U-23日本代表は、北京オリンピックのグループリーグを3戦全敗で終えた。1996年のアトランタ・オリンピック以来4大会連続で出場した日本にとって、初めての3連敗だった。

「結果が出なかった」のだから、チームには、当然、批判や非難の言葉が投げかけられることだろう。僕は、アメリカに敗れた後のコラムで、すでに問題点を指摘した。「ボールをキープして、攻めてはいても、結局リスクを背負って仕掛けることができずない」ということだ。そして、結局、最後までその繰り返しだった。ただ、最終のオランダ戦では、すでにグループリーグ敗退が決定して、開き直ったのか、攻めの厚みも増していた。シュートの場面も増えた。初戦からあれくらいの戦い方をしてくれれば、少なくともアメリカには勝てただろうにに……。

では、今回のU-23代表の戦いにポジティブな面は何もなかったのか?

勝ったときに批判をするのと同様、負けた後に良かった点を指摘するのは難しい。だが、それをしておかなければ、「何もかにも、すべてが悪い」ということになってしまい、将来につながらない。世界の同世代と戦って、何が通用し、何が通用しなかったのか。それを明確にしておかなければならない。最終のオランダ戦は、PKによる失点で0-1と敗れはしたが、互角に近い戦いだった。前半の立ち上がりは日本が支配。その後、オランダの猛攻を浴びる時間。再び攻勢に出る時間といったように、交互にチャンスをつかみあう。そんな試合だった。ヨーロッパ・チャンピオンとして登場し、優勝候補と言われたオランダだったが、暑さのせいかオランダは「しょぼい試合」をした。だが、日本が頑張ったのも事実だ。

3年前のワールドユースの初戦でオランダと対戦した日本が、1-2という得点差以上の完敗を喫したのは記憶に新しい。オランダの左ウィングのクインシー・オウスに日本の右サイドバック、中村北斗が切りきり舞させられた。だが、それから3年。U-23日本代表は互角に近い試合をした。「オランダ」という物差しを使って計れば、日本は明らかに進歩していたということになる。オランダ相手にも、ナイジェリア相手にも、今回の日本はスピードでも、フィジカルの強さでも圧倒されることはなかった。それが、これまでと違う点だ。たしかに、身長・体重の数字では劣っていたが、水本、長友、森重などは体を張って戦った。中盤でも本田拓も細貝もフィジカルで負けなかった。アテネ大会のように、前半の立ち上がりにミスからあっさりと失点といった場面もなかった。

だからこそ3試合ともそれなりに戦うことができ、前線の非力さが余計にクローズアップされることになったのだが、その部分はたしかに進歩している。フィジカル的に強い選手が増えたこと。世界と戦う経験を積み重ねる間に、スピードやフィジカルで上回る相手との戦い方が身に着き、相手の攻撃を遅らせるような守備もうまくなっている。U-23の大会となって以降のオリンピックでは、1996年のアトランタ大会と2000年のシドニー大会ではともに2勝し、シドニーでは準々決勝でPK負けという健闘だった。

U-20代表として準優勝。オリンピックではベスト8。アジアカップで圧勝し、2002年ワールドカップでセカンドラウンド進出。やはり、あの「黄金世代」というのは特別の時代だったのだ。あの黄金世代とトゥルシエ監督のチームが、日本最強だったのは間違いない。そのトゥルシエ監督も、ヨーロッパやオーストラリアと戦った後には、必ずのように「体重が足りない!」とフィジカルの弱さを嘆いていたものだ。この部分だけは、今の世代は黄金世代に優っているのではないだろうか?これは、将来、世界と戦うときのベースとなる。「粘り強く守れる」のは、すばらしいことだ。「そこに、攻撃力がプラスされれば」であるが。

攻めの部分については、今回のコラムでは触れないが、それでは「粘り強く」守れるようになった、そのメリットの部分をこれからどう伸ばしていくのか?まず必要なのは、攻めから守りへの切り替えの早さだろう。ナイジェリア戦の失点が、その教訓となる。ボールを奪われ、一気に攻め込まれると(それも、相手が人数をかけてくると)、粘り強さを発揮するまでもなく、完全に突破を許してしまうことになる。これは、攻撃面での物足りなさと同じことだ。ボールを持って、チャンスと思ったら、躊躇することなく相手ゴール前に殺到する。それが、決定力不足の日本がゴールを奪う、最善の、そして唯一の方法だ。守りの切り替えも、それと同じ。ボールを奪われた瞬間にボールを奪い返すために、スペースを埋めるために、一瞬のうちに足を動かすこと。そうした切り替えの早さは、どうやったら意識付けできるのか?

答えは、厳しい試合を数多く経験することしかないだろう。今のJリーグやユース世代の大会を見ていると、両チームとも攻守にわたってリスクを冒そうとしない、そんな微温湯的な試合が多すぎる。そんな試合ではフルパワーでプレーする必要も、フルスピードで走る必要もない。そんな試合ばかりしていて、代表に呼ばれたときだけ「リスクを冒せ!走りきれ!」と言われてもできるはずがないではないか!今回対戦したオランダにしても、その所属チームはPSVや、アヤックス、フェイエノールトといったオランダの名門をはじめ、リバプールやレアル・マドリードなど多岐に渡る。そういうレベルの高いクラブでプレーしている選手たちにとっては、攻守の切り替えなどという意識は当然のものとして身に着いているはずだ。

まず、Jリーグの戦いをもっとシビアなものにしていかなければならないだろうし、ユースの大会ではお互いにリスクを背負って攻めあうべきだろう。さらに、クラブも、各年代の代表も、ヨーロッパの一流チームと対戦する機会を増やしたい。もちろん、公式戦で戦うことは日本がUEFAに加盟しない限りできないのだが、親善試合でもいいからヨーロッパと戦ってサッカーの厳しさを体感すべきだろう。親善試合でも、アウェーで戦えば、ある程度本物に近いものを経験できるはずだ。

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授