柏レイソルの4年ぶりのJ2降格が現実になった先週末のJ1第33節。終盤になってフランサや澤昌克が復活し、深刻な課題だった得点力不足が解消されたかに見えたが、28日の大宮アルディージャとの直接対決に勝ちきることができなかった。

改めて振り返ると、昨季天皇杯でチームを準優勝に導いた石崎信弘監督(現札幌)との契約を打ち切り、Jリーグ監督経験のない高橋真一郎監督を据えたところからボタンの掛け違いが始まった。手堅い守りをモットーとする石崎監督と、守備をしつつも自ら仕掛けるアクションサッカーを標榜する高橋監督では、基本コンセプトが違った。新指揮官のやり方が浸透しなかった今季序盤は大量失点を繰り返し、勝利という結果がついてこなかった。7月にネルシーニョ現監督が就任してからはパク・ドンヒョクの補強などもあって守りは落ち着いたものの、攻め手を見出せない試合が続く。助っ人のアンセウモ・ハモンらも全く使えない。若い大津祐樹らが成長したにもかかわらず、降格という憂き目にあったのは、フロントの後手後手な対応が最大の要因だろう。現状戦力を残せれば1年でJ1復帰もありえるが、かつての名門は2度目の降格でどうなってしまうのか。千葉からJ1クラブがなくなったのも非常に残念である。

一方、J1優勝争いの方は鹿島アントラーズ、川崎フロンターレの2チームに絞られ、最終節決着となった。私は28日の鹿島対ガンバ大阪戦に足を運んだが、鹿島の勝負強さを改めて痛感した。

中でも目を引いたのが、小笠原満男の守備力と戦術眼だ。他メディアでも取り上げられているように、興梠慎三の先制点の起点を作ったのが彼のボール奪取である。前半25分すぎからG大阪はペドロ・ジュニオールがタメを作ることで攻撃リズムをつかみつつあった。彼にボールが入ると、ルーカス、佐々木勇人、二川孝広らが一気に相手守備陣の背後に飛び出す。あの場面ももしペドロが反転してゴール前に突進していたら、カウンターから1点が入る絶好のチャンスになっていた。そこで小笠原が巧みに寄せ、体当たり気味にボールを奪い、興梠へ絶妙のタテパスを出したのだ。

左ひざじん帯断裂の重症から復帰した今季初め、小笠原は「今の自分は得点を狙っているわけじゃない。ボランチだし、攻守の切り替えでガッチリいってボールを奪ったら一気に行ければいいから。最近は『守備の快感』が出てきたね」と笑っていた。そんな話をするほど「守りの重要性」が染みついているのだ。その原点が2006年ドイツワールドカップ直後に移籍したイタリア・メッシーナ時代である。日本では相手を止めて、プレーを遅らせるのが守備だが、向こうではボールを奪わなければ認められない。「それができなかったから自分は試合に出られなかった」と彼は哲学の違いを痛感したという。その悔しさを忘れず、Jのピッチで実践し続けているからこそ、この大一番で試合を決めるワンプレーが出た。

5日の浦和レッズ戦に勝てば、J史上初の3連覇が決まる。2007年は夏までイタリアにいて半分しか参戦せず、2008年も負傷で後半戦を戦えなかった小笠原がようやくMVP受賞資格を得られることになる。この3年間の貢献度、チームへの影響力を見れば、彼はMVPに十分該当する選手であろう。これまでそういう陽の目を見てこなかった男がスターダムに立てるかどうかは次戦次第だ。

そんな小笠原のMVPを巡るライバルになりそうなのが、中村憲剛だろう。もしも最終節で鹿島が浦和にとりこぼし、川崎が柏に勝てば川崎が悲願の逆転優勝を果たす。そうなれば俄然、中村憲剛の存在がクローズアップされてくる。今季の川崎はアジアチャンピオンズリーグ(ACL)8強入り、ナビスコカップ準優勝と総合戦績では鹿島より上。憲剛自身もAFCのMVP候補にノミネートされている。しかも岡田ジャパンでの活躍も目覚しい。今年2月の最終予選・オーストラリア戦(横浜)ではベンチ外の屈辱を味わったが、その後信頼を取り戻し、6月のウズベキスタン戦(タシケント)では岡崎慎司(清水)の決勝点をアシストする鋭いパスを送った。9月の欧州遠征でも頭を使ってフィジカル差を感じさせないプレーを見せるなど、彼のこの1年の飛躍は目覚しいものがある。

実際、川崎がここまで全ての大会で上位進出できるのも、憲剛の司令塔としての役割が際立っているから。前線の鄭大世やジュニーニョを生かすも殺すも彼のパスワーク次第というところは大だ。J初戴冠という結果があれば、憲剛のMVPの確率は非常に高くなるはずだ。

小笠原と憲剛。私自身はどちらも大好きな選手である。が、個人的には岡田武史監督に冷遇されている小笠原に花を持たせてやりたい気もするのだが…。MVPの行方も含めて、5日の最終節が待ち遠しい。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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