(c)Yuzuru SUNADA
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数日間続いた“スペインらしからぬ”寒さから抜け出して、久しぶりに気温は30度まで上昇。こんな汗ばむ陽気の中、アストゥリアスの山岳地帯からいち早く抜け出そうと、プロトンは超高速のスタートを切った。スタート直後30分の平均時速はなんと50km!だ。

まるでタイムトライアル並みのスピードで走るプロトンは、ほんの10km走っただけで真っ二つに分断してしまった。軽い下りだったせいで、両グループのタイム差はあっという間に1分にまで開がる。後方グループに取り残された選手たちは必死の追い上げを試みるが、アタック合戦が巻き起こり、どんどん加速する第1グループになかなか追いつくことが出来ない。ただし幸いにも35km過ぎに15人の逃げが決まったため、第1メイングループは急激に減速。2つの大きなグループはひとつになり、逃げ集団と後方メインプロトンの構図が出来上がった。

直後に2選手が追いついて17人に膨れ上がった逃げ集団は、減速したプロトンからあっという間に大量のリードを奪った。しかも後方は全く追走の動きを見せないため、50km地点で5分→100km地点で9分半→150km地点で15分半とタイム差は広がる一方だ。まさに後方集団から大逃げ勝利の許可をもらったも同然。すると早速、大エスケープ内での区間勝利争いを心配したのか、ホセルイス・アリエッタ(アージェードゥゼール・ラ・モンディアル)は75km地点でアタックを打った。さすがにこのアタックはたちまち逃げ仲間に吸収されたが、さらに138km地点、そして160km地点と合計3度も飛び出しを仕掛けた。ついに最後の単独アタックでは後方を大きく引き離し、ゴール地ポンフェラーダをぐるりと回る最終周回コースへも先頭で突入する。

ところが1分差まで開いたところで、あわてた16人が猛烈な追走を開始。急速な加速についていけず千切れていく選手も当然出てきたが、脚に力を残す者たちは残り16kmで無事にアリエッタを捕まえた。そしてこの日最後の難関、非常に短いながらも最大斜度15%の激坂ロンビーリョでフアンマヌエル・ガラーテ(クイックステップ)が前に出る。ここにダビ・アローヨ(ケースデパーニュ)、ニック・ナイエンス(コフィディス・ル クレディ パール テレフォン)が追い抜き、第14ステージにもやはり大逃げを打ったダビ・ガルシア(シャコベオ ガリシア)も加わった。

わずか10秒ほど背後に他の選手たちが追いかけてくる緊張感を味わいながら、最終10kmの勝負に入った4選手。ナイエンスが幾度も幾度もライバルを出し抜こうと試みるが、クラシック強者の飛び出しを他の3選手は許そうとしない。ところがゴール前3kmのアーチでガルシアが急激にスピードアップを試みると、あっさり3選手は見逃してしまう。それどころか2005年スペインチャンピオンのガラーテとケースデパーニュ屈指のクライマーであるアローヨ、そしてナイエンスは互いに睨み合うばかり。そして今年のトルコツアーで総合優勝を果たす前は無名に近かったガルシアは、3人の実力者の牽制を利用して一気にゴールラインまで先頭で駆け抜けた。

9月末に31歳の誕生日を迎えるガルシアにとってはもちろん、前日にチームリーダーのエセキエル・モスケーラがアスタナの戦術に翻弄されて悔しい思いをしていたチームにとっては、嬉しいグランツール初勝利。しかも前夜には2010年聖ヤコブ年(ヤコブ=スペイン語でシャコベア)PRの目的でスポンサーについていたガリシア自治体が、スポンサー契約の延長を発表していた。昨年ガリシア地方初のプロチームとして創設されたばかりのシャコベオ ガリシアは、二重の喜びに包まれている。またガルシアは前日の総合23位から13位に大きく総合順位をアップした。

メインプロトン内ではアルベルト・コンタドール(アスタナ)が軽い落車でレース中に治療を受ける心配な場面も見られた。ただし大きな問題もなく、マイヨ・オロは無事に集団復帰。チームメイトたちに守られて、14分23秒遅れでゴールに到着している。


●ダビ・ガルシア(シャコベオ ガリシア)
ステージ優勝

今年は本当に素晴らしい年になった。シーズン前にはなにかステージレースで勝利を挙げたいと考えていたんだ。この目標はトルコツアー総合優勝で達成することが出来た。でもブエルタのようなグランツールのステージ優勝を挙げることが出来るなんて、夢さえ見ていなかった。しかも総合でも15位以内にジャンプアップできた。グランツールの上位15位に入れるなんて、これはまさしく快挙だね。

エスケープに乗った瞬間から、ステージ優勝のことを考えていた。昨日も逃げに乗ったけれど、最終盤で吸収されてしまった。でも昨日も調子がすごく良かったし、体力もあったんだ。そして今日もスタート直後から同じ力を感じていた。これまでは勝利を手に入れるための、ほんのわずかな幸運が足りなかったんだね。

昨日スポンサーが存続を発表したから、この勝利はガリシアへの大きなプレゼントになったよ。この勝利が、地元の人々が自転車競技を愛し続けてくれるきっかけになって欲しいと思っている。現在、徐々に人気が高まりつつあるガリシア地方の自転車界にとっては非常に大切な勝利だよ。

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宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

お知らせ

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