13日の親善試合・シリア戦(神戸)と19日の2010年南アフリカワールドカップアジア最終予選第3戦・カタール戦(ドーハ)のメンバー25人が6日に発表された。10月のウズベキスタン戦(埼玉)で若手重用を批判された岡田武史監督だったが、自らがA代表に引っ張った香川真司(C大阪)への信頼はとにかく厚いようだ。今回ももちろんメンバーに入れ、カタールとの大一番でも重要な戦力として考えている模様だ。

その香川だが、今季は3世代の代表の掛け持ちを余儀なくされた。3月のU-23代表のアンゴラ戦に召集されたのを皮切りに、超多忙の日々が始まった。4月のA代表合宿で指揮官に認められ、5月のコートジボワール戦(豊田)でA代表デビュー。6月の3次予選・タイ戦(バンコク)では中村俊輔(セルティック)や松井大輔(サンテティエンヌ)らとともにスタメンで試合に出場し、約1ヶ月間岡田ジャパンに帯同した。

その後、いったんは所属クラブに戻るものの、7月には北京五輪代表に選ばれ、本大会に出場。チームに適応する時間が短かったせいか、残念ながらこのチームでは思うような活躍ができなかった。これを境に夏場はJ2での戦いに専念していたが、10月には再びA代表に復帰。UAE戦(新潟)に出場し、Aマッチ初ゴールを奪う。そこの活躍が指揮官に認められ、ウズベキスタン戦では松井の定位置である左MFで先発した。

これで代表の活動も一段落かと思いきや、10月末からはU-19日本代表の一員としてサウジアラビアへ移動。AFCユース選手権1次リーグ突破の切り札として牧内辰也監督に重用された。彼は2試合に出場。サウジアラビア戦では水沼宏太(横浜)のゴールをアシストするなど、圧倒的な存在感を示したようだ。

牧内ジャパンはグループを1位通過。8日にFIFA U-20ワールドカップ8大会連続出場を賭けて準々決勝・韓国戦を迎えた。ところが、香川はその大一番を前に帰国。来週から始まるA代表合宿に備えることになった。大黒柱を欠き、さらに攻撃に変化をつけられる金崎夢生(大分)が不在だった日本は、宿敵に0-3で完敗。大事な世界経験の場を逃した。もともとこのチームは世界切符獲得が危惧されていたが、韓国には圧倒的な実力差を示されたという。U-20ワールドカップは日本の若年層にとって、数少ない世界トップとの真剣勝負の場。その重要な舞台を失い、帰国した香川はこの結果をどう聞いただろうか。日本サッカー協会の判断は本当に正しかったのか…。何とも中途半端な結末といえる。

そんなどっちつかずの香川を見ていると、10年前の小野伸二(ボーフム)や市川大祐(清水)を思い出す。小野も市川も3世代代表として身を粉にしてプレーした。その結果、小野は99年7月のシドニー五輪アジア1次予選・日本ラウンド最終戦のフィリピン戦で左ひざじん帯断裂の重症を負い、長期離脱を強いられる。そこから彼は紆余曲折を経てフェイエノールト時代には01-02シーズンUEFAカップ優勝という成功を収めるものの、それ以外はケガを頻発。本人も99年の負傷を悔やんでいるようだ。市川にしても99年2月にオーバートレーニング症候群にかかり、長期離脱を強いられた。それによって、99年ワールドユース、2000年シドニー五輪を棒に振ることになる。2002年日韓ワールドカップは何とか間に合ったもの、その後は「市川がいれば10年は大丈夫」といわれた10代後半の輝きを取り戻せずにいる。

香川にしても、現在の過密日程が何らかの悪影響を及ぼさないとも限らないのだ。岡田監督、五輪代表の反町康治監督、ユース代表の牧内監督、そしてセレッソのレヴィー・クルピ監督と全ての指導者に認められるだけのパフォーマンスを今の彼は見せている。が、今後のコンディションが心配だ。市川のようなオーバートレーニング症候群に陥らないとも限らない。すでにそういう前歴があるのだから、日本サッカー協会とJリーグは香川の使い方を真剣に模索する必要があるだろう。

年代別代表はA代表より序列が低くて当たり前だし、Jリーグの重要な試合より下に位置づけられるのも仕方ない面はある。現状ではケースバイケースで考えていくしかないが、欧州の強国のように「A代表に入った選手は年代別代表には呼ばない」とハッキリ決める手もある。そうすれば、選手自身も妙な不完全燃焼感を持たないだろうし、使う側の指揮官も明確なチーム作りの方針を持てる。それも一案ではあるだろう。

いずれにしても、せっかく頭角を現してきた香川のような優れたタレントをつぶさないことが最重要テーマだ。それを関係者がもっと真剣に考えるべきだ。彼が壊れてしまってからでは遅いのだから…。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。