(c)Yuzuru SUNADA
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18時45分トレド発→リェイダ着の特別列車にプロトンが乗り遅れないよう、この日のスタート時間は予定より20分早められた。なにしろ今ブエルタ開幕以来かなりのスローテンポが続いており、連日のように予定ゴール時間はオーバー気味。560km以上の長い列車の旅を前にして、開催委員会が心配したのも無理はない。・・・ところが強風の中行われた今ステージは一転、超ハイペースのレース展開となった。最終的な走行時速は45.15km。大会最初の休養日を翌日に控えて、選手たちも早めに体を休めたいと願ったのかもしれない。

レース高速化の一因に、コフィディスのプロトンコントロールが上げられる。第5ステージ終了後にわずか2秒差で総合2位に立ったシルヴァン・シャヴァネルは、スタート前にはっきりと“マイヨ・オロ獲得”宣言を出していた。7km地点からミハイル・イグナチェフ(ティンコフ クレジット システムズ)、イバン・マヨス(シャコベオ ガルシア)、ヴォロディミール・デュダ(チーム ミルラム)の3人が逃げ始めたが、タイム差が3分半以上開かないようコフィディスは厳しいスピード調整を強い続ける。そして102.5km地点の3級峠を越えると、逃げ集団をすみやかに回収した。

スピードが速い上に、強風が吹き荒れる厳しいコンディションの中、集団落車やメカトラブルが相次いで発生した。68km地点ではアレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)やトム・ボーネン(クイックステップ)という有力選手も犠牲に。また112km地点でも5、6人が地面に投げ出される一幕が。ステージ最終盤にはパンクが次々と選手たちの脚を引きとめている。

ただしシャヴァネルの脚は止まらなかった。115.7km地点の第1中間スプリント地点が近づくと、コフィディスが一塊になって集団を飛び出していく。しかも本物のスプリントのように、綺麗なトレインを組んでシャヴァネルを前に押し出す。マイヨ・オロのリーヴァイ・ライプハイマー擁するアスタナが後を追わなかったこともあり、シャヴァネルは無事にトップ通過。ボーナスタイム6秒を手にすると、この時点で念願の暫定総合1位の座についた。

その後、横風を利用したアタックがいくつか続いたが、シャヴァネルは決してそれを許さない。北クラシック、パリ〜ニースで自信をつかみ、ツール・ド・フランスでは数々のアタックの果てについに念願の区間勝利を手にしたおかげで、チーム監督の言葉を借りれば「今年のシャヴァネルは“殺し屋”になった」。当然、132.8kmの第2中間地点でも1位通過をもぎ取り、ボーナスタイム6秒を加算する。

まるでアルデンヌクラシックのようにアップダウンと細かいカーブが続く難しいステージ最終盤へ差し掛かると、コフィディスの集団制御もさすがに弱くなる。すると来季のためにアピールに余念がないクレディアグリコル組やクラシックハンターたちが次々とアタックを仕掛け、集団はどんどんと小さくなっていく。そしてゴール前1km地点のアーチの下でティンコフが2人でアタックをかけると、一気にゴール勝負が加熱した。

最終コーナーをトップで曲がり、ゴールへ向かって猛烈に突進し始めたのはアルデンヌ生まれのフィリップ・ジルベール(フランセーズデジュー)だ。背後からは現役最多のクラシック勝利を誇るパオロ・ベッティーニ(クイックステップ)と、今季クラシック2勝のバルベルデが激しく追い上げる。そしてゴール前わずか100m付近で先頭に立ち、ステージ勝利をさらったのは世界選手権2連覇中のベッティーニ。今年で引退も噂される34歳大ベテランが、グランツールでは7つめの勝利を上げた。

ジルベールは喉から手が出るほど欲しい初めてのグランツール勝利を逃し、ゴール地近郊出身の名クライマー「トレドの鷲」バアモンテスが区間優勝候補ナンバーワンに上げていたバルベルデは3位に終わった。ただし総合でも3位のバルベルデはゴールボーナスタイム8秒を手に入れ、しかもアルベルト・コンタドール(アスタナ)やカルロス・サストレ(チーム CSC サクソバンク)にゴールで6秒差を付け、優勝争いのライバルたちを14秒突き放すことに成功した。ちなみにステージ終盤の分断のせいで総合順位に動きがあり、コンタドールは前日の総合5位から4位へ、サストレは7位から5位へとジャンプアップしている。

そしてライプハイマーと共にトップから6秒遅れでゴールしたシャヴァネルは、狙い通りステージ後にマイヨ・オロを獲得した。1999年のジャッキー・デュラン以来となるフランス人マイヨ・オロに、フランスメディアは大フィーバー。スタート前に「ボクのためはもちろん、フランス自転車界のためにジャージを取りに行く!」とシャヴァネルが誓っていたが、まさしく、フランス自転車界に希望を与える金色ジャージとなったに違いない。


●シルヴァン・シャヴァネル(コフィディス・ル クレディ パール テレフォン)
総合首位

大会前には総合首位に立てるなんて思ってもいなかった。逆に、今大会ではステージ優勝ができるかな、と考えていたんだ。だからボクにとってはサプライズであり、名誉なことでもある。ブエルタで最後に総合首位を取った選手はローラン・ジャラベールだ。だから彼の次にマイヨ・オロを着れるなんて、ボクにとっては最高の名誉だよ。(※ジャラベールは1995年総合優勝。マイヨ・オロ着用は1999年デュランが最後)

アンドラゴールまでジャージを守って行きたい。でも非常に難しいだろう。今日嬉しかったのは、トレドにたくさんの観客が来てくれたこと。まるでツールのようだったよ。それにボク自身はスペイン自転車界をすごく近くに感じているんだ。だってボクの祖父はスペイン人だから。バルセロナの近郊出身なんだ。スペイン人家族においてこのリーダージャージを獲得したことは、本当に素晴らしい出来事なんだよ。


●パオロ・ベッティーニ(クイックステップ)
ステージ優勝

素晴らしいゴールだった。ヴァレーゼでの世界選手権を考えると、ボクにとってはスペシャルな勝利だ。2005年からボクは毎年ブエルタに出場して、同じプログラムで調整を積んできた。そしてブエルタで区間優勝を挙げられたときは、世界選手権をパーフェクトの仕上がりで迎えられたものさ。だからボクにとって非常に大切な勝利。今後は、ヴァレーゼでの世界選手権を見据えて澄み切った気分で調整していきたい。

スペイン代表はすごく手ごわいだろうからね。アルカンシェル獲得に向けてのライバルは、いつものメンバーに、ジルベールも加えたい。それからシューマッハーも非常に手ごわい選手だ。

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宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

お知らせ

J SPORTSではブエルタ・ア・エスパーニャ2008全21ステージを生放送!
大会期間中はレースフォト&レポート、イラストレポート、各ステージの見所などを掲載!
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