毎年夏の風物詩である全日本少年サッカー大会の準決勝と決勝を7〜8日、東京・西が丘サッカー場まで見に行った。ジュニア年代を見る機会が少ないので、この大会は貴重なチャンスなのだ。

近年は東京ヴェルディや横浜F・マリノスなどJリーグの下部組織が優勝することが多いが、今回もタイトルを獲ったのは名古屋グランパスU12。決勝で先制点を挙げたFWの杉森考起君、2点目を奪った10番の森晃太君らは、ボールタッチや視野の広さ、ボディバランス、戦術眼などあらゆる面で優れており、とても小学6年生には思えなかった。

名古屋の森川誠一監督によれば、「現在の名古屋のジュニアは小学4年からしか入れないが、このチームは1年生からいる子が多い」とのこと。練習は平日3日と土日の週5日間で、近隣の子供中心に集めているというが、それでも徹底した一貫指導をしているのは間違いない。彼らの際立ったタレント力は一目見ればすぐに分かる。

「練習内容はほとんど攻撃。ただ、サッカーはトータルなものなので、攻守のバランスを考えながら指導しています。サッカー選手にとって一番大事なのは基本技術。力任せにやってもファウルになってしまう。1対1にしても技術なんだと子供たちには言い聞かせている」と森川監督はとにかくテクニック指向の高い指導をしているという。この方向性が杉森君らのような頭抜けた存在を育てたといっていい。

一方、準優勝した新座片山FCは名古屋の対極にいるチームだった。Jクラブと違い、このクラブは地元の小学生だけで構成される。選手は全員坊主頭。テクニカルエリアで竹下司監督がさかんに「走れ〜」「行け〜」と鼓舞する。決勝・名古屋戦では相手の強さを警戒しすぎて引きすぎてしまったが、準決勝・横河武蔵野FC戦では圧倒的な運動量と球際の強さで相手に自由を与えなかった。

生まれながらにして身体能力が高く、技術レベルも抜きん出ている選手に勝つために、川原嘉雄代表は「泥臭く走ってボールを追う」というスタイルを貫いている。

「選ばれた子供たちと互角に戦うためには、3〜4倍は練習しなければいけない。ボールを取られたら取り返すのは当たり前。強い気持ちでやらなければ意味がない。そのためにもメンタルを強くする必要がある。一番大事なのはいかに親御さんから引き離すか。今の子供はそこが難しい」と川原氏は強調する。鍛え抜かれた選手たちの逞しさ、貪欲さは凄まじいものがあった。

ジュニア時代のアプローチ方法は、指導者の考え方によって大きく異なる。名古屋のように整った環境で小学校低学年の頃からサッカーに必要な技術や戦術眼を養う方法もあるだろうし、新座片山のように昔ながらの土のグランドで徹底的にボールに食らいつく姿勢を身につけることもあっていい。

準決勝を視察していた日本サッカー協会ユースダイレクターの布啓一郎氏(現U−18日本代表監督)は「一番大事なのは選手の将来。先々の伸びしろを大きくするやり方を指導者は考えていかなければならない」と指摘していたが、どちらのアプローチが本当に優れた選手を作るのか。これは非常に興味深い。10年後に杉森君や森君が名古屋のトップを担う人材になっていれば大成功だろう。新座片山にしても過去にはJリーガー5〜6人は送り出しているが、まだ日本代表選手は出ていない。川原代表が「代表選手を出さないとクラブとして評価されない」と話すように、10年後にここで戦ったメンバーから日の丸を背負う人材が出てくれば、この泥臭いサッカースタイルも成功だったといえる。協会も我々メディアも、彼らがどうなっていくのかを見続けていくことが肝要だろう。

もう1つ、この大会を見て気づいたことがある。シュート意識の物足りなさだ。

テクニックに優れた名古屋や川崎の選手はペナルティエリアに入ってもパス回しをすることが多く、打てる場面を逃しているシーンが目立った。森川監督は「ペナルティエリア内に入ったら全てシュートというのは間違い。その中のプレーに意図があればいい。パスを出して相手をかわすのも1つの崩し方。遊び心がないとヨーロッパや南米には追いつかない」と説明していた。この考えも確かに一理ある。しかし、彼らはまだ子供なのだから、第一にゴールを狙わせることが必要ではないだろうか。そうしなければ、年齢を重ねて、より難しい状況に直面した時、シュートを打てる選手にはならないだろう。

日本サッカー界の決定力不足を解消するためにも、子供にはシュート意識を強く強く植えつける必要がある。指導者によってサッカー哲学はさまざまだろうが、10年後の日本サッカーの飛躍を考え、ぜひともこのテーマにはより力を入れてのぞんでほしい。

photo

元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

お知らせ


★遂に09/10イングランド・プレミアリーグが開幕する!!
J SPORTSでは開幕節全試合を無料放送いたします!

第1節
チェルシー vs. ハルシティ
8月15日(土)20:39〜 J sports Plus

エバートン vs. アーセナル
8月15日(土)25:24〜 J sports 2

マンチェスターU vs. バーミンガム
8月16日(日)21:24〜 J sports Plus

トッテナム vs. リバプール
8月16日(日)23:54〜 J sports Plus

>>全試合の対戦カードはこちらから
>>詳しい放送予定


※プレミアリーグ開幕節勝敗予想キャンペーンも実施中!
全10試合の勝敗予想を的中させて豪華プレゼントをゲットしよう!
>>応募はこちらから