(c)Yuzuru SUNADA
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なんともスペインらしい青空が、プロトンの頭上に広がった。2日連続の山頂フィニッシュとは言っても、前日の恐ろしいアングリルステージと比べればこの日は距離が50kmも短く、もちろん峠の斜度も緩やか。ただしアングリルから生還した151人の選手はのんびり太陽を満喫するわけではなかった。大逃げ優勝の可能性も狙って、多くの選手が序盤からアタックを繰り返した。

12km地点に登場した最初の3級山岳。この下りで飛び出しを成功させた5選手が、この日、徐々に大きくなっていくエスケープ集団の基盤となる。この5人に20km地点で1人、続いて25km地点でもう1人、さらに35km地点で3人が追いつく。合計10人まで増えたところで、本日のエスケープ集団は完成した。

10人はしばらく4分程度のタイム差をメインプロトンと保ちながら、最後から2番目の――しかしゴールには60kmとまだまだ遠い――1級コラディエリャ峠まで順調に逃げを続けた。ちなみに2番目の山から5番目のコラディエリャまで、全て山頂を先頭通過したのはシルヴァン・シャヴァネル(コフィディス・ル クレディ パール テレフォン)だ。第6ステージ後にマイヨ・オロを獲得したシャヴァネルが、チームメイト、ダヴィ・モンクティエの山岳ジャージへのナイスアシスト。ちなみにモンクティエは1番目の峠で1位通過を果たし、最終ゴール地でもポイントを重ね、マドリードへの山岳賞獲得への地位固めを着実にこなしている。

協力しあって逃げてきた10人が一気にはじけたのは、ブエルタ初登場のゴール地フエンテス・デ・インビエルノ・スキー場へ向けて、道が緩やかに登り始めた頃だった。後方では前日アングリル区間2位でタイムを取り戻し、表彰台の夢が再び膨らんだアレハンドロ・バルベルデ率いるケースデパーニュが、プロトンのスピードを増していた。タイム差は加速度的に縮まって行く。するとシャヴァネルが大きく加速。先頭集団内のイバン・マヨス(シャコベオ ガルシア)、マールティン・ヴェリトス(チームミルラム)、ユルゲン・ヴァンホーレン(チーム CSC サクソバンク)も後に続く。さらに残り16km地点ではヴァンホーレンがひとり前に飛び出すと、最終峠への14kmの登りへと先頭で突入して行った。

ただし間もなくすると、ヴァンホーレンは戦いの主役を表彰台争いの選手たちに譲らざるを得なくなった。なにしろ小さくなったメイン集団内では、地元アストゥリアス地方出身のエセキエル・モスケーラ(シャコベオ ガルシア)が、地元ステージ優勝と総合順位アップを目指して積極的な攻めを開始していたのだ。モスケーラの急激な加速は、ラスト5km地点で“総合上位5人集団”を作り上げた。モスケーラのさらなるもう一押しは総合5位バルベルデをはじき出した。直後には総合3位カルロス・サストレ(チーム CSC サクソバンク)も、まるでブレーキがかかったように後ろに取り残されてしまった。

スキー場ゴール地へ向かって、総合4位モスケーラ、マイヨ・オロのアルベルト・コンタドール(アスタナ)、そして総合2位リーヴァイ・ライプハイマー(アスタナ)が先頭で登って行く。3人はこの順番のまま、まったく先頭交代することなく走り続けた。「ボクは攻撃して総合首位に立った。今後はマイヨ・オロの守備に回る」と語っていたコンタドールは、サストレを逆転して表彰台に登りたいモスケーラのタイム稼ぎに非情にも協力しようとはしない。「だって3人の中で最もタイム差を開く必要があったのはモスケーラなんだから」、と。

ところでアスタナの当初の戦術も、サストレとバルベルデからタイム差を出来る限り稼ぐことだった。しかし残り1.5km、コンタドールはまるで弾丸のように飛び出した。なんでもチームカーと無線で話し合った結果、「こうなったら、2日連続で優勝を狙うのもいいんじゃないか?」との結論が導き出されたそうなのだ。そして瞬く間に2人を置き去りにすると、あっという間にゴールラインへ先頭でたどり着いた。現場で様子を見守っているジャーナリストたちの口から「まるでアームストロング」との声が上がった、まさに“ノーギフト”の精神!

地元勝利の夢を逃したモスケーラは、ゴール前でライプハイマーにも追い抜かれ、結局3位でステージを終えた。ボーナスタイムは8秒獲得している。後方のサストレは、やはり総合順位をひとつでも上げたいロベルト・ヘーシンク(ラボバンク)の最終盤の踏ん張りを利用して、コンタドールから20秒遅れでゴール。被害を最小限に食い止めた。モンクティエも同タイムで到着、バルベルデはさらに40秒遅れてゴールラインにたどり着いた。

マドリードまで1週間を残して、今ツール総合勝者のサストレは総合3位の座を守り切った。モスケーラは表彰台まで未だ54秒足りず総合4位のまま。奮闘したヘーシンクは総合5位の座をバルベルデから奪い取った。そしてもちろんマイヨ・オロのコンタドールは3位サストレとの差を3分01秒から3分41秒へとさらに開くことに成功。チームメイトのライプ・ハイマーもサストレとの差を2分24秒に開き、マドリードでコンタドールの横に並ぶべく、確実に総合2位の座を固めつつある。


●アルベルト・コンタドール(アスタナ)
ステージ優勝、総合首位

ボク自身はライバルたちからタイムを開くことを考えていたんだ。モスケーラも表彰台入りを狙うために、ボク以上にタイム差を取りに行かなくてはならなかったはずだ。でも最後になってボクはチームカーと話して、ステージ連覇のいい機会なんじゃないかと考えた。だから取りに行ったんだ。もしモスケーラが腹を立てているのだとしても、そんなに怒る必要はないと思う。だってライバルからタイムを奪いたいという目標は達成されたんだからね。それにタイム差を開く必要があったのはモスケーラなんだから。ボクらじゃないんだ。それに誰もがステージ優勝は欲しいのさ。

これからの1週間は、冷静にレースをコントロールしていかなければならない。確かに他の選手たちとはかなりのタイム差が開いているけれど、たとえタイム差が大きくとも慎重に走らなければならない。ボクの総合勝利確定、などと思ってはならない。まだ1週間残っている。マドリードのゴールラインを越えるまで、注意深く走らなければならない。


●アレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)

ボクらはステージ優勝を取りに行った。ケースデパーニュのチームメイトにはお礼を言いたい。彼らは1日中素晴らしい仕事を成し遂げてくれた。ボクを信頼してくれた。彼らにブエルタ2勝目を捧げることができたらよかったんだけどな。でもモスケーラの強いてくるリズムはものすごく速かったから、ボクは体調が良かったにも関わらずついていくことが出来なかった。今朝はステージ優勝と表彰台の可能性を考えながらスタートを切った。でも両方とも不可能だった。

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宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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