(c)Yuzuru SUNADA
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ランス・アームストロングの正式復帰宣言とツール8勝目獲得宣言で、自転車界全体が大騒ぎとなった。ツール開催委員長クリスティアン・プリュドム氏は「全てのチームと選手はルールを遵守する必要がある。彼がルールを遵守すれば、もしかしたらツールのグランデパール地に立っているかもしれないね」と発言。受け入れチームになるのでは?と予測されるアスタナの現リーダー、アルベルト・コンタドールは「今はブエルタに集中したい」と言いながらも、「もちろん、ボクはアームストロングをチームに歓迎するよ」と言葉を続けた。

大騒ぎの一方で、レースのほうはステージ最序盤と最終盤で目まぐるしく展開が移り変わった以外は典型的な平地移動ステージとなった。一部スペインメディアはアレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)が「ひざを痛めており、もしかしてリタイアするのでは!?」とざわついたが、チーム監督が噂を完全否定。実際のところ、バルベルデは第10ステージ中に少しひざの痛みを感じたそうだが、翌朝には痛みは消えていたそうだ。

ステージ最序盤の目まぐるしいアタック合戦では、トム・ボーネン(クイックステップ)やステファン・シューマッハー(ゲロルシュタイナー)、ヤロスラフ・ポポヴィッチ(サイレンス・ロット)という有名選手が飛び出す一幕も。小さな分断のせいでマイヨ・オロのエゴイ・マルチネスデエステバン(エウスカルテル・エウスカディ)が26人の前方集団に入ったときは、さすがにアスタナが猛加速してプロトン再合流に力を尽くした。そして33km地点で3選手が飛び出しを決めると、プロトン内に静かな時間がやってきた。

セラフィン・マルティネス(シャコベオ ガルシア)、ホセアントニオ・ロペス(アンダルシア・カハスール)、アンドレー・グリブコ(チーム ミルラム)の3人は、50km地点で早くも7分差をつける。ただし、ステージ勝利を目指すリクイガスやランプレ、ラボバンク、さらにマイヨ・オロ擁するエウスカルテルが後方でスピードコントロールを始めたため、その後はゆっくりとタイム差は小さくなって行く。

強風のせいで時に一列棒状になって走ったメイン集団は、残り15km地点で前方3人まで1分30秒差に迫った。さらに世界選手権ジャージを身にまとうパオロ・ベッティーニ(クイックステップ)がプロトン前方で驚異的な引きを見せると、逃げ集団との差は加速度的に縮まっていく。ゴール前7km地点で3人を回収したプロトン内では予想通りアタックの試みも巻き起こったが、これは前日のゴール前同様クイックステップトレインが上手に鎮めた。ラスト3kmでは再びベッティーニが先頭に立つと、またしても恐ろしい加速でトレインを先導。クイックステップの選手たちは最終カーブを抜ける地点まで献身的な働きを見せ、そしてチームリーダーのトム・ボーネンが最終ストレートで発射された。

ラスト1kmから少々混乱状態となった前日とは違って、この日のボーネンはほぼパーフェクトなゴールスプリントが切れたかに思えた。・・・しかしボーネンの背後に最後まで潜んでいたオスカル・フレイレ(ラボバンク)のほうが、さらにパーフェクトなスプリントを切ったようだ。ゴール直前で飛び出すと、そのままホイール半分の差をつけてゴールラインをトップ通過。スペイン選手による総合争いに注目が集まる今ブエルタで、ようやく2人目のスペイン人区間勝利を手に入れた。また大会序盤には「調子がまだ上がっていない」と告白していたフレイレだが、世界選手権での4つ目の勝利へ向けて万全に仕上がりつつあることをアピールして見せた。

地元から程近いゴール地には家族が応援に駆けつけており、フレイレは息子のマルコス君と一緒に表彰台に上がった。ちなみに第12ステージのゴール地は、さらに距離が近づいてフレイレの地元から10km圏内だ。ただし地元の道を知り尽くしているフレイレの分析によると、「明日のステージは難しいよ。バルベルデやベッティーニにとって理想的なゴールプロフィール」なんだとか。

またマルチネスデエステバンのゴールドジャージ表彰台には、チームメイトの五輪ゴールドメダリスト、サムエル・サンチェスが飛び入り参加。オレンジ色がトレードマークのエウスカルテルチームの2人は、2つの“金”を互いに喜び合った。


●オスカル・フレイレ(ラボバンク)
ステージ優勝

今日のスプリントは非常にスピードが上がったね。ボクはいいポジションにつけられたし、フレチャとオリーリョが前に導いてくれた。それからボーネンの背後について、最高のタイミングで飛び出したのさ。昨日は脚の調子は良かったけれど、飛び出すスペースがなかった。対する今日は全てが揃ったね。

ブエルタでの勝利はいつだって非常に大切だ。それに今日のステージは家から近くて家族が来ていたから、ひときわ大切だった。明日のステージは難しいだろう。バルベルデやベッティーニにとって理想的なゴールプロフィールだと思う。特にベッティーニは調子が非常に良いようだ。もしベッティーニが現在のような調子を保てば、世界選手権では非常に手ごわいライバルとなるだろう。


●アルベルト・コンタドール(アスタナ)

ここまでは上手くいっている。もちろんタイム差がもっと付けられていたら、もっと良かったけどね。とにかく体調はいいし、満足している。ジロはしっかり調整せずに大会へ参加したから、守備的に走るしかなかった。でもこの大会では、今後も攻撃的に走る。ブエルタの優勝に向かって非常に集中しているよ。でももちろん、アームストロングはチームに歓迎するよ。彼のことは常に尊敬してきたし、彼と一緒に走ってみたいね。

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宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

お知らせ

J SPORTSではブエルタ・ア・エスパーニャ2008全21ステージを生放送!
大会期間中はレースフォト&レポート、イラストレポート、各ステージの見所などを掲載!
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