

それでも、やはり個の力では相手の方が上回っていたのは事実。年明けからセルティックに移籍するエース・奇誠庸(FCソウル)らを筆頭に高さ、強さ、技術、創造性を備えた選手がズラリ並ぶのを見ると、日本サッカーの未来に少なからず一抹の不安を抱かざるを得なかった。

この試合以上に興味深かったのが、前座で行われたU−14日韓戦である。JFAエリートプログラムの一環で選ばれた14歳以下の選手たちがこの試合に挑み、韓国に4−2で敗れたのだが、内容的にはU−20年代とは比較にならないほどのはるかに大きな差があった。韓国は7〜8点取っていてもおかしくないくらい強かったのだ。

日本チームの指揮を執った足達勇輔監督(日本サッカー協会ナショナルコーチングスタッフ)によれば、「韓国選手のフィジカル能力レベルは日本で言うと高校2年生くらい」という。両チームの選手たちが指相撲をしたら、日本の選手は誰一人勝てなかったという。韓国はそれだけフィジカルを重視した選手選考をしている。

彼らはこのU−14日韓戦に向けて、10日以上前から合宿を行っていた。最初は90人を呼び、パフォーマンスを見ながら60人、30人と絞り込んでいく。子供とはいえ、落とされたくない選手側は必死のサバイバルを繰り広げる。その結果、残った20数人がこの日本戦に出場していた。選び抜かれたフィジカルエリートのスピード、強さ、高さ、パワーは間違いなく高かった。しかも2002年ワールドカップでヒディング監督率いる韓国代表が成功した影響が色濃く残っているのか、オランダスタイルに当てはまる選手を選んでいるようだった。例えばセンターバックは長身で1対1が強いこと、ボランチは展開力があること、両ウイングはスピードと突破力で際立っていること、センターFWは長身でタメを作れるタイプであることなどだ。U−20世代を見ても各ポジションの選手は特徴が似ている。彼らの目指す方向は明確なのだろう。

一方の日本は「15歳までは強化と位置づけていない」(足達氏)という。裾野を広げるため、できるだけ多くの有望な選手を召集する。練習ではフィジカル強化や特別な競争意識を煽ることをせず、試合中も選手同士で気づいて考えるように仕向けているようだ。選手選考もフィジカル偏重になりすぎないようにしている。大型選手を呼ぶと、日本らしい攻守の切り替えと豊富な運動量、スムーズなパス回しができなくなる傾向が強いためだ。韓国とは明らかに考え方が違うようだ。今回は高円宮杯全日本ユース(U−15)と日程が重なったためJFAアカデミー福島や浦和レッズジュニアユース、横浜F・マリノスジュニアユース追浜など有力チームの選手を呼べず、3〜4割の陣容しか揃えられなかった。そういう中で4−2という結果は日本にしてみればまずまずだったのかもしれない。

韓国と日本の育成システムの違いは面白い。足達氏は「日本協会は韓国、フランス、スペインなどの情報を逐一入れて、いいところを取り入れようとしている」と話すが、韓国のようなフィジカルアスリートを選ぶという方法はまだ実践していない。が、近年の日韓の個人能力の違いを見ると、そういう選手選びも必要なのかもしれない。この14歳の選手たち、日韓サッカーの実力差が数年後にどうなっているかが大いに気になる。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。