(c)Yuzuru SUNADA
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連日気温30度越えだったスペイン南部から、気温7度のピレネー山頂へ。この日は4つの難関峠がコース上に待ち構える上に、持久力を要する223.2kmの今大会最長ステージ。しかも寒さと雨が選手たちのエネルギーを否応なしに奪って行く。アンドラ山頂ゴールまで無事にたどり着くためには、アルベルト・コンタドール(アスタナ)が語ったように「たくさん食べて、たくさん飲む必要があった」。補給の失敗は、致命的だ。

重い灰色の雲に覆われたスタート地点を飛び出すと、プロトンからはアタック合戦が相次いだ。速いテンポでレースが進む中、決定的なエスケープに乗ったのはアレッサンドロ・バッラン(ランプレ)、マーク・デマー(ラボバンク)、ハビエル・ザンディオ(ケースデパーニュ)、イニーゴ・ランダルーチェ(エウスカルテル・エウスカディ)、ジャンニ・メールマン(フランセーズデジュー)の5選手。実はダヴィ・モンクティエ(コフィディス・ル クレディ パール テレフォン)も一緒に逃げを始めたが、すぐにチーム監督からの命令でプロトンに下がった。マイヨ・オロを着るシルヴァン・シャヴァネルを守るためだったようだ。

悪天候にも関わらず順調に逃げを続ける5選手は、ステージ折り返し地点を少し過ぎた120km地点で後方集団から11分ものリードを奪った。しかもコフィディスが一丸となってプロトンを引き、さらにステージ終盤にはアスタナがスピードアップに努めたものの、このタイム差は思うように縮まらない。ラ・ラバッサ峠の1回目山頂では、未だタイム差は6分半近く開いていた。そして山頂、つまりゴール前30km地点で、それまで逃げ切れるとは考えてもいなかったバッランがステージ勝利の可能性を信じ始めた。

下りを利用してランダルーチェがひとり先頭に立つが、ラ・ラバッサ峠への2度目の登りが始まると、今度はバッランが先頭を奪い取る。そして雨雲のせいで中継ヘリコプターが飛ぶことができなかった今ステージだが、最後の最後に生中継画面に切り替わったゴール直前の画面に、バッランは真っ先にひとりで飛び込んできた。2007年ツール・デ・フランドルを制し、今年のパリ〜ルーベでは3位に入った北クラシックハンターは、確かに寒さと悪天候に慣れているのかもしれない。しかも決してクライマーに区分けされる選手ではないものの、今年のツール第11“山岳”ステージでも大逃げに加わって区間3位に入った前例があった。それでもブエルタ最初の難関頂上フィニッシュ制覇は、まさかの大金星と言ってもいいだろう。さらにマイヨ・オロ、山岳賞、コンビネーション賞の3ジャージも同時に獲得し、6時間15分51秒の長く辛い戦いは十分に報われた。

2分42秒遅れで区間2位に入ったのは、悪天候に慣れているだけでなく、「雨と寒さは大歓迎さ!」と大喜びしたエセキエル・モスケーラ(シャコベオ ガルシア)。太陽の国スペインとしては珍しく、年間150日以上雨の降るガリシア地方出身だけに、悪天候での戦い方は熟知していたようだ。しかもバッランとは対照的に、モスケーラは正真正銘のクライマー。昨ブエルタでは無名ながら総合5位に入っていたが、大会最初の山岳ステージで早速総合順位を12位から8位へとジャンプアップさせた。

モスケーラの2秒後には、5人の小集団から加速をかけたコンタドールがゴールラインを通過。同集団内にいた表彰台ライバルのカルロス・サストレ(チーム CSC サクソバンク)やイゴール・アントン(エウスカルテル・エスカルディ)を5秒突き放すと同時に、ボーナスタイムを8秒獲得したため、総合では13秒のリードを手に入れたことになる。総合順位は4位と変わらないが、ライバルたちとのタイム差は確実に広がった。

一方、素晴らしい大会1週目を過ごしたアレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)は、この日はトップから3分40秒遅れの区間19位でゴールした。失速の理由は「ゴール前10kmでハンガーノックアウトになってしまった」と告白。「暑いときよりもカロリーを大量に消費するし、ボクはそれに応じた補給をとらなかったんだ」そうだから、補給を意識的に行ったコンタドールに差をつけられたのは当然の結果だった。

バルベルデは総合では3位から5位に後退。サストレも総合5位から6位に後退し、コンタドールとのタイム差は40秒から53秒に広がったが、逆にバルベルデとのタイム差は1分11秒から21秒差に縮まっている。またコンタドールのチームメイト、リーヴァイ・ライプハイマーが1分遅れで総合2位。念願のマイヨ・オロで休養日を過ごしたシャヴァネルは区間15位と奮闘したが、総合3位に後退しマイヨ・オロを手放している。


●アレッサンドロ・バッラン(ランプレ)
ステージ勝利、総合首位、山岳賞首位、複合賞首位

今日は静かな1日を過ごすつもりだったんだ。逃げる予定は全くなかった。でもいいエスケープに乗るチャンスをつかむことが出来たから、他選手達と協力してタイム差を開いた。でも最後まで逃げ切れるとは信じていなかったんだ。だってステージは長かったからね。実際、ゴール前30kmまでは勝利を信じていなかったよ。最後は追いつかれるんじゃないか、とすごく怖かった。でも最後の登りは斜度がそれほど厳しくなかったからボクに好都合に物事が進んだよ。世界選手権に向けて調整している最中だから、すでに調子も上向きだった。だから勝つことが出来たんだと思う。

区間勝利を挙げられてものすごく嬉しい。グランツールでリーダージャージを獲得するのは初めての体験だよ。8月11日に生まれた娘にこの勝利を捧げたいね。マイヨ・オロは明日のステージ後、他の誰か、総合争いの選手の手に渡るんじゃないかな。だって明日もすごく難しいから。


●エセキエル・モスケーラ(シャコベオ ガルシア)
ステージ2位

優勝争いの選手たちがお互いに警戒しあっているその隙を利用して飛び出した。ボクはディーゼルで加速が遅いから、遠くからアタックをしようと決めていたんだ。そして上手くやりのけた。最後のほうは後ろから誰が追いかけてきているのか気にしていなかった。でも最終盤で小集団が、コンタドールが近づいてくるのに気がついた。だから早くゴールにたどり着けるよう、全力で走ったよ。

今大会序盤は思い通りの走りが出来なかった。だからボクのブエルタではないんだな、と思っていたんだ。でも上手くタイムを取り戻したし、今は体調もいい。でもブエルタは非常に難しいから、この先のことは予測不可能だ。特にアングリル峠は非常に厳しくなるだろう。

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宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

お知らせ

J SPORTSではブエルタ・ア・エスパーニャ2008全21ステージを生放送!
大会期間中はレースフォト&レポート、イラストレポート、各ステージの見所などを掲載!
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