瀬沼優司を覚えているだろうか?

桐光学園高校を昨年卒業した大型ストライカーで、ユース代表にも選ばれた期待の選手だったが、全国高校サッカー選手権大会では桐光学園が1回戦で敗れてしまったこともあって、準優勝した鹿児島城西高校の大迫勇也ほど脚光を浴びなかった。さらに、大迫は高校卒業後鹿島アントラーズに入団。シーズン開幕とともにトップチームデビューを果たした。

一方、瀬沼の方は、筑波大学に入学して、一部の大学サッカーファンを除いて、大きな注目を集めることもなくプレーしているが、最近の成長ぶりには目を見張らせるものがある。筑波大学の監督は、あの風間八宏氏だ。解説者としても有名だが、独自の育成理論を持った指導者で、選手の個の能力を伸ばすことを第一に考えている。

その甲斐あってか、筑波大学は関東大学リーグでも前期とは見違えるような良質のサッカーをしている。もっとも、3点リードしながらも退場で1人少なくなった中央大学に追いつかれて引き分けたり、強豪明治大学に善戦しながらも、85分にCKから失点して惜敗したりと、守備力に問題がありまだ結果は出ていないが、その進歩は著しい。昨年も、同じように後期になってから急成長して、最後は全日本大学選手権で準優勝しており、やはり風間氏の指導力は注目すべきものがある。

瀬沼も、その筑波大学の一員として、進境著しいものがあるのである。

まず、184センチの身長の割りに動きがスムースな点が注目される。体の大きな選手の場合、とくに若いうちは自分の体を自由に操るだけの筋力が足りずに、体を持て余してしまうことがよくあるが、瀬沼はバランスも良く、相手DFの横をすり抜けていくような動きが良い。体を当てられても、その大きな体を生かしてしっかり相手をブロックして抜け出すだけの強さをそなえているのだ。そして、ドリブルのスピードもある。DFを背後に背負って、くさびのボールを受けて、相手をブロックしながらターンして突進と、ストライカーとして美しいプレーができる。

また、相手のDFの裏やサイドのスペースを見つけて、うまく入り込むクレバーさも持っている。そして、特筆したいのは、そうしてスペースに入る動きを味方のパサーに見せるのがうまいことだ。「このスペースにボールがほしい」ということを、体の動きや身振りでうまくパサーに伝えることができるから、いいタイミングでパスを引き出せるのだ。

まだまだ、相手をかわした後、シュートに入るタイミングが遅れることも多いし、ターゲットとしてすばらしいプレーを見せているといっても、大学リーグの場合、DFの守備能力に問題があるという面も指摘しておかなくてはいけないが、それでも、やはり瀬沼の今後の成長は楽しみである。高校出で、大学に入って1年目はすばらしいプレーで輝いているが、その後伸び悩む選手も多い。瀬沼にはこれからも着実に成長していってもらいたいものだ。

その瀬沼以外にも、注目の選手は何人もいる。

慶応大学の中町公祐も注目の選手だろう。湘南ベルマーレでJ2リーグ出場66試合という実績を持っており、当然、大学リーグでは格の違いを見せるプレーメーカーである。春にもこのコラムで書いたように、慶応大学はすばらしいパスサッカーを見せるチームだが、後期のスタートでは躓いた感がある。ようやく、再開3節目の第14節で東海大学相手に4−0と大勝。パスをつないで崩していく本来の形ができ始めたところだ。

その中心にいる中町。ともすれば、サボる癖もあって(それがなければ、今でもJリーグでプレーしているはず)、評価の難しい選手ではあったが、後期に入って、そのサボり癖もかなり解消し、パスを出した後もしっかり足を止めないで動けるようになっている。

たまたま、瀬沼と中町を取り上げてみたが、その他にも好選手はそろっている。今シーズンは2部にいて、現在首位を独走中の順天堂大学に在籍中の田中順也などは、強化指定選手として柏レイソルに登録されて活躍しており、今では関東大学2部よりもJ1の舞台に活動の場を移してしまった感すらある。

大学サッカーにもぜひご注目を!

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授